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第48話

「こ、これは!?」


 俺のケントキャノン(照)が炸裂し、奥に進むことができた探索チーム。

 壁の向こうには予想通り、中層に通じるスロープがあった。

 長いスロープを降り、角を曲がった途端……ダンジョンの雰囲気が一変したのだ。


「うへぇ、なんかキモいな」


 上層では白かグレーの石造りだったダンジョンの壁は、毒々しい赤色に。

 所々、鳴動するように波打っている部分がある。


「ううっ、ちょっとくすぐったい」


 マナが上層より濃いらしく、ムズムズしているキーファ。


「くまさんセット、着るか?」


 改造したこの装備には、ある程度の魔法防御力がある。

 過剰なマナを防いでくれるかもしれない。


「うん、ありがとうぱぱ!」


 ふぅ、キーファの可愛さがさらに上がってしまったな!!


「ケントキャノン……ふふふ、ケントキャノン」


 ツボに入ったのか、さっきからずっと笑っているカナ。


「いい加減思い出し笑いはやめてくれよ……このこの!」


 恥ずかしくなってきた俺は、カナの頬をむにむにする。


「うひゃあ!?

 いやいや、わたしはカッコいいと思ってますよぉww」


「草生やすな!」


「ひゃ~!?」


 <この場所でなんでいつも通りなのこのふたりww>

 <いやいや、UGランクダンジョンだよ?>

 <これも二人の絆の強さがなせる技……推せる!!>


「はは……その余裕、見習いたいものだね」


 スノウデルさんにも苦笑されてしまった。


「ほら、お客さんのお出ましだ」


「!!」


 フロアの奥から、モンスターの群れが湧き出してくる。


「あれは! バジリスクの亜種か?」

「それにしては図体がでかいな……尻尾にトゲがある。石化効果のある攻撃に気を付けろ!」


(はえ~、あのトカゲ、バジリスクっていうのか)


 実はグローなんとかダンジョンで戦ったことがあるのだが、みんなを混乱させてもいけない。


「俺に任せてください!」


 ここは、実際に戦って示すべきだろう。

 アイツは大したことのない、ふつーのモンスターであると!!



 ***  ***


 グガルウッ!


「おっと」


 咆哮と共に、長い尻尾でこちらを攻撃してくるバジトカゲ。

 コイツの尻尾から分泌される毒には石化効果があるのだが、当たらなければどうということはない。


「ほいっ」


 バギッ


 ダンジョンポイントパンチで毒液を分泌するトゲを折る。


「海釣りでエイが釣れた時は、安全のため毒針を折るじゃん? そんな感じ」


 <エイと一緒にすんなwwww>

 <バジリスクってAランクモンスターだよな? その亜種っていえば……>

 <ダンジョン庁の鑑定速報来た!>

 <”仮名:バジリスク・ロード”……推定ランクA3!>

 <ファーーーーーwwww>

 <いきなりA3ランクモンスター!?>

 <A3ランクモンスター=アカエイ>

 <ねーよwww>


 なんかコメント欄が盛り上がっているが、以前戦った抹茶ドラゴンよりはくみしやすい相手だ。

 動きは鈍いし。


「コイツの毒には石化効果があるが……Lv7ハイポーションを使えば石化を治すことができるから、覚えておくように!」


 一度毒をくらって、左手の一部が石化した時は料理をするのに苦労したぜ。

 たまたまこの効果を発見したから助かったけど。


 <LV7ハイポーションwwww>

 <いやそれ、めっちゃ高級品!>

 <大人しく”リフレッシュ”とかの解除魔法使えwwww>

 <そんな使い方するやついねーよww>


「え、これ高級品なの?」


 俺は腰に下げたポーチからLv7ハイポーションを取り出す。


「キーファもいっぱいもってるよ!」


 キーファが背負ったリュックには、Lv7ハイポーションを始めたくさんの回復アイテムが詰まっている。

 俺たちは殆ど魔法を使えないからな……安全のためにたくさん集めていたのだ!!


 <マジかよwwww1個50万円wwwww>

 <えっと……初見だけど日本の探索者ってヤバない?>

 <こんなのドラおじだけです笑>

 <こ、これが……Dora-Oji!!>


 海外の視聴者まで、俺を使って遊んでいる。

 くそ、少しはカッコいいところを見せなければ。


「ちなみに」


 俺は先ほど折ったバジトカゲのトゲを手に取った。


「コイツはしばらく毒を出し続ける」


 ぞぞぞぞ


 ダンジョンの奥からキメラっぽい(さすがにちょっとは勉強した)モンスターが出現する。


「武器としても使えるから、覚えておいてくれっ!」


 ぶんっ


 バジトカゲのトゲを、キメラっぽいモンスターに向けてぶん投げる。


 ドシュッ


 棘が刺さったキメラっぽいモンスターは、見る見るうちに石化していき……10秒後には見事な石像が出現していた。


「とまあ、魔法が使えないなりに戦い方はあるってことだ」


 ふむ、この石像凄い迫力だな……メ○○リで売れないだろうか!!


 <参考になる……のか?>

 <まずバジリスク・ロード(A3ランク)を倒します→そいつの毒棘でキメラ(Bランク)をやっつけましょう>

 <前提がムリゲー過ぎんか?>

 <ドラおじ演算wwww>

 <もうツッコミきれないよ……>


 なぜかお疲れ気味のコメント欄なのであった。



 ***  ***


「いやはや……ケント君はさらに進歩しているようですね。

 モンスターの棘を武器にするなんて」


 ケントの戦い方を見て、トージが苦笑している。

 だがその声色は、呆れるというよりも驚愕の成分が強い。


「倒したモンスターはすぐに消えてしまうからな。

 魔石の確保と素材の固定化を優先する通常の探索者ではもちえない発想だ」


「それに彼の動き……まさか新種であるバジリスク・ロードと戦ったことがあるのでは?」


「グロウイングダンジョンに潜っていたんだ……ありえない話じゃない。

 ただ……」


「ただ?」


 腕を組んだスノウデルが、にやりと挑戦的な笑みを浮かべる。


「世界初のUGランクダンジョンに腰が引けていた我々だが……彼を見習ってもっとアグレッシブに行くべきだ。そうは思わないかね?」


「ふふっ、ですね!」


 スノウデルに習い、獰猛なを浮かべるトージ。


「世界ランカーの力、見せてやりましょう!」


「「おおっ!」」


 ケントにだけいい恰好はさせられない……気合を入れなおした探索者たちは、次々に新種のモンスターを仕留めていくのであった。



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書籍版1巻の立ち読みができるようになっています! エモエモなケントとキーファの挿絵も見れますのでぜひっ!
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