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第15話

「とりあえずこんなもんか?」


「ふひぃ、つかれた~」


 配信を終えた俺は、キーファをおんぶするとメタル・スラッグの外に出る。

 ダンジョンの外には桜の花があしらわれた中型バスが停まっていた。


 このバスには4K対応の配信設備とキャンピングカーのような休憩施設が備え付けられており、自宅まで自動運転で送迎してくれる。

 すごい設備だ……実は桜下プロダクションってヤバい?


「ぱぱ、今さらだよ~」


 俺の背中で寛ぐキーファの可愛い口に、ミルクキャラメルを放り込んでやる。


「んん~♪」


 キーファの笑顔に癒されていると、バスの中から桜下さんが現れた。


「ケントさんお疲れ様です」


「こんなんでよかったですかね?」


 俺が人型金属を倒し、キーファが世界一可愛いヒップアタックで金属スライムを倒した後は、フォロワーと雑談した。

 配信自体は30分くらいだったので、少々物足りなかったかもしれない。


「良いも何も……」


 苦笑いする桜下さん。

 むむ、やはりキーファ分が足りなかったようだ。

 これではいけない……!


「くぅ、キーファ!

 疲れてるところすまんが、今すぐ”ぱくぱくキーファ”をっ!」


「いやいや、そーではなく!」


 ぺしん


 ケーキセットをウー○ーで頼もうとスマホを取り出した俺に桜下さんのツッコミが炸裂する。


「見て頂いた方が早いですね。

 これが、今回の配信の成果になります」


【配信No:SSP10293-33231

 視聴者数:1,572,391

 投げ銭:3,120,783円

 ダンジョンポイント:26,321

 *源泉徴収及び弊社手数料徴収済み】


「なん……だと?」


 桜下さんのタブレットに表示された数字に驚く。

 視聴者数が、謎にバズった前回の配信を上回っているだと!?


「わわ、キーファたちお金持ち!」


「ああ、キーファのお陰だ!」


 俺はキーファを抱き上げ、くるくると回る。


「わ~い♪」


「前回の配信分の源泉徴収も引かせて頂いたので金額は少なくなってますが。

 今後もこのくらいの再生数は余裕で望めるでしょう……というか、デビュー配信として新記録ですね」


「……マジですか?

 俺の配信を見たいなんて、マニアが多いな……」


「それは、ぱぱがカッコいいからだよ!」


「キーファ……!」


 ぎゅっ!


 こんな俺を褒めてくれるキーファ。

 感極まった俺は彼女を抱きしめる。


 いつも通りな俺たちの様子に苦笑する桜下さん。


「色々聞きたいことがあるのですが……。

 あんな超絶スキルどこで身に着けたんです?」


「え?」

「ふお?」


 桜下さんの言葉に顔を見合わせる俺とキーファ。

 超絶スキル……何のことだろうか?


「もしかして、”ダンジョンポイントパンチ”のことですか?」


「だ、ダンジョンポイントパンチ??」


 鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべる桜下さん。


「え? あんなの誰でも出来ますよね?」


「いえ、出来ませんよ」


「え?」


「え?」


「またまた~」


 桜下さんまで俺を騙そうとするとか、人聞きが悪い。


「私、15年近くダンジョン業界で働いていますが……初めて見ました」


「……マジですか?

 こう、ダンジョンポイントを解凍して拳に込めるだけなんで……」


 俺の拳がわずかに光る。


「い、意味が分かりません」


「え?

 あれ?」


 ……どうやら俺たちと桜下さんの間に、大きな認識のずれがあるようだ。


「お茶でも淹れましょうか」


 少し話し合いが必要だろう。

 俺は備え付けのケトルで緑茶を淹れるのだった。



 ***  ***


「……ということで、小さいときのキーファはたびたび体調を崩していたんで、なにか効くアイテムは無いかとダンジョンに潜りまくっていたんです。でも俺は剣も魔法も使えない……とりあえず毎日筋トレして体を鍛えていたんですが、某格闘漫画を読んでてひらめいたんですね」


 本当は某漫画のようにエネルギー波を出したかったのだが……ダンジョンポイントにそこまでのパワーはなかった(密かに研究は続けているが!)。


「パンチが命中する瞬間にダンジョンポイントのエネルギーを解放することで、打撃が効かないモンスターにもダメージが与えられるという訳です」


「な、なるほど?」


「キーファもぱぱに教えてもらったの。

 ぱんちするとおててをケガしちゃうから、おしりに込めるんだ~!」


 お尻をふりふりするキーファ。

 超新星爆発も収まるほど可愛い。


「…………」


 何故か頭を抱えている桜下さん。


「そ、それが本当なら探索者の常識が変わりますよ……」


「こんなので良ければ、講座でも開きましょうか?」


「!! ぜひ!!」


 ……という事で、来週にプロダクションが経営する探索者養成校に教えに行くことになった。

 学校に通っていない俺が……変な気分である。


「さて、そろそろ帰るか……」


 キーファにLPを補充してやる必要もある。


 俺はキーファがお茶菓子のクッキーを食べ終えたことを確認すると、バスを自宅に向けてもらうよう桜下さんにお願いしようとして……。


 ピリリリ


「失礼します」


 俺の言葉をさえぎって、携帯電話の着信音が響く。


「はい……凛は私です。

 ……ええっ!?」


 通話を始めるなり、飛び上がって驚く桜下さん。


「ぱぱ、凛おねえちゃん何があったのかな?」


「さあな」


「ええ、ええ……こ、こちらとしてはありがたいですが……はぁ、明日ですか?」


 ちらりと桜下さんがこちらを見る。


「大丈夫ですよ」


 彼女の口ぶりから配信関係だと判断した俺は、桜下さんにサムズアップを送る。


 ぺこり


「わかりました。それでは明日14時からという事で……」


 ぴっ


 電話を切った桜下さんが、俺たちの対面に座る。


「極めて異例なのですが……。

 ウチのライバルである緋城プロダクションのカナさんから……コラボの依頼がありました」


「??」


「ふ、ふおおおおおおおおっ!?」


 バスの中に、キーファの驚く声だけが響き渡ったのだった。



 ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます。


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書籍版1巻の立ち読みができるようになっています! エモエモなケントとキーファの挿絵も見れますのでぜひっ!
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