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 幕間 「のじゃ談話」 【三人称視点】

 深夜。


 山奥の小屋に、静かな空気が流れていた。

 窓から漏れる月明かりが、室内をぼんやりと照らしている。

 室内には人族の老人と、白髪の魔族が対立している。


「随分と急に決めたの。サイファー。言っておくがワシはそこまで乗り気ではないぞ」

「まぁまぁ、そう言うなよレイア。不真面目同士だった仲、仲良く育てようじゃないか。あの優等生に勝つには、協力せんと」


 レイアは小さなランプの灯りの下で、冷ややかな視線をサイファーに向けている。

 その白髪と幼い外見が、彼女の非凡さを際立たせていた。


 サイファーは杖を軽く突き、ひょうひょうと笑う。

 だが、その笑みにもどこか含みがある。


「勝ち負けの話ではあるまい」

「ふふ、冗談じゃよ冗談……」


 その言葉に、レイアは一瞬だけ表情を緩めたが、すぐに鋭さを取り戻す。


「あやつはただの村人じゃぞ。クリスが消えた今、なりふり構わずってわけではあるまいな?」

「クリス……。ずっと断られてはいたが、やはり何か持っていたようじゃな……」


 サイファーは一瞬だけ言葉を止め、目を細めた。

 そして、ゆっくりと椅子から立ち上がると、窓際に歩み寄る。

 窓の外では、月明かりに照らされた木々が風に揺れている。


「……確かにクリスと比べ、フェイクラントは見た感じ他の者と比べて評価も低そうな、ただの人間じゃな」

「ならば──」

「──だが、ワシはそうは思わん」


 サイファーの言葉に、レイアはわずかに眉をひそめた。

 老人の目は、窓の外に広がる闇を見つめている。


「あやつには、何かがある。そう思ったんじゃ」

「……ただの直感か?」

「ふむ……。そうとも言える。だが、それが動く理由としては十分じゃろう」


 サイファーが微かに笑う。

 彼の目は冴え渡り、ただの気まぐれで動いているようには見えなかった。


「お前もそうじゃろう?」

「……何がじゃ」

「フェイクラントをここへ連れてきたのはお前じゃ。"あの魔物"と一緒にな。お前も、あの男に何かを感じたからではないのか?」


 レイアは答えず、沈黙を保ったままだった。

 その無言が、サイファーの言葉を否定しない答えとなっている。


「まぁ、ものは試しじゃ。気に入らんかったら、また別を探せばいいだけの話じゃよ」


 サイファーは杖を軽く振り、再び椅子に腰掛けた。

 レイアはしばらくその言葉を聞いた後、小さくため息をついた。


「……分かった。……夜ももう遅い。ワシは寝る」

「ほれ、やっぱり気にしとるではないか。素直じゃないのう」


 軽口を叩くサイファーを無視して、レイアは立ち上がる。

 その小さな背中が、室内の静かな灯りに照らされている。


「……じゃあの。おやすみ、レイア」

「……おやすみ」


 レイアが部屋を出ていくと、サイファーは一人窓の外を見つめ続けた。

 その目は、笑みを浮かべながらも、何かを見据えるように鋭く光っていた。

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