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種の勇者の異世界転生  作者: カエル♂
第一章「発芽」
6/11

6バイン村の決断

俺はカラン。バイン村で商売をしている。


売っているのはポーションとか、薬草とかだ。

冒険者がよく俺の店に来るが、決して客はそいつらだけじゃない。けがをした子供とか、包丁で傷を作った主婦も大事な客だ。


客とは違うかもしれないが、よく取引をしているヤツがいる。隣で寝ているこいつ、カルタだ。

付き合いは長いってもんじゃない。こいつが冒険者の頃からの知り合いだ。


昨日は酒を飲みすぎたな。久しぶりに会う親友は変わっていなかった。

いつものように旅の話をして、悩み事も本音で語り合って。まったく、いい親友を持ったよ、俺は。



さて、そろそろ店の開店の時間だ。早歩きで店に向かう。


その途中で村の人にあいさつをした。

挨拶は商売の基本だと昨日カルタが言っていたからだ。


店に着き、扉を開ける。

そういえば、あの種どうなったかな。たしか左の隅に置いていたはずだ。


えーっと


・・・!?

「な、なんじゃこりゃ!芽が生えてる!??」



(昨夜)

あーつまんねぇ。この体は眠くならないらしい。

ちくしょう、種になってから身動きすらできねぇ。肩が凝っちまうよ。肩ないけど。

しかし、さすがに寝たいな。

眠くならない体だけれど、前世からの睡眠薬は健在だ。


羊でも数えて眠くなるのを待つか。

しかし、いくら羊を数えても種が眠くなることはなかった。


俺はあきらめなかった。

俺がが羊を一万匹まで数えたときに異変は起きた。


突然体が焼けるように熱くなった。まるで体を火であぶられているような痛みが続く。

もう死んでしまったほうが楽になると直感的に感じた。


やがて俺はとてつもない睡魔に襲われ、苦痛を忘れて眠りについた。



深夜、俺の頭が少しだけ裂け、黄色の光に包まれた。

その裂け目から青い色をしたツルが顔を出した。


次第にそれは伸びはじめ、俺の全長と同じくらいになった。


一度成長が止まったかと思うと、今度はツルの先からふたつの若葉が出てきた。

どこから出てきたかもわからない若葉はふっくらとしていてどこか可愛げがあった。


甘い香りがしてきそうなその明るく青い若葉は次第に赤く、そして赤黒く変わっていった。

まるでしたいから漏れ出した鮮血が乾いていくかの如く変異していく。

一方、種自身は今までと変わらずプリっと丸みを帯びていた。

俺の自慢のお尻である。




もう朝か。

昨日の夜は寝れないと思ったけど、いつの間にか寝ていたみたいだな。

石崎さん元気かな。どうせ今日も早朝から出社だろうな。


あれ、昨日のエプロンのおっちゃんじゃねえか。元気だねぇ。

俺が会社行く時とは全く違う足取りだ。


何か探してるのか?

おっ、こっち来た。なぁ、少し話そうぜ、おっちゃん。


「芽が生えてる!??」


うわぁびっくりしたぁ!

なんなんだよ、いきなりでっかい声出すなよ!



「芽が、芽が、芽が~。」


おい、どっかで聞いたことあるセリフだな。何だよ、俺のことじっと見て。そんなに俺が醜いか?


「なんてことだ。今すぐ村長に知らせなければ!」


あれ、どうしたんだ?




カランは転がったポーション瓶を踏みつけて店を出て行った。


カランは村長のもとに走った。

村の人が心配そうに声をかけるが彼には聞こえないようである。


汗でびしょびしょになりながらようやく村長の家に着いた。


「どうしたんじゃ。こんな朝っぱらから。悪夢でも見たかね、ふぉふぉふぉ。」


「ま、マノの…魔の種が生まれてしまう!」


それを言いきって彼は倒れた。

彼は走っているとき舌を噛んでいたようで、口から血があふれていた。

諸ん町の従者はこれを魔の種の呪いだと慌てふためいた。


「な、なんじゃと!?」


村長は自分が老人であることも忘れてカランの店に走った。



辺りは立ち入りが禁止され、村中の魔術師が召集された。


発芽した種を取り囲んで黄色の粉がまかれる。

その上から焼いた魔物の肉片を振りかける。

白い色のマントを身に纏っている魔術師が魔術を唱えると、それは音を立てて燃え出した。


何かの儀式が始まるようである。

周りには多くの村人が怯えながら祈っている。


何をしていたのか、村長は後から到着し、呪文を唱え始める。


「我らに向きし闇の力の根源を操るものにお尋ね申し上げる。我らの地から離れその力が正しき場所に帰ることを願わん…。」


全ての呪文を読み上げた後、種の頭上に魔法陣が現れ、金色に光った。その光はとても美しく、人々の心を洗い流した。


「ど、どうじゃ。10年に一度しか使えぬという魔法を放ったぞ。その存在すら砕け散ってしまうほど威力の・・・。ふぁ?」


種はまだそこにあった。



「村長、もはや我々の力ではどうにもならないと思います。」


1人の魔術師が震えて緊張した面持ちで言った。


「郡長殿に尋ねるしかないじゃろう。すぐに使いを出すのじゃ。」


村長は同じく緊張な面持ちで言った。しわが多くなっている気がする。



そして村長が意を決したように村人に話始める。


「この度はご苦労であった。皆がすでに知る通り、この村で魔の種が生まれてしもうた。

そしてこの魔の種は未だ力を失っておらず、いつ村に災いをもたらすかも分からん。

今からいうことをよく聞くがいい。この村から生贄をだす!」


村長が話す様子はまるで武将のような面持ちであり、それでいて怖がる迷い犬を諭すかのようであった。

ある者は泣き、ある者は叫び、ある者は娘を隠した。



これは運命である。

王国の伝承にはこうある。種が土に埋えないうちに芽を生やしたら即刻浄化魔法を発動させよ。

それは魔の種である。一晩でその土地を枯らし、やがて根が王国中を這い渡り国が亡ぼされる。




んー。おれ、なんかヤバいものに転生しちゃったかな??




???「なに、魔の種だと?」


「はい。バイン村で発芽したそうです。」


???「はっはっは。何とも愉快な話ではないか!バイン村には感謝しないとな。それにあの男にも。バイン村への襲撃は延期だ。だが、郡長殿がいらっしゃるまでには片付けようぞ。」


「かしこまりました。」


???「あぁ父上よ、我らの悲願はもうすぐかないますぞ!」



王国はバイン村を中心に混乱の渦に巻き込まれていく


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