第九話 アーティスト
家族から虐待を受けるウルグ・ハースだったが、ある日突然伝説の勇者として、ギルドに招待された。他の四人の勇者と共に、ウルグは真の敵を倒せるのか!
空を飛ぶ龍は、口から青い火を吐き、そこらじゅうの雪を溶かしていった。ランスさんの槍が龍の体を掠めるが、素早すぎて動きを捉えられなかった。
「チッ…あれじゃ速すぎる…飛ぶのを止めさせられりゃ当たるんだがな。」
龍はグルグルと体を渦巻いていき、竜巻を起こした。渦巻いている中の石がランスさんの槍にぶつかり、砕けた。
「ランス!大丈夫!?」
「俺は全然大丈夫だが、まずいぞ…あの槍、龍の鱗を貫通させるために強度を上げてた。だから魔力を結構使用しちまった。あと数分は武器を作れない。」
ランスさんは手の平から氷を生み出そうとしたが、右手が段々と凍りついていった。
先程砕けた槍は、魔法の効果が切れて溶けた。
「二人とも後ろ向いて目をつぶってて!」
そう言うとエマさんは腕を前に突き出した。すると背後から光の弾を出して龍に猛攻撃をした。だが、それでも龍は素早い動きで攻撃を避けた。
すると突然龍は動きを止め、話し始めた。
【馬鹿め…そんなもの我に当たるわけなかろう…】
「あら、喋るのね。でもあなたの知能じゃまだ気づけないみたい。」
【…?何にだ?】
「一発ずつじゃ当たらなくても、同時に打てば当たるのよ。」
先程の光の弾は、龍の背後で一つの塊となり、龍に向かっていった。
だが龍は口から巨大な青い火の弾を放ち、光の弾にぶつけた。二つのエネルギーは、爆発して無に帰った。
【この程度で我を倒せるとでも…?】
「や…やばい…!」
龍は口から炎を吹き出そうとした。苦し紛れにそこらの雪を投げた。
【そんなもの…】
龍はそう言おうとしたが、雪が当たった尾の部分を見ると、驚き叫んだ。そう、足の部分は溶けたかのように、ドロドロになっていたのだ。
「まさか雪が弱点…!?」
【なっ…なんだと言うのだ!?たかが雪程度で…!】
慌てている隙に、雪を投げつけた。すると、顔面に直撃し、顔がドロドロと溶けていった。
【ぅがぁぁぅぁ!!】
そのまま龍の体は溶けていき、最終的には黒い墨汁のようになって消えた。
「ふぅ…危なかったわね。」
「さっさと洞窟の中に入るとしよう。」
ランスさんの指示で、龍が出てきた洞窟に入ることにした。洞窟の奥の方まで進むと、開けた部屋が現れた。
「…!?子供…!?」
部屋の壁に十数歳の男の子が座っていた。ランスさんが近づいて話しかけようとした瞬間、異世界の凶悪モンスター、『ジャイアントゴブリン』が地面から現れた。
四メートル程の巨体のジャイアントゴブリンは、金棒でそこらじゅうの物を壊しながら攻撃してきた。
「何で急にジャイアントゴブリンが…!?」
「まさか…この男の子の能力…!?」
子供は万年筆をポケットから出すと、壁に先程の龍を描いた。するとそこから先程の龍が現れた。
「この子供の能力…!?」
「『具現化画家』。もうあなた達に逃げ場は無い。」
第九話 完
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