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第69話

「ちっ……」


 緋城プロダクションのブースに戻る道すがら、ジルはひたすらイラついていた。


(あのガキ、オレ様に反抗してきやがった!?)


 もともと、結婚などに興味はなく寄って来た女を食い散らかすことを趣味としていた男である。

 以前のパーティメンバーである凛だけは食えなかったが、貧乳はターゲット外なのでどうでもいい。


「コラボに出したのは失敗だったか?」


 義娘カナを孤児院から拾い上げたのも、善良なプロダクションであることをアピールするためだ。

 ダンジョン配信者になりたいガキならだれでもよかった。


 義娘カナはジルの言う事をよく聞き、若手トップの探索者へと成長した。

 ようやく使いどころになったというのに……!


「まあいい」


 いくら【イレギュラー】が稼いでいると言っても、短期間で50億以上の金を準備するのは不可能だろう。

 緋城グループには催眠系の魔法が得意な人間もいる。

 操るなりなんなりして、とっとと南米のダンジョンへ送ってしまおう。


 そうジルは考えていたのだが……。


「ふふ、娘にはフラれたようねェ」


「……リヴァーサ殿」


 薄暗い通路の影から、ダークエルフの女が現れる。

 反ダンジョン組織シーヴァの総帥で、いまはジルの協力者。


「いう事を聞かない義娘なんて、今日ここで捨ててしまわなぁい?」


「いや、それは……」


 ここまで育てた”贄”を捨てる?

 そんな非合理な事をするわけがない。


 ずずずず


「…………そうかもしれない」


 だが、リヴァ―サの低い声を聴いているうちに、適切な選択肢だと思えてくる。

 いう事を聞かない義娘など、飼っておく必要はない。

 むしろ、《《オレ達の》》野望の邪魔になるなら……。


「あなたの新しいムスメ、この子がいるじゃない?」


「…………」


 どこから現れたのか、影のように寄り添う漆黒のワーウルフ。


「……シリンダ」


 《《義娘の名前》》を呼び、頭を撫でる。


 ぶああ


 漆黒のマナが、シリンダから立ち上る。


「そうだ、計画の準備を進めねばな……」


 ジルは会場に隣接する駐車場に停めてある、自社のトラックへ向かうのだった。



 ***  ***


『おおっと、スノウデル親子の先制攻撃!!』


 Tokyo-Zero中層に配置された3体の”レイドボス”。

 3つのブロックに分かれてレイドボスチャレンジが開催されていた。


 どがあああああああんんっ


『測定ダメージ2500!? 初めての2000越えです!!

これが世界ランカーの力なのか!!』


 おおおおっ!


 スノウデルさんとグレンさんのコンビネーション攻撃に、会場がどよめく。


「さて、そろそろ俺たちも行くか!!」


「はいっ!」


 <スノウデル親子、ヤバすぎて草>

 <前回のUGランクダンジョン調査時に比べて、全ステータスが100以上アップ、だと!?>

 <さすがにドラおじカナでも厳しいよな……?>


「ふ、甘いな……」


 心配するコメント欄に向けて、ポーズをとる俺。


「○○しないと出られないダンジョンで修行を繰り返し……日本に帰って来てからも(スキルを)重ね合い、情熱的に(力を)高めあって来た!」


「ふおおおおおっ!?」


「だから俺は!」


 がしっ


 俺はカナの肩を掴むと、ルビーのように美しい瞳を覗き込む。


「あうっ(も、もしかしなくてもアレ、だよね)」


「脳筋な俺の修行にも付いてきてくれる……そんなカナが大好きだ!!」


 ありったけの声で叫ぶ。


「ぴいっ!?

わ、わたしだって!!」


「ケントおにいちゃんと一緒に過ごす全ての時間が宝物!!

もう、ずっとずっとずっと大好きッ!!」


 しゅうううううう!


 お互いの頭から立ち上った湯気が、渦を巻いた。


 <ま、まさかの公開告白!?!?>

 <甘酢っぺえええええっ!!>

 <二人とも、可愛すぎん?>

 <式場の予約はこちら>

 <うおおおおお、脳が破壊されると同時に修復されるうううううううぅぅぅぅ!?>

 <相変わらずカナファンもレベル高いぜ!!>


 突然の行動に、混乱するコメント欄。


「はいはいっ!

フォロワーの皆さん!」


 流石に解説を挟まねばと思ったのか、元気よく右手を上げるキーファ。


「これは、ぱぱとカナおねえちゃんの切り札の一つなの!

名付けて、らぶらぶはいめんたる!!」


 <らぶらぶはいめんたる!?×50000>


「ぱぱとカナおねえちゃんが、ちょっと恥ずかしい事を言って高め合った後……キーファのスキルを使うと」


「わお~ん♡」


 ずごごごごごご


「ふたりはすっごく強くなれるの!!」


 <ど、どういうこと?>

 <やべ、いよいよ意味わかんなくなってきた……>


「こ~いうことだよ♪」


 キーファが、俺たちのステータスをコメント欄に向けて表示する。


 ========

 氏名:緋城 カナ

 年齢:18歳

 種族:人間


 HP:1100/1100(バフ効果+500)

 MP:610/610

 攻撃力:1000(装備効果+100、バフ効果+500)

 物理防御力:700(装備効果+200、バフ効果+500)

 魔法防御力:600(装備効果+200)

 魔力:500(装備効果+100、バフ効果+1000)

 必殺率:45


 LV2剣技

 LV2魔法剣

 LV2魔法

 レアスキル(グランブレイド)

 ========


 ========

 氏名:大屋 ケント

 年齢:27歳

 種族:人間


 HP:5000/5000(バフ効果+500)

 MP:0/0

 攻撃力:2200(バフ効果+500)

 物理防御力:1200(装備効果+200、バフ効果+500)

 魔法防御力:1200(装備効果+200)

 魔力:0

 必殺率:0


 LV3格闘(右ストレート)

 LV3間接(全回復)

 レアスキル(超てかげん、非常脱出、キラキラ紙吹雪(キーファ演出用、【超だいじ!】))

 ========


 <はああああああああああああっ!?×200000>


 ステータスが表示された途端、またもやコメント欄が沸騰したのだった。


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書籍版1巻の立ち読みができるようになっています! エモエモなケントとキーファの挿絵も見れますのでぜひっ!
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