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第68話

「さ~て、やってやるか!!」


 レイドボスが配置された中層フロアに降りる。

 俺のやる気は天元突破状態だった。


「わたしも頑張ります!!

 ああもう、過去一テンション高いです!!」


「おう、オヤジさんに目にもの見せてやろうぜ!!

 俺たちのコンビネーションで!!」


「はいっ!!」


 カナの義父であるジル。

 自分の娘を道具としてしか思っていない奴の態度を見て、カナを緋城プロダクションから移籍させることを決意した俺。

 まずはこのイベントで、俺とカナの絆の強さを見せてやるぜ!


「カナおねえちゃん、ぱぱカッコよかったね~!」


「そうなの!!

 撮影しとけばよかったよ~」


 キーファを抱き上げ、嬉しそうにくるくると回るカナ。


 ちょっとカッコつけすぎただろうか、今さらながらに恥ずかしくなってくる。


(絶対、ジルの思い通りにはさせねぇ)


「カナおねえちゃ~ん♡」


 ぎゅっ


「ふおおおっ!」


 実の姉妹以上に仲良しなキーファとカナ。

 3人で囲む食卓の暖かさ。

 この光景を、守りたかった。


 なにより、俺自身もカナの事を……。


 このレイドボスチャレンジで圧倒的な結果を出せば、ジルも考えを改めるかもしれない……この時の俺は、まだそう思っていた。


「やあケント君、こないだぶりだね」


「!!」


 金髪の偉丈夫が話しかけてきたのは、そんな時だった。


「スノウデルさん!?」


 思わず飛び上がって驚いてしまう。

 UGランクダンジョンの調査でも一緒になった、世界トップレベルの探索者。


「え? スノウデルさんもこのイベントに参加されるんですか!?」


「ああ、ガイト長官にどうしても、と招待されてね。

 せっかくだから息子のトレーニングを兼ねて参加することにしたわけさ」


「マジか……」


 掛け値なしに世界最強の魔法使いであるスノウデルさん。

 強力なライバル出現だ。


「す、凄い……本物のケントさんだ!」


「お?」


 その時、スノウデルさんの背後から一人の少年が走り出てきた。

 スノウデルさんと同じ金髪で、すらりとした長身だが顔つきは幼く……キーファより少し年上、くらいだろうか。

 この子はもしかして……。


「紹介が遅れたね、イベントに一緒に参加する息子の……」


「グレンと言います。よろしくお願いしますケントさん!」


 グレンと名乗った少年は、礼儀正しく一礼したのだった。



 ***  ***


「ケント君とキーファちゃんの解説動画を見て以降、すっかり君たちの配信にハマってしまってね。ダンジョンポイントパンチの極意を直接ケント君から学びたいというものだから、連れて来たんだ」


「なるほど」


 つまり、俺たちのファンになってくれたという事だ。

 大事にしないとな!!


「あ、あの!

 僕のダンジョンポイントパンチ……どうでしょうか?」


 ぴし、ビシッ!


 構えを取ると、右ストレートを繰り出すグレン君。


「ふむふむ……」


 彼の身体は充分に鍛えられているし、ダンジョンポイントの解凍もちゃんとできている。スノウデルさんの息子だけあって、豊かな才能を持っているみたいだ。


「うん、ダンジョンポイントの込め方も無駄がないし、基礎はバッチリだな!」


「ほ、ホントですか!!」


「せっかくだから、(今思いついた)応用編を教えようか。

 右脚と腰に、数ポイント分のダンジョンポイントを込めてごらん。

 そうすると、軸足と腰の回転が安定して……」


 ぶおっ!!


「うわ、凄い!!」


 グレン君の拳から、ヴェイパーコーンが発生する。


「君の拳は、音速を超えた!」


「うおおおおおおっ、ケントさん、これマジですごいっす!!」


 飲み込みも早いし、センスもばっちりだ。

 さすがスノウデルさんの息子だぜ!



 ***  ***


「……え~っと、何かねこれは?」


「は、はは……わたしも初めて見ました」


「へへ~、多分いつもの思い付きだよ!」


「そ、そうなのかい?」


 音速を超えるパンチを繰り出す探索者など、聞いた事も見たこともない。

 それをこの短期間で思いつき、息子に会得させるなんて……。


「……相変わらずとんでもないな、ケント君は」


「自慢のぱぱですから!

 ぱぱ、キーファもするする~!」


 嬉しそうにふたりの元に駆け寄るキーファ。

 ケントのダンジョンポイント講座は、まだまだ続きそうだった。



 ***  ***


「さっきの、キーファもやってみる!

 えいっ♪」


 ぶおんっ

 どがっ!


 キーファのひっぷあたっくから放たれた衝撃波が、ダンジョンの壁をへこませる。


「え、壁が壊れた!? は?」


 相変わらず可愛さの世界ランカーではあるが、そろそろ凶悪な威力になって来たな……。

 お外でやりすぎないよう、言い聞かせておく必要があるかもしれない。


「はじめましてグレン君、キーファだよ~!」


 背の高いグレン君を上目遣いで見上げると、笑顔で両手と尻尾を振るキーファ。

 可愛い。


「あ、う……ぐ、グレンだ。

 よ、よろしく」


「よろしくぅ!」


 ぎゅっ


 グレン君の右手を両手でしっかりと握るキーファ。


「う、うあっ(動画で見るより何倍も可愛い!?)」


「えへへ~♪」


 満面の笑顔を浮かべるキーファ。

 探索者仲間に同世代の子はいなかったからな……キーファも嬉しいのだろう!


 だが愛娘よ、その攻撃は男の子に対してオーバーキルだぞ?


 しゅううう


 案の定、顔を真っ赤にして頭から湯気を立ち昇らせるグレン君。

 ……ん?

 この反応は……。


「なあなあカナ、グレン君ってもしかしてキーファに惚れたのかな?

 俺らのファンって言ってたし!」


「……そうですね(なんで他人の恋愛感情には敏感かなぁケントおにいちゃんは!)」


 なぜかカナにジト目で睨まれてしまった。

 そうしてじゃれ合っているうち、レイドボスチャレンジの開始時間になるのだった。


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書籍版1巻の立ち読みができるようになっています! エモエモなケントとキーファの挿絵も見れますのでぜひっ!
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