幕間2
夏休みが終わり学校が始まり数日後、クラスメイトの秋山孝、秋山の幼馴染の外立桜華と談笑していると、教室の扉を開け、桜華と瓜二つの女の子が入ってきた。彼女は桜華に手に持っていたお弁当を渡すと、俺に視線を移すと桜華の後ろに隠れた。桜華が穏やかな声で言う。
「この子、中学1年の私の妹で美咲っていうの。世界一可愛い愛しの妹だよ」
美咲は桜華の影に隠れながら俺に小さな声でよろしくお願いしますと呟いた。
彼女の声には自信がなさそうな性格が表れていた。
「美咲、こちらの怖い見た目のゴリラさんが氷川拳志くんで中身もゴリラさんでとっても強くて優しいんだよ。」
彼女は俺の顔を見ると一瞬驚いたが、すぐに元の自信なさげなおどおどとした表情に戻ってしまった。俺は一瞬の違和感をスルーして逃げるように教室を出ていく美咲を見送るのだった。
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今日は姉の桜華にお弁当を忘れたと言われ、届けに来た。
お姉ちゃんの教室に着くと、いつものように女子用の制服を着ている秋山さんと一緒に大男がいた。
あんなに大きな人は初めて見た。弁当を渡した後、彼に視線を向けると、思わず姉の後ろに隠れてしまった。姉である桜華お姉ちゃんが私の頭を撫でながら
「この子、中学1年の私の妹で美咲っていうの。世界一可愛いいとしの妹だよ」
と私の紹介をしてくれた。私は拳志さんにおずおずと自己紹介をした。
「私、桜華お姉ちゃんの妹で、美咲です…」
「美咲、こちらの怖い見た目のゴリラさんが氷川拳志くんで中身もゴリラさんでとっても強くて優しいんだよ。」
そんなやりとりをして、私は拳志さんの方へ顔を向けるとある違和感に気づいたがすぐに表情を戻した。
(いけない、バレないようにしなきゃ。)
逃げるように教室をあとにし、一人になった時、拳志のことを思い返していた。微かに感じた妖力の残滓。それは私たちが扱う神通力とは微妙に異なる力の結界の跡だった。違和感は僅かであったが、普通の人ではありえないモノだった。
ただの気のせいとは思えない。私の中で心がざわついていた。今日の出会いは、何か特別な意味を持つのかもしれない。