第42話
「うおおお、本物のDora-Oji!
KeyfaにKanaもKawaiiのだ!!」
ぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねるタリアと名乗った少女。
背中には大きなブーメランを背負い、防具らしき革製の胸当てをしているところから、探索者だと思われる。
「にしし! 後でSign下さい!」
愛嬌のある童顔から幼く見えるが、スタイルは良くカナと同じくらいの年齢だろう。
黒いショートパンツからすらりと伸びる脚が眩しい。
「ああ、そんなのいくらでも書くぜ」
「キーファも書く!」
「わ、わたしも……(またまたライバル出現!?)」
「わお! ありがとうなのだ!!」
俺たちが彼女のブーメランにサインをしてやると、もっと飛び跳ねて喜ぶタリア。
サインのしがいがある子だ。
「……紹介が遅れましたね」
元気いっぱいなタリアの様子に笑顔の桜下さん。
「彼女の名前はタリア・レヌルス。
この島に住む部族の長の娘で……UGランクダンジョン探索の案内役になります」
「そして……Kentoたちの大ファン!!
会えてうれしいよ~っ!!」
ぴょん!
「「「わわわっ!?」」」
感極まって飛びついてきたタリアを、慌てて受け止める俺たちなのだった。
*** ***
「……ということで、目的のダンジョン仮称:UG-0001は、本島から10㎞程離れた小島に出現しました」
ヴンッ
「おお~」
スノウデルさんから事前に情報は貰っていたが、先遣隊が周辺調査を進めていたらしい。
島の詳細な立体映像をテレビに映してくれる桜下さん。
「おっきい!」
映像を見て、歓声を上げるキーファ。
「こ、これは特徴的な見た目だね、ケントおにいちゃん」
「だな……」
カナの言葉に100%同意する。
島自体は周囲1㎞ほどの大きさだろう。
だが、その中央部には高さ数十~数百メートルはある巨大な石柱群が螺旋階段のようにそびえたっている。
「げーむの世界みたいだね、ぱぱ」
「ああ!
ダンジョンはここか……?」
石柱群の中腹に、ぽっかりとダンジョンの入り口が開いている。
「通常、ダンジョンは地表より下に出現する事が多く、今回のように山の中腹に出現するタイプは非常に珍しいです」
「濃度の高いマナは空気より重く、地下に溜まりやすいから……という説が有力なんですよね」
「ふふ、さすがカナさん」
「へ~」
「ほへ~、ぱぱ、勉強になるね!」
「だな、さすカナ!!」
「いやいや、けっこー常識ですよ?」
ぺしん
相変わらずな俺たちの反応に、思わずツッコミを入れるカナ。
「……この島は、タリアたちの部族の聖地。
長老たちの中には邪悪なダンジョンを消し去れ、という人もいるけど……タリア、このダンジョンは部族のみんなの役に立つと思うのだ!」
にぱっと笑うタリア。
「なるほど」
今やダンジョン探索は世界的な一大産業だ。
魅力的な素材が採取できるダンジョンが出現したとなれば、探索者も集まるし素材の取引代金の一部は地域に還元されるルールもある。
「超高ランクのダンジョンが存在すると、観光客の足が鈍りますからね。
オーストラリアのダンジョン協会は、地域振興も兼ねて沢山の探索者を呼び込みたいようです」
桜下さんがテレビを地元の放送局に切り替える。
『……レヌール島に出現したUGランクダンジョンに対し、国際的な調査団が派遣されることになりました。
世界各国から、次々と著名な探索者が到着しています!』
テレビの映像は、本島の港に切り替わる。
『あっ!! いま降りてきたのは、SNSのトレンドを席巻……わが国でもファンを増やし続けているDora-OjiことKento Ohyaですっ!!』
おおおおっ!
俺がスノウデルさんと握手をするシーンが大写しになる。
『サウザンドのスノウデルも認めるその実力……さっそくインタビューしてみましょう!!
Mr.Ohya!! 今回のUGダンジョン、何日で攻略できると思いますか?』
ビッ
カメラの前で、Vサインをする俺。
……これってこんなことを聞いてたのか。
上手く聞き取れなかったから、とっさに適当なポーズを取っちゃったぜ。
『ふ、二日!? 僅か二日での攻略宣言です!!』
『キーファのぱぱはスゴイんだから!』
『ケントおにぃ……ケントさんなら当然です!』
『日本トップクラスの探索者、Kana Hijouも認めるその実力!
島全体が熱く盛り上がっています!!』
わああああああっ
歓声を上げる住民たち。
本島のあちらこちらには俺とキーファ、カナのポスターが貼られ、土産物屋で公式グッズが売られる様子が映る。
「……マジか、こんなことになってんのか」
「キーファたち、大人気だね!!」
「は、恥ずかしい……」
「Dora-Ojiなら当然なのだ!」
誇らしげに胸を張るタリア。
「せっかくなので、本島に行ってみます?」
桜下さんの言葉に従い本島にメシを食いに行った俺たちは、沢山のファンに囲まれる事になるのだった。
……もちろん、ダンジョンポイントを貰えるようアピールした。
オージー産のダンジョンポイント、うまうまだったぜ!!




