婚約破棄は悪口とともにやってくる。あなたが婚約破棄したいなら私からあなたに先に婚約破棄を宣言しますわ
「見かけ倒しで退屈な女だよあれは、本ばかり読んでいて」
私はその台詞を聞いたとき、怒るべきたったのかもしれませんわね。
私は婚約者である王太子殿下が嘲るように笑いそのような言葉を吐いたとき、咄嗟に隠れてしまってました。
魔法学院の中庭で、庶民から魔法力の高さを見込まれ、男爵の養女になったエミリさんが王太子殿下とベンチに座り笑っていました。
その王太子殿下の手はエミリさんの肩にありましたわ。
「まぁ、退屈なんていってあげたらお気の毒です」
嘲る王太子殿下に、同じような笑いかたで答えるエミリさん。お前は優しいななど王太子殿下が言われますが、口先だけですわ。
私は隠れてその会話を聞きながら、今まで愛してるよと囁き、私を抱き締めたあの王太子殿下の姿は演技で、それに気がつかない私の間抜けさを呪いました。
公爵令嬢だから優しくしてやっているだけだとか、本ばかり読んでる変な女だよとか言われ、私は呆然としてました。
私は隠れて二人がいちゃつくのを見ながら、ギリギリと唇を噛み締めました。
あれと婚約破棄をぜったいにするとか言われてますが、見てなさいと思いながら私は悔しさを噛み締めながら、復讐の第一歩に踏み出したのでした。
「お前と婚約破棄する。エミリーをいじめたつ……」
「反対に私が宣言しますわ、あなたとの婚約を破棄します。クリス様」
舞踏会で宣言するなんて趣味が悪いですわなんて思いながら、私は反対に宣言を返しました。
「な、なに」
「はい、私という婚約者がいながら不貞を働いた罪、それにより、私は婚約破棄をここに宣言します」
婚約破棄返しですわ。お前がエミリーをいじめたとクリス様が言い返されますが、いじめておりませんと私はピシャリと返しました。
「証言者の方々は私がエミリーさんをいじめておりませんといっておられます。クリス様に嘘の証言をするように言われたと」
「いやそんなことは」
「偽証するかわりの見返りが高い地位につけるとか、お金で買収とかやることが姑息ですのよ」
偽証は重罪だと脅しただけで彼らは尻尾をふってこちらにつきましたわよ。 私はエミリーさんににこりと笑いかけ、不義密通は死罪ですわと呟きます。
ひいと恐れるように身を引くエミリーさん、度胸が無さすぎますわ。
私はにこりと笑って、ここに婚約破棄を宣言しますと高らかに宣言、皆が拍手でむかえます。
ええ、もう皆に根回ししてますわよ。この時を待ってましたわ。舞踏会に婚約破棄をするとか密会でなにからなにまで言うとは間抜けすぎますわ。
私はクスクスと笑いながら不義密通は死罪ですけど、土下座して謝るなら許して差し上げてもいいですのよとクリス様の耳もとにささやきます。
「悪かっただから許してくれオーレリア」
本当に根性がない、こんなのを好きだったなんてねぇ、私はにこっと笑いながら、土下座して謝るクリス様に一人だけでしますの?と笑いかけます。
するとお前も謝れと、顔をあげてエミリーさんに怒鳴り付けます。いやと首をふるエミリーさん。
「私、不義密通などしてませんわオーレリア様」
「証拠はやまとありますのよ、中庭でよくあれは退屈な女だよ、君はそれと違いなんて優しい人だ、僕の太陽とかいちゃつかれてましたわよね? 先生たちもみてもらってましたわ」
私が言うと学院の先生方もうんうんと頷きます。確実に嘘だと言われない人たちに証言をお願いしましたのよ。
うなだれて申し訳ありませんとエミリーさんが土下座して命乞いをはじめ、クリス様と罪のなすりつけを始めましたわ。
「こいつが私を誘惑したんだ、私は悪くない」
「違います。クリス様が最初に言い寄ってきたんです」
似た者同士の口論をみながら、私は生命だけは助けてあげますわとクスクスと楽しげに笑いかけ彼らの罵りあいを楽しく見物したのでした。
生命は助けてあげましたわ、クリス様は廃嫡されて、エミリーさんは退学の上、男爵の家も終われ追放されて修道院行き。
私は魔法学院を卒業して、引く手あまたの縁談がありましたが、いまは阿呆な男に騙された経験から、堅実な道をめざしてます。魔法学院の教師なんていいですわねと思いながら図書館で本をめくるのでした。本ばかり読んで、退屈な女だよなんて言わない人を見つけたいものですわ。
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