幕間1
ある日の夜、闇夜を走る影がいた、人影は、気配を殺し、無害なモノたちに気付かれないように辺りを見回しながら、千里眼を用いて遠くの様子を探っていた。
近辺では1番高さのある高校の屋上へ助走もなしに一息で飛び乗り辺りを見回す。
そして人影の視線は、学校から離れた場所にある小さな公園で停止した。
そこでは、氷川健志が青い肌の奇妙な生物、青い河童と戦っていた。
人影は、すべてを見通すその視線を、まるで新しいゲームを見つけたかのように輝かせていた。
氷川がジャブを繰り出し、青い河童がそれを巧みに避ける様子を一つ一つ観察していた。
「へえ、氷川くん、意外とやるじゃないですか…」
と、人影は甘い声で間延びした口調で呟いた。青河童は動きが人間離れしていること、そして氷川がそれに対抗するための技術を駆使している様子から、この戦いがただのケンカではないことを理解していた。
人影の視線は、少し離れた場所に立つ八雲澄香に向けられる。
八雲澄香は、氷川と青い河童の戦いを値踏みするように眺めていた。彼女はその様子を冷静に観察し、八雲澄香が何を考えているのかを推測する。
「へぇ、八雲さんも出てくるなんて思わなかったなあ。」
と、人影は自分だけに聞こえる声で言う。
人影は、格闘技や武術には詳しくない、氷川が使う技術がどの格闘技や武術のものかはわからなかった。
しかし、視線の先の氷川がとても強く、並大抵の妖怪では太刀打ちできそうにないことを感じ取っていた。
氷川が青い河童の腕を逆に捻り上げる瞬間捻るのと同じ方向に転がり逃げる様子を見て
「普通の河童じゃないよね。格闘技の心得があるって聞いていたけど、ほんとにその通りだねぇ」
と納得する。
彼女の視線は、氷川が青い河童との戦いで体勢を立て直す様子から離れず、次の動きを予測していた。
「でも、氷川くんの方が少し強そうだね。」
と、人影は楽しそうに両手を合わせる。
この戦いは人影にとってただの見世物ではなく、自身の能力を試すための素材でもあった。
戦闘が終わり、八雲澄香が氷川に新たなアルバイトの話をしている間に、彼女はそっとその場を離れ、闇の中へ消えていった。人影の心の中で、「氷川くん、これからもっと面白いことが待ってるよ。なら、私は徹底的に暗躍しなくちゃね」と、いつもの甘い声で呟き、既に次の計画を練り始めていた。
「それにしても、この河童たち、どこから来たのかな?それに、氷川くんがどこまで強いのか、もっと見てみたいよね」
と、人影は自分だけの探検心からくる喜びを感じながら、夜の闇に溶け込んでいった。彼女にとって、この戦いは単なる幕間の一ページに過ぎず、人影の本当の冒険はこれから始まることを予感していた。