第十話 鱻麤驫龘犇 蟲羴猋
家族から虐待を受けるウルグ・ハースだったが、ある日突然伝説の勇者として、ギルドに招待された。他の四人の勇者と共に、ウルグは真の敵を倒せるのか!
「君、名前は?」
「僕の名前…鱻麤驫龘犇 蟲羴猋。」
「せんそひゅうとうほう、ちゅうせんひょう!?」
「母親が親バカならぬバカ親だったんだよ。そこをヴォイド様が助けてくれた。」
龍の炎とジャイアントゴブリンの棍棒を避けつつ戦っていた。
「くっ…雪で溶けたのはこいつらが墨で描かれてるからか…!」
「でもランスさん!ここ雪がありません!」
だがランスさんは「なら」と言って氷を天井に張りつけた。
「ウルグ君!そこら辺の物を燃やして天井に向かって投げて!」
上着や靴などを脱いで天井に投げた。すると、氷が解けて水になった。落ちた水がどんどん砂に染み込んでいった。
【グワァァァァ!!】
龍とジャイアントゴブリンがどんどん溶けていった。黒い墨が地面の砂に染み込み、黒い砂になった。
「お前の魔法は『墨だから溶ける』ではなく、『水が弱点』なだけだ。だから砂に水が染み込んだ時点でお前は詰んでるんだよ。」
ランスさんの説明が分かりにくかったが、とにかく有利な状況ということは分かった。
「だから僕の能力はもう使えない。そう言いたいのか?」
「そういうこと。」
「甘いね。」
そう言うと蟲羴猋はポケットから鉛筆を取りだした。
「万年筆は使いやすいから使ってるだけだよ。」
そう言って何かを描いた瞬間、辺り一帯が爆発したようだった。
「なんだぁっ…!?」
洞窟は山ごと壊れ、俺たちは外の地面に飛ばされた。
「ったぁ………ランスさん!あれ!」
「『巨人』…!?」
一つ目の数十メートル程の大きさの巨人が月光に照らされながら叫んでいた。
【グオオオオオ!!】
「くそ…俺の手はもう使えなくなっちまった…!」
「凍傷…!ギルドに回復薬は置いてきちゃった!」
「あんなでかい目にはよく効く!私の魔法で…!」
そう言うとエマさんは逆光を放った。サイクロプスが目を閉じて喚いていたが、それが逆効果だった。暴れだしたせいで見境なく全てのものを壊し始めた。
「ヴォイドベースがなくなっちゃうよ!」
「ウルグ君、一ついい方法を思いついた!」
「…?」
「ヴォイドは君に裏切り者を倒して欲しいらしい。だから、基地にはパワーアップするための装備があるんだ!だからサイクロプスに隙ができている今、基地の装備を取るんだ!」
そう言っている間にもサイクロプスは暴れていた。こうしては居られない。頭よりも足が先に動いていた。
山の残骸の岩を『廃品処分』で燃やしてからサイクロプスの足に投げつけた。始めは気にせず暴れていたが、段々と火傷になっていき、サイクロプスは背中をつくようにして後方に倒れた。
その隙に、ヴォイドベースがあった場所に行った。
するとそこには新たな赤色の指輪があった。
「これだ!」
それを中指にはめた。すると心の中からエネルギーが湧き出てきた。
「サイクロプス、覚悟を決めろ。反撃開始だ!」
第十話 完
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