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第一話 勇者

家族から虐待を受けるウルグ・ハースだったが、ある日突然伝説の勇者として、ギルドに招待された。他の四人の勇者と共に、ウルグは真の敵を倒せるのか!

「え…“勇者様へ”?」

「んぁ、読んだ?何かねぇ、君勇者らしいよ?俺さギルドの人間だから詳しいことは知らないんだけど。しかもただの勇者じゃないらしい」

「いや…そんなにいきなり言われても…そうだ、あなた様のお名前は…」

「んぁ、俺?俺の名前はサンド・イズミ。女みたいってたまに言われるんだよな」


『魔法の名簿帳』でギルドの人間の名前を確認すると、確かにサンド・イズミと書かれていた。


「ほら、俺いたでしょ?まあ、怪しむよなそりゃ」

「でもどうすれば…」

「一旦ギルドに来てもらうしかないな。ダイジョブダイジョブ。シャンドル様には言っとくから。じゃあ行きな」

「え!?今からですか!?」

「だぁかぁら、もうここで働く必要ないの!今日から勇者だから。ったく、頼りねぇなぁ…」


シャンドル達にバレないように自室に入り荷物をまとめると、ギルドに向けて出発した。


(勇者だなんて…確か世界に四人しか居ないんじゃ…ほんとかなぁ…?)


ウルグは疑念を抱きながらも、歩いた。

数十分荷物を持って歩くとギルドが見えてきた。


「確か前にも一回来たことあるんだよなぁ…」


ギルドの前の馬車に結ばれている馬の頭を撫で、中に入った。途端に冷や汗をかいてしまった。


「うえっ…!?」

「お、来たな!」

「ウルグ君だっけ?」

「シャンドルに虐待されてたんでしょ〜?かわいそ〜」

「まあ、座りたまえ」


この世界で生きているなら誰もが知っている存在だった。

左から優しい紅髪の炎使い勇者『メイス・クリムゾン』、メイスのライバルにして紺髪の氷使い勇者『ランス・ネイビー』、唯一の女性で光使い勇者『エマ・オーロラ』、合理的に戦う闇使い勇者『ゼノ・ブラック』だ。


「知ってると思うけど俺たちのスキルとかを一応紹介しよう。俺の名前はメイス。スキルは『灼熱』。手の1cm前に最強の炎を出す能力。まあ、一時間後ぐらいには熱を使いすぎて風邪で倒れるけど。」

「俺の名前はランス。スキルは『極寒』。氷を出したり、凍らせたり…まあ、寒さにまつわることなら大体なんでも出来る。でも、使いすぎると凍傷で腕が使えなくなる。」

「私の名前はエマ。スキルは『逆光』。自分の背後から光のレーザーを出したり出来るよ。けど、直視すると失明するから戦ってる最中目をつぶってなきゃいけない。」

「俺の名前はゼノ。スキルは『暗闇』。一定の空間を、人間が色を判別できないレベルの暗さにすることが出来る。ただし、俺も見えない。」


(微妙だなあ…)


落ち着いて聞きつつも僕は頭の中で思っていた。


「まあ、仲良くやっていこう。それじゃ新しい勇者のウルグ君のスキルはなんだい?」


メイスさんが肩を叩いて微笑んできた。


「僕のスキルは…えっと…」

「大丈夫だって!俺達も変なスキルだし!」


(自覚あるんだ…!)


「僕のスキルは…『廃品処分』です」

「…え?」

「えと…なんか、不要になったものを処分出来る能力?みたいな…」

「ふむ…ふむ…ふむぅ?」


ゼノさんが、冷静に受け止めようと顎を擦るが、理解出来ていなさそうだ。


「えと…日常生活ではどう使ってるのかな?」

「えと…例えばゴミに向かってこの能力を使うと、そのゴミが燃えて失くなるみたいな…」

「………まあ、改善の余地は…」

「本当にあるかもしれないぞ」


全員が発言したメイスさんの方を向いて驚いた顔をしていた。…失礼じゃないか!?


「例えばそれが敵に対して有効だったら?まあ、言い方はキツいが俺達勇者からすれば敵は不要だ。だからその敵に対して強く出れるみたいなこともあるかも」

「まあ…魔法は解釈みたいなところあるからな…」

「出来そうなの?」


エマさんが顔を覗き込むようにして聞いてきた。


「どうでしょうか…?………あの、質問いいですか?」

「全然いいよ?どうしたの」

「勇者様方は…恐縮ですが、あまり戦ってる場を見ないというか…」

「まあ、シャンドルの家に居たからなのもあるけど、実際そんなには戦わないんだよな。…一人だけいるな。戦う相手が」


何やら意味があるようにメイスさんは言った。


「?」

「おい、言うのか?それ」


ランスさんが引き止めようとする。


「新しいとはいえ勇者なんだから言わないとだろ」

「何の話です…」

「あのな、勇者には6人目がいるんだ」


メイスさんが遮るように言った。そんなこと初耳だ。


「えっ!?」

「名前は『ヴォイド・スカル』。あんまり詳しい情報はギルド長のサンドさんに口止めされてるから言えないけど」

「あの方ギルド長なんですか!?でも前に来た時はいなかった気が…」

「そうそう。最近あの人に変わったのよ。前のギルド長があまりにも酷くてね〜あのカスハゲデブ…」


エマさんの口からズバズバと言葉のナイフが飛んできた。


「おいおい、前ギルド長のミケの悪口も程々にしておけよ?一応ここギルドなんだから」


ランスさんが宥めると、エマさんの毒舌も止まった。


「まあ新しくウルグ君も入ってくれたわけだし、みんなでパーっと宴会でも…」


メイスさんが話途中に窓の外を突然凝視した。その流れのまま自分を含む全員がそちらを見た。

外にいる人間が誰か、ひと目でわかった。思わず声を出してしまった。


「ヴォイド・スカル…!」


第一話 完

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