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種の勇者の異世界転生  作者: カエル♂
第一章「発芽」
4/11

4最初の朝

ここは、どこだ。

記憶を頼りに思い出す。


そうか、あのとき。


俺はどうやらビルの非常階段から転落して転生してしまったようだ。



眠い。俺はついさっき目が覚めて、体が動かないことに気が付いた。


前の世界に未練がないわけではない。あるとすれば隣のオフィスの石崎さんにさよならを言っていないことだけである。

両親は共に数年前に死んだ。俺は親戚とも疎遠だったし、奥さんや彼女がいるわけでもない。この状況はむしろ人生の転機であろう。


まあ、転生してるってことは人生一回終わってるんだけどね。


しかし、なんなんだあのリーゼってヤツ。

いきなり話しかけてたと思ったら世界樹を探せだ?

俺はいま歩けないんだっつ―の。

なんでそんなこと言うかな。

記憶も曖昧だし、まずはこの世界のことを知りたいんだけどなぁ。


―数刻前―

「申し訳ありませんでした!」


突然耳にその声が鳴り響いた。若い女性の声だ。新人社員の加藤さんに似た声だ。


「西岡さん、落ち着いて聞いてください。あなたは今、種になってしまいました。」


種?


面白い冗談をいう女ではないか。

俺は人間だぞ?


「それがですね、西岡さんには元々世界樹の宿主になっていただく予定だったんですよ。それが、なぜか種に魂が飛んで行ってしまいまして…。」


魂が飛んでいく?世界樹?意味が分からない。


「世界樹に向けてまっすぐ魂を飛ばしたつもりだったのですが、途中で何かにぶつかってしまって、

その…、かくかくしかじか。

あ、でもこれは私のせいじゃないですからね?

女神ヒノカミのいう女がやったことですので、でわでわ〜。」


あ、あぁ...うん。




まったく、迷惑な話だ。女神ヒノカミとか、分けわからん人も登場するし。

俺はお前らの雑用じゃないんだよ!

まあそんなことを考えていても仕方がない。転生してしまったことには変わりないんだもんな。

切り替えるとするかぁ。




っていうか、このおっちゃんたち、いつまでしゃべってんだ?

新人がなんだの、種がなんだのって、一体何の話をしているんだ?


ん?種って俺のことか?



「だからよ、蛮族が種持ってたんだって。何回言えばいいんだよ。」


一人の男が叫んでいる。さっき店に入って生きた男だ。右足を庇う仕草をしているし、けがをしているのだろうか。

よく見ると右の頬に大きな傷がある。体も鍛えているようで強そうだ。

会話から察するに、どうやら俺はこの男に拾われたらしい。


「そんなん信じられるかよ。大体なんで蛮族が未知の種持ってんだよ。」


もう一人の男が言い返す。黄土色のエプロンをしていてなんかかわいい。金の短髪にひげも生えている。

よく見たら男前だ。それにしても筋肉半端ないな。


「っていうかよ、そもそもこれ種なのか?魔石とか、卵ってことはないのか?」


その通りだエプロンのおっちゃん。

俺が種に転生したとか、恥ずかしすぎるだろ。


「そんなん知るかよ。俺の目には種に見えたんだよ。でもまあ、言われてみれば魔石とか卵って可能性もあるな。」



「どうせこんな気味悪いもんほしい奴なんていねえ。どうだ、割ってみるか?」


あれ、ちょっと雲行きが…。


「いいや、それはやめたほうがいい。俺の冒険者時代の血が騒いでいる。こいつにはなんかあるぞ。ってなわけで、ちょっとこいつを店においてくれないか、カラン。」


「勘弁してくれよ。ここはお前のガラクタの倉庫じゃないんだ。・・・

でも、一週間だ。一週間店頭に置く。誰も買わなかったら持って帰ってくれ。」


「あい分かったよ。その間、蛮族の生き残りに話聞いてみるかな。」


「まあこんな難しい話しないで飲みに行こうや、カルタ。お前がいない間にうまい店いくつもできたんだぜ。紹介してやるよ。」


「のった。何年ぶりだぁ?お前の話も聞かせてくれよ・・・」



助かったー

今までで一番深い安堵の息が出た。呼吸をすのを忘れていたよ。

黙って聞いてりゃ俺を割るとか言い出しやがった。


まあ、なんだ。一旦危機回避かな。



ー誰もいなくなった市場のテントで西岡は一人安心していた。日は落ちかけてあたりが赤く染まっている。その温かい光が西岡を照らしていた。ー





???「おい、どういうことだ!空の雫を奪われただと!?あれほど忠告したのに!」


「申し訳ございません、主さま!どうか、どうか命だけは!」


???「おい、こいつを処理しておけ。それにしても、空の雫を狙う奴がいるとは。やはりあれには何かある。こちらも早く動かなければ」


「おい!離せ!主様!どうかお聞きください!我々がこちらに向かっているとき、冒険者と遭遇しました。

最初の3人は弱かったのですが、後から来た商人がとても強かったのです。

あれはまるで、大ムカデと対峙しているかの重圧でした。

私は1人逃げてこられたのですが、隊長含め5人が死亡、1人がバイン村に連れていかれました。」


???「なに、バイン村だと・・・。それに強い商人か。…!?。分かった。バイン村を襲撃する。女子供構わず殺せ。慈悲はいらない。空の雫を取り戻せ!」



???たちの会話は薄暗く、窓のない部屋で行われた。


蝋燭の数本だけに火が灯っている部屋であった。

1人は権力者のような風貌の者であり、左右に従者を連れている。

この謎の男に命乞いをしていたのは逃げ帰ってきた者であった。



バイン村は今、混沌の渦に巻き込まれようとしていた。

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