第70話
<いやいやいやいや、なんだこれ!>
<バフ効果……500超え!?>
<LV3のバフ魔法って、効果どれくらいだっけ?>
<……100だな>
<ファーーーーーーーwwwww>
「これが、”らぶらぶはいめんたる”×にこにこキーファのちからだぁ♪」
<ちょっと待てキーファたん笑!>
<ドラおじとカナが互いに告る→各ステ500アップwww>
<わけわかんねぇ……>
<い、一応、キーファたんのバフスキルを増幅したのね>
「そう、つまり!
せいしんはにくたいを超越する、だよ!」
<そんなお手軽なwwww>
<これこそドラおじとカナの絆、推せる!! ……のか?>
<なあ、精神状態がステータスに影響するってありえることなん?>
<魔法の威力は、”ちょっと”上がるらしい>
<これが、ちょっと!?>
「お前らみておけ! これが俺とカナの底力だ!
行くぞカナ!」
「うんっ!」
だんっ
俺とカナは、レイドボスに向かって地面を蹴る。
俺は右の拳にダンジョンポイントを込め、カナは日本刀にダンジョンポイントを纏わせたうえでの魔法剣だ。
<ていうか、二人とも素のステータスもヤバ過ぎね?>
「ふたりで沢山修業したからな!!」
<そんな理由!?!?>
コメント欄が加速すると同時に、レイドボスの姿が一気に大きくなる。
巨大なドラゴンを模したそれの表面に、「訓練用:ダンジョン協会備品」と書いてあるのが少し可笑しい。
「くらえっ!!」
どんっ!
「奥義……豪炎豪斬!!」
ざんっ!
光輝く俺の右ストレートがレイドボスの腹に命中し、燃え盛るカナの斬撃がレイドボスを袈裟懸けにする。
ズッ……ドオオオオオオオオンッ!!
比喩ではなく、レイドボスの巨体が大きく揺れ、ゆっくりと地面に倒れ込む。
ズズウウウウンッ
『あーっと、ケント&カナコンビの攻撃が炸裂!!
測定ダメージは…………9999!?』
ドラゴンの頭の部分にダメージが表示された。
ビーーッ!!
だが次の瞬間、アラートと共に「ERROR」の表示に置き換わる。
「……お?」
「……ふえ?」
『あっ……えーと、あの。
す、すさまじい攻撃でしたが……ダメージ測定装置がオーバーフローしてしまったようです。装置の検査と再起動を行いますので、レイドボスBに挑んでいる探索者の皆さんはしばらくお待ちください』
ざわざわざわ
何とも言えないざわつきが、会場を包む。
「お、おう?
カナ、俺たち……」
「な、なんかやっちゃいました?」
<やりすぎ!!×300000>
コメント欄から総ツッコミを受けるのだった。
*** ***
「いやはや……凄まじいですね、ケントさんたち」
「まさか”レイドボス”をダウンさせる探索者がいるとはの……リミッターを引き上げた方が良さそうじゃな」
「そ、そんなのはあの二人だけだと思いますが」
モニタールームでレイドボスチャレンジを観戦していた凛とガイト。
常識外れのふたりのコンビネーション攻撃に驚きの表情を浮かべている。
「もともと才能は持っておったが……カナたんの存在がそいつを完全に開花させたの」
「測定ベースですが、キーファちゃんのバフスキルの効果が5倍以上に上がっています。信じられない効果ですね」
「ワシとの対決で見せたアレか……むむぅ」
脳筋極まりない孫の波長に完ぺきに合わせるカナ、そこに心を通わせたキーファのバフスキルが組み合わさることで常識外の効果を発揮するという事か。
精神は肉体を超越する。
この言葉はガイトの座右の銘であるが、それを完璧に成し遂げた孫に対し……。
「見事じゃ!」
惜しみない賞賛を送るガイト。
「……だが」
「長官?」
「いや……」
首をかしげる凛に、何でもないと返しておく。
(やはり孫の本命はカナたん、ということか!)
(少々妄想癖があるとはいえカナたんは可愛いし美人だし、キーファたんとの相性はバッチリ! 文句のつけようもないのじゃが……むむぅ、凛たんがこのままなのはよくないのう!)
もう一人の可愛い孫的存在、凛の事も気になるガイトである。
(ああもう、やっぱりガイトさんはカッコいいなぁ!!)
キラキラとガイトを見上げる凛。
バァさんを早くに亡くし、やもめとして20年間を過ごしてきたガイトだが……。
(むむぅ、いっそ凛たんを娘にするというのも……)
(ああ~♡)
新たな家族が生まれるかもしれない?
そんな予感が少し漂う秋の夕暮れなのだった。
*** ***
「え、お早いお帰りですね」
メイン会場から少し離れた関係者駐車場。
その端に停められた緋城プロダクションのトラック。
義娘に会ってくる、そう言ったジルが思いのほか早く戻ってきたことに、驚きの声を上げるレニィ。
「カナ嬢はいかがでしたか?」
どさり
レニィの問いには答えず、車内に積まれたサーバーラックの前に座るジル。
ジャララッ
「……ジル様?」
ラックからキーボードを取り出し、何かのアプリを起動するジル。
「ふ、ふふふ」
何やらジルの様子がおかしい。
彼が起動したのは、緋城グループが開発した超高性能のハッキングツール。
カタカタカタ、ヴィンッ
そのまま、Tokyo-Zero管理システムのメインコンソールにアクセスする。
「え……!?」
現在中層部ではレイドボスチャレンジの真っ最中だ。
その状態のTokyo-Zeroにハッキングを仕掛け、何をしようというのか。
「ジル様、おやめください!!」
ヴィーーーッ!!
案の定、管理システムの防壁が作動する。
すぐに接続を切らないと、ここの場所を突き止められてしまうだろう。
「カナよ、言う事を聞かないお前が悪いのだ……」
たんっ!
レニィが止める間もなく、ジルはメンテナンス用の通路に繋がるゲートのロックを解除してしまった。
*** ***
ガコン!
「えっ……」
「へ?」
それは突然だった。
俺とカナが立っていた地面に穴が開く。
何か掴まるものは……思わず手を伸ばすが、直径5メートルほどの垂直の穴にそんなものはなく。
「うわあああああっ!?」
「きゃああああああっ!?」
「ぱぱ、カナおねえちゃん!?」
キーファの悲鳴だけを耳に残し、俺とカナは奈落の底へと落ちていった。




