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第71話

 ヴィーッ! ヴィーッ!


「状況報告!!」


 モニタールームに響き渡る警報。

 混乱するオペレータたちに向けて、落ち着いた声で指示を飛ばすガイト。


「Tokyo-Zero中層部にて第78723Sメンテナンス用ゲートが開いた模様。

 監視カメラの映像出ます!」


 ブンッ


「ぐっ!!」


 メインモニターに表示された映像を見て、奥歯を噛みしめるガイト。


 メンテナンス用ゲートが開いたのはレイドボスBの至近。

 運悪くそこには2人の探索者がいて……落ちていったのは、ケントとカナだった。


「凛、すまんが捜索隊の指揮を頼む!」


「解析班は至急Tokyo-Zero制御装置へのアクセス記録の調査だ!

 恐らくじゃが……外部からのハッキングを受けた可能性が高い!」


「協会スタッフは観客の誘導を最優先!

 所轄の警察にも協力を依頼しろ!」


 孫とその嫁候補の安否はもちろん気になる。

 だが、ガイトには探索者フェス総責任者としての責務があった。


(あとで、怒られてしまうかの)


 そういう状況になってほしい……感情を押し殺しつつ、ふたりの無事を祈るガイトなのだった。



 ***  ***


「ぱぱ!! カナおねえちゃん!!」


 涙をこぼしながら走り寄るキーファ。

 二人を飲み込んだ穴は一瞬で閉じてしまい、いまは分厚い床に戻っている。


「あううっ、キーファ、変身して……!」


「待つんだキーファちゃん!」


 ふたりを心配するあまり、神狼へ変身しようとするキーファを慌てて止めるスノウデル。


「ふたりが落ちたのは、おそらくメンテナンス用の通路だ。

 そこまで深い穴じゃないだろうから心配しなくてもいい。

 それに、君のパパはダンジョンポイントを操れるだろう?」


「うう、くすんっ」


 確かに、スノウデルさんの言う通りぱぱはダンジョンポイントのパワーを使って受け身を取るだろう。

 相当高い場所から落ちたとしても無事なはずだが……。


「キーファちゃん!

 すぐにウチのプロダクションで捜索隊を出します!。

 キーファちゃんも参加して……」


 凛も駆けつけてくれた。

 それなら二人はすぐ見つかるよね……安心しかけたキーファだが。


 ドドドドドドドッ!!


 地底から響く地響きと共に、

 立っていられないほどの揺れが、ダンジョン全体を襲った。



 ***  ***


「いつつつ……一体なんだよ?」


 落下していたのは1分くらいだったろうか?

 いろんな場所にぶつかり、滑り落ちていったが、ようやく底に着いたようだ。


「きゅうううう……」


 俺の腕の中でカナが目を回している。

 とっさにダンジョンポイントで防壁を張ったから、俺もカナにも怪我はないが……。


「それにしても暗いな……」


 一度探索され、ダンジョン庁の管轄下にあるダンジョンと違い、照明等が設置されていない。

 そうとう奥まで落ちてしまったようだ。


「はう、ライト!」


 ぱぱっ


 照明魔法を使ってくれるカナ。


「助かったぜ……照明アイテムを入れたポーチはキーファに持たせていたからな」


「うう、まだ頭がくらくらします……」


 ようやく調子を取り戻したのか、頭を振りながら立ち上がるカナ。


(はっ……今ケントおにいちゃんにお姫様だっこされてた!?)

(もう少し楽しんどけばよかったよぉぉぉ)


 いきなりこんな所に落とされて不安なのだろう。

 涙目のカナの頭を優しく撫でてやる。


「!! へへへ」


 ふにゃり、と笑顔になるカナ。

 可愛い。


「多分、わたしたちダンジョンのメンテナンス用通路を落ちて来たんだと思います。

 なんでいきなり通路に繋がるゲートが開いたのかわからないですけど……」


「う~ん、ダンジョンの故障?

 ……もしかして、レイドボスをぶっ叩きすぎたからか?」


「ちょっとありそうかも……」


 話をしながら、ダンジョンアプリを操作するカナ。

 俺たちの現在位置を確認してくれているのだろう。


 俺のスマホは落下の衝撃で壊れてしまったのか電源が入らない。

 無事だったらしいカナのスマホが頼りだ。


「お! 基地局に繋がった!」


 ぴこんと1本だけアンテナが立った。


「現在位置は………Tokyo-Zero Level G!?

 このダンジョンの……最深部です!!」


「!?!?」


 カナの口からもたらされたのは、驚きの情報だった。



 ***  ***


「……って、ヤバいの?」


「あうっ!?」


 俺の言葉にずっこけるカナ。


「ま、前も説明したと思いますけど。

 世界最大級のダンジョンであるTokyo-Zeroには固定化され、レジャー及び訓練施設になっている上層・中層部といまだに全貌が把握できていない最奥部があります」


「ふむふむ」


「一説によれば地底に向かって成長を続けていると言われ、許可を受けた一部の上位ギルドが年数回探索を行っています」


「なるほど。

 じゃあ、この場所は……」


「……Tokyo-Zeroで一番ヤバい部分、ですね」


 不安そうに天井を見上げるカナ。

 白いセーラー服の下にしまわれた首飾りの宝石が、朧げな光を放っていた。


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