第29話
ドッカアアアアアアアアアアンッ!!
巨大な爆発が、ダンジョン全体を揺らす。
「うそ……ケントおにいちゃん?」
スノウデルさんが寸止めの魔法を使ってくれているから、死ぬことはないと分かっていても、最初の一撃でケントが倒されてしまったのだ。
思わず呆然と立ち尽くす。
「ひゅう! さすがに”サウザンド”の魔法は半端ないな!
一気に決めさせてもらうぜ!」
「くっ!?」
爆炎の向こうから、迷宮神技のトージの声が聞こえる。
しょせんAAランクの自分は、全てのステータスでトージに劣る。
それに……。
(いやいや、ヤバすぎでしょ!)
初めて間近で見たスノウデルのステータス。
サウザンドの二つ名の通り、全ての項目が1000を大きく超える。
だがケントおにいちゃんは、いくつかの項目で彼を超えている!
しかし、彼は既に倒されてしまった。
ならば、ケントおにいちゃんの一心同体のパートナー!!!!として、
自分が持つすべての力を駆使して粘るんだ……!
「あつつ……やっぱ上位探索者の魔法はスゲェな!!」
「ふへ?」
いささかのんびりしたケントの声が聞こえた。
「な、なんだと?」
スノウデルの声に僅かな焦りが混じる。
「あ~、ジャケットがボロボロになっちまった。
桜下さん、これって経費で落ちますかね?」
『だ、大丈夫だと思います』
「よしっ!」
冒険着はボロボロになっているものの、けろりとした顔のケントが爆炎の中から現れた。
(え、えええっ?)
あれだけの威力の魔法を食らったのに……慌ててケントのステータスを確認するカナ。
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氏名:大屋 ケント
年齢:27歳
種族:人間
HP:1882/4000
MP:0/0
攻撃力:1620
物理防御力:1200(装備効果+200)
魔法防御力:1200(装備効果+200)
魔力:0
必殺率:0
LV3格闘(右ストレート)
LV3間接(全回復)
レアスキル(超てかげん、非常脱出、キラキラ紙吹雪(キーファ演出用、【超だいじ!】))
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「ひゃうっ!?」
そうだった……ケントおにいちゃんのHPはぶっ飛んでるんだった。
自分なら二度は死んでそうな魔法を受けてなお、半分近くのHPを残している。
<うせやろ!?>
<さっきのって、スノウデルの極大魔法だよな?>
<なんで2000以上削られて無事なんだよ……>
<ワイ700人分やんけ!>
<キミはもうチョイHPを上げてもろて>
「…………」
相手の攻撃を引き付ける、とはこういう事?
目の前で繰り広げられる信じられない事態に、唖然とするカナなのであった。
*** ***
(うおおおっ、上位探索者の魔法超やべぇ!)
とんでもない一撃を食らった俺は興奮していた。
「ほらな、やっぱ抹茶ドラゴンなんて大した事ねぇって!
これが上位探索者の力……やっぱスゲェ!!」
<ああうん、確かにスノウデルはグリーンドラゴンを10体以上狩っているけども>
<比較対象wwwwww>
「だけど、もう一発食らうとヤバいな」
HPに極振りしている俺の脳筋ステータスが一撃で半分以上削られると思わなかった。
「よし、”全回復”!」
滅多に使わない回復スキルを発動させる。
ぱあああああああああっ
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氏名:大屋 ケント
年齢:27歳
種族:人間
HP:4000/4000
……
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「な、なにっ!?」
<うええええええええええっ!?>
「……は?」
コメント欄にスノウデルさん、カナまで驚いている??
「どうした、カナ?」
「い、いやあの。
ケントおにいちゃん、魔法使えないんですよね?
なのに回復……」
「ああこれか」
確かに俺は魔法を使えないが……。
「ダンジョンポイントはHPのステアップに使えるじゃん?
なら、上手く使えば回復できるのは常識だろ?」
「え、えええええええええええっ!?」
大げさに驚くカナ。
あれ、俺変なこと言ったか?
まあ、正直コスパが悪い(ダンジョンポイント1でHP5回復)んで、あまり使いたくないんだけどな。
先日の抹茶ドラゴンの報酬として貰った人工モノのポイントが余ってて助かったぜ!




