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第31話

 実習用Eランクダンジョンで発生したダンジョンブレイク。

 学院の講師たちは体育館にいた一般客と、他のダンジョンに潜っていた生徒の避難を先導している。


「マヤ、救助隊は派遣されたのか?」


「う、うん!

 でも、既に中層にはモンスターが溢れていて、なかなか奥に進めないみたい!」


 マヤが手近な講師を捕まえて状況を聞いてくれた。


「ちっ」


 おそらく、ダンジョンブレイクが中層で発生したことで楓子は下層に閉じ込められてしまったに違いない。

 ダンジョンブレイク時に出現するモンスターは、ダンジョンのランクを大きく上回ることもあり、事態は一刻を争う。


「ケントおにいちゃん!

 わたしたちも行きましょう!!」


「ああ、もちろんだ!!」


 探索者養成校の講師は、怪我で引退した探索者やダンジョン関連企業の出向者などが多く現役の探索者は少ないそうだ。


「俺とキーファ、カナが救援に向かいます」


「ケントさんとカナさん自ら!? 大変助かります!」


 俺たちは学院から許可を貰うと、実習用Eランクダンジョンに向かう。


「ケントにぃ、あたしも行く!」


「マヤ、お前はまだ半人前の学生だ!

 キーファのそばから離れるんじゃねーぞ?」


「了解っ」


「よろしくね、マヤおねえちゃん!」


「ケントおにいちゃん、急ぎましょう!」


「ああ!!」


 実習用Eランクダンジョンの入り口には、救出された生徒たちが座り込んでいる。


「す、凄い……ケントさんとカナさんが助けに行ってくれるわ!」

「頼みます!」


 彼らの声援に応えながら、俺たちはダンジョンの中に飛び込むのだった。



 ***  ***


「ちっ、数だけは多いな……うらあっ!」


 ドンッ!


 惜しみなくダンジョンポイントを込めた右ストレートが、ゴブリンを5体ほど消し飛ばす。


 だがモンスターは後から後から湧いてくる。

 こういう時は……魔法の出番だ!


「頼むぜ、カナ!!」


「はいっ!!」


(カッコいいところを、見せるぞおおっ!)


 カナは鞘を握った左手に魔力を込める。


 ブウウウンッ


 一瞬、鞘の先頭が赤熱した。


(こ、この手ごたえは!?)


 いつもより、魔力の収束率が良い。


「……行きます! 赤熱乱舞!!」


 ゴオオオッ!


 抜刀すると同時に、燃え盛る爆炎が刀身から放たれ、モンスターの群れを飲み込んでいく。


 ズッ……ドオオオオオオオオンッ!


「ふへ?」


 カナが想定していたよりその爆炎の威力は大きく……フロアを埋めていた数百体を超えるモンスターをきれいさっぱり焼き尽くしたのだった。


「おお、スゲェ!! やっぱカナの魔法はカッコいいな!!」


「おねえちゃんすご~い!!」


「こ、これが緋城カナ……ヤバすぎる」


「……さあ、道は開けました。

 先を急ぎましょう」


 刀を鞘に納め、クールに振舞うカナだがその内心は……。


(え、ウソ?)

(今の威力なに? 少なくともいつもの3倍以上の威力があったんですがっ!?)

(おにいちゃんがくれた鞘の効果かな……うおおおおお、おにいちゃんの愛、最高だぜぇ!!)


 大興奮していた。


「次の階段を降りれば下層エリアに入るらしい。

 急ぐぞ!!」



 ***  ***


 ――――― 数分前、Eランク実習ダンジョン下層フロア


「はあっ、はあっ!」


 探索者養成校の生徒である風間楓子は、モンスターの群れからひたすら逃げ惑っていた。


 突然響き渡ったダンジョンブレイクの警報音。

 どうやらモンスターは中層フロアを埋め尽くしたらしく、下層フロアの奥にいた楓子は外に出る事も出来ずに閉じ込められてしまう。


(ケント様が、助けに来てくれるはず……!)


 簡単なクエストだからとソロで潜ったのは大失敗だったが、今学園にはケント様がいるのだ。

 彼は必ず自分を助けに来てくれる……そう思う事で少女はなんとか正気を保っていた。


 グルルルルルル……


「あっ」


 だがその微かな望みは、あっさりと断ち切られる。

 逃げ込んだ通路の奥から現れたのは醜悪な姿をした巨人だった。


「と、トロール!?」


 Eランクダンジョンで実習中の自分にはとても倒せない上位モンスター。


「ふぁ、ファイア!」


 ボオッ


 一縷の望みをかけて魔法を発動させるものの、トロールの右腕の一振りであっさりと吹き散らされる。


 ガウッ


 トロールは目の前に現れた小癪な人間を始末するべく動き出した。


 ブオンンッ!


 屈強なトロールの右腕が動き、棍棒がうなりを上げながら楓子に迫る。


「ひ、ひいっ!?」


 ドガッ!


 バキボキベギッ


「ぐぎゃああっ!?」


 身体じゅうの骨が砕ける音が聞こえた。

 あっけなく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる楓子。


「……」


 そのまま意識を失ってしまう。

 ケントがプレゼントした首飾りが、きらりと弱弱しい光を放った。



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