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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編「アク」

作者: 頭の中までお花畑

 誰しも一度は思ったことがあるのではなかろうか。

人は必ずしも平等に生まれ出づるものではない、才に溢れたものを見ると嫉妬、尊敬、畏敬の念を抱くものである。

どうして自分には人に誇れる力が無いのだろうか、人が恐る力が無いのだろうか。


「私はどうしてもそれが欲しい。」


少女は嘆く、「力さえあれば、、、」

恐怖の対象は周りで蠢くいくつかの影、心の奥底で湧き上がる感情は徐々に水面に顔を出す。

表現の「怒り」という言葉では少し深さが足りない。

少女は呟く、「助けなんて、、、こんな奴ら消えればいいのに、、、」

口の中はすでに血の味がする、悔しさで唇を噛むと唇を少し切ってしまったのか血の味が増す。

少女は口にする「俺がこいつらを叩き潰してやる。」

少女の口元は歪む、少女に徐々に近づいていた影達は立ち止まる。

暗い部屋に低く小さな笑い声が聞こえてくる。

黒く長い髪が少女の口元以外を隠して、表情が読めない。

「おーい、何笑ってんだ、こいつ?」

「頭いかれちゃったんじゃ無いの?ちょうどいいじゃん」

「まあいいや、オラ、こっち来いよ」

暗がりでうずくまる少女の片腕を一人の男が掴もうと手を伸ばす。

一瞬にして、その男の腕は引きちぎられる。

男は叫ぶ、その時少女は少女ではなく、黒く装甲を纏った巨躯は男たちに恐怖を与える。

その大きな塊は呟く、「捻り潰してやる。」


その日、少女は欲しがっていたが望まれない力を引き当てた。


NO.1

 その日、日本中を震撼させたのは一つのニュース

女子中学生3人組が、ワゴンに乗った男4人によって誘拐されマンションの一室で暴行された事件。

それだけなら残念なことに、この御時世ではありきたり、大衆は「またか、、、」程度にしか思わない。

違ったのは被害者の一名を除いて、その一室の人間は皆殺害されていた。

のちにその被害者も自ら命を絶った、警察に事情聴取を受けている最中のことだったとニュースは伝える。

また、その一室で殺害されていた者は皆共通して何者かによって体の一部をちぎられていた。


まだ暑さの残る9月の初めに少女らの葬儀が各々で行われた。

参列するのは彼女たちと同じ学校の同級生や教師たち、親戚。

ある少女の葬儀の中にはスーツを着た警察官の参列者がいた。

その少女は事情聴取中に命を絶ったとされる一人である。

彼は少女の家族にあることを伝えに来たという。


「お父様、この度はお悔やみを申し上げます。」

その男は少女たちが行方不明になった時に自宅を訪ねてきた警官だった。

彼は重たそうに口を開き言葉を続ける。

「お父様、よろしければ少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか。

 できればお母様もご一緒に聞いていただきたいお話がございます。」

父親は突拍子もなく話しかけてきた警官に驚きと不快感を覚えながらも「わかりました」と答えた。


娘が警官と話している最中に自殺したと聞いた時、その信じられない話に憤怒した。

警察がまた不祥事を起こしたに違いない、必要以上に少女に問い詰めたに違いない、世間の声は警察に対し

冷たいもので全て少女の両親の耳に入ってきた。

最近の警察は不祥事ばかり、そして不信感を抱くような事件を起こしてばかりいる。

事情聴取や取り調べで不当に扱われたなんて話は頻繁に耳にする。

「そんな警察から今更話があるだと、、、」

父親は待ち合わせ場所に母親と共に車で向かいながら呟いた。

母親は静かに俯く。


待ち合わせ場所には先ほどの男がすでに到着し二人を待っていた。

警官は口を開く「お越しいただきありがとうございます。」

そういって喫茶店の奥のテーブルまで二人を案内した。

きっと難しい話をするのだろう、個室のテーブルへ案内され腰をかけると

3人は簡単に飲み物を注文し、飲み物が揃うと警官は話を始めた。

「こんな時に耳にされるのは大変苦しいかとは思いますが、どうしてもお伝えしないといけないことがあるのです。」

少女の両親は何を言い出すのだろうかと、やや淀んでいる真面目な警官の顔を見た。

「娘さんは何者かに殺されたのだと私は考えています。」

警官の言葉にまだ両親の理解は追いついていない。

警官は言葉を続ける。

「御息女にお話を伺う際に私はその場に同席しておりました。」

当時の少女の様子を伝える。

「御息女はひどく疲れた様子でした。瞳の中には光がなく、小さく何か呟いていました、、、」


NO.2

 真夏という事もあり、クーラーが効き始めるまではまだ暑い。

警察庁のある一室で少女から事件の話を聞くために急いで冷房を付けたが

少女含め警官達3人が部屋に揃った時はまだ暑さがしっとりと肌を伝う。

少女は憔悴した様子で静かに何かを言っている。

警官のうち一人は女性で、少女からゆっくりと話を聞くためには女性の方が話し易いだろうと配慮された。

女性警官は扉を閉めると部屋の隅で男性警官に目配せをして記録を取り始める合図をした。

「さて、何か飲み物はいらない?まだ部屋が暑くてごめんね。」

少女からの返事はない。

少女の反応を確認した後、一度考えると女性警官は続けて言う。

「ひとまず冷たいお茶を用意してもらおっか、よろしく。」

男性警官はうなずき、大きな音を立てないよう部屋を出た。

「ご家族とはお話できた?お兄さんがいたよね、お兄さんはモデルさんだってね、すごいね!」

女性警官は彼女の反応を得ようと傷つけないように慎重に話題を選ぶ。

「何か美味しいものは食べた?」「この間ね、買っている猫がすごく可愛かったんだよ。」

ゆっくり話しながら、時として携帯端末の画面を見せながら少女に話しかける。

男性警官が部屋に戻り、テーブルにそっと冷えたお茶とアイスコーヒーを置いた。

すると少女はぐるんと音が聞こえてきそうなくらい首を回し警官達の顔を見上げた。

少女の目は黒く濁り、口の両端からは血が出ている。

その様子は口が裂けるほど不気味な笑みを浮かべているかのようであった。

「な、何?、、、」「わ、わかりません。」

女性警官と男性警官は驚きから一歩身を引き、

恐怖を感じたと同時に鳥肌が立つのがわかった。

少女は二人の方向へ顔を向けながら言葉を発する。

「私が殺しちゃったの、ミユもアキも、、、だって止められなかったの。」

「こんな力いらない、いらなかったのに、ただでさえ殺すのは屑どもだけでよかったのに、、、」

「でもアイツが言うの、都合よくアキとミユだけ殺さないなんてできるかって、、、」

その時、少女の頭の中に当時の様子が浮かぶ。


暗い部屋のベッドに横たわる少女二人、彼女らに対して殺意を持って近づこうとしている自分の中の感情がわかると

「やめて!!彼女達は何も悪くない!手を出さないで!!!」

心の中で少女は叫ぶ、声帯を揺らすことのない声を必死に叫ぶが体は止まらない。

一人の体を持ち上げると胴体を半分にちぎった。その大きな刺々しい手には血塗れの少女の細い体が握られている。

その二つに割れた塊をその場に落とすと次の少女の頭に手を伸ばす。

「起きてアキ!!逃げて!!」変わり果てた体になった少女は心の中で祈るように泣き叫ぶ。

祈りが通じたのか頭を掴まれた少女は目を覚ました。

「、、な、何、何が!?何これ?助けて、助けてよ!!」

大きな手はもう片方の手で少女の腰を掴むと力を入れて胴体と頭を引っ張り始めた。

胴体から頭を引きちぎろうとしている。

姿を変えた少女は頭でそう理解すると大きな体を止めようと必死に心の中で自身の体の主導権を得ようと心の中でもがいている。

「や、やめて、やめて!!」

パッと少女の大きな手から大きな塊と小さな塊が落ちる。

必死に懇願する少女の声が途切れると彼女は瞬く間に二つに裂けた。

「止められなかった、やってしまった、、、」

少女は泣きながら止め処ない悲しみの海の中に伏せた。

目の前で、自らの手の中で友人を屠ってしまった。まだ手の中に感触が残っている。

「アキの体を私が、、、」少女はやっと体の主導権が自分に戻ってきたのが分かると自分の手を見る。

大きな手の間から転がっている『アキ』だったものが見えた。

さっきまで頭だったそれの表情には恐怖よりもひどいものを見た。

少女は抱えきれなくなった感情を吐き出すようにゆっくりと息を吸い込むと、声帯が破れてしまいそうな程に叫びをあげた。

どれほど叫んだのだろう。気が付くと叫び疲れ、その場に崩れて座っていた。

小さくなったその腕の中には友人のものだった頭を抱えていた。


締め切ったカーテンから朝日が差し込んできた頃にドアを叩く音が聞こえてきた。

「警察だ!ドアを開けろ!!」「突入する!!」

2種類の制服を着た警察が瞬く間に部屋を埋めていく、

少女の周りを囲むと少女の肩に大きな羽織をかけゆっくりと部屋の外へ連れ出される。

部屋を出る時にはその両腕で抱えたものを警察に回収された。

少女の耳には微かに聞こえてくる。

「どうなってるんだこれ、、、」「ひどいな、、、」「ウゥッ」

「誰がこんな酷いことを、、、」

最後の一言に少女は歯を食い閉めることで溢れてきそうな感情を押し止めた。


NO.3

 目の前に警察の制服を着た男女二人が見える。凄惨な景色からゆっくりと現在に意識が戻ってくる。

少女は涙を流しながら話を続ける。

「なんでよ、、、私達が何したって言うの!!」

「ねえ、なんで早く助けにきてくれなかったの!あんな奴ら、あんた達がちゃんと仕事してればこんなことにはっ!」

「こんなの私は欲しくなかったのよぉ!!」

少女はそう叫んだ後、突然動きが止まった。少女の目の焦点が合わない。

男性警官は女性警官の顔を一瞬見るとすぐに目線を少女に向け直した。

「どうなってるんですか?何か刺激するようなこと言いましたか?」

女性警官は頭の中で状況を整理すると

「いいえ、多分変なことは言っていないはず。どうなってるのかしら、、、誰か呼んで来て。

 あと念のためドクターも呼んで。」

男性警官は静かに一歩ずつドアに近づいていき後ろ手でドアノブに触れた時、少女は声を発する。

その声には少女の声とは思えない声が混じっている。

「お前の女供には汚ねぇオスの匂いがスルンダヨォ、、、普段から何してるかシラネェが奴らと変わらねェよォ。」

「どういうこと。」

女性警官は一言言うと得体の知れない何かが入った少女を睨む。

「てめぇらは随分と地に落ちたからなぁ、そろそろ世直しが必要ナンダヨォ。

 屑供ばかりが徘徊する世界にウンザリしている小娘に力をあげたんだヨゥ。

 欲望に囚われ自分のことしか考えてネェ奴らが国の中心にイルンダロゥ。

 オメェらも倫理観なんてものを失っちまった奴らばかりが裁かれない世界なんてイヤだろう。」

男性警官は「お前は何者だ」と立ち止まったその足に力を入れながら声を出す。

「お前達の正義感ダヨ、これから一人残らず屑供を潰してやる。オレに力を貸さないかア?」

警官の二人は何者かに乗っ取られた少女の言葉に畏れを感じながらゆっくりと体を正面に向けないように態勢を整える。

拳銃の携帯は署内では許可されていないが、この状況下では拳銃が手元にあることが望ましいと本能から告げられる。

女性警官は睨みつけながら少女に向けて警告する。

「今すぐ椅子に座りなさい、彼女に何をしたか、何者か話を聞かせてもらうわ。」

少女の口から言葉が発せられる。

「ヒヒ、やる気だねェ。お前みたいな奴がオレを使ってくれるとタスカルケドネェ。

 このチビは体は良くてももう頭がダメだからなぁ。切り替えないとナぁ。

 ソウイウことだから新しい奴を探しに行くよ、バイバイ。」

少女の中のモノがそう言うと、少女の体はその場に崩れた。


徐々に呼吸が浅くなっている。

駆け寄った女性警官は急いで少女の心音を確かめ、助け呼ぶ。少女の心音はどんどん薄くついには聞こえなくなる。

救急搬送された少女は院内で死亡が確認された。

事情聴取のため同室にいた男女二人の警官から当時の状況の聞き取りが行われた。

記録のためレコーダーを回していたこともあり、聞き取り自体はすぐに終わった。

ただそこに残るのは不可解な事実、あれは何者だったのか、何が少女の体に起っていたのかである。


NO.4

 当時の状況を少女の両親に説明すると続けて、男性警官は決心をしたように言う。

「あの時、一緒にいた私の同僚も今日付で警官を辞めるつもりです。

 当時の状況を警察はお二人にお伝えせず、世間からも隠しています。

 御息女の件を詳しく調べるには警官を辞めることでしかできないとも言われましたから。」

男性警官はこう続ける、

「私たちは御息女の命を奪ったモノの正体を掴むまで諦めません。ただそれだけを伝えたいとずっと考えておりました。」

理解の追いつかない少女の父親は飲み込めない事実をつげられたあとやっとの思いで口を開いた。

「何を言っているのかわかりませんが、、、今は私たちに時間をもらえないですか。

 頭の中が整理できるまで、その時が来たらまたご連絡を差し上げます。」

男性警官はそうですかと言うとではと連絡先を残し深く頭を下げその場を去った。

父親は大きくため息をしたと、しばらくの間俯きテーブルの下で組まれている自分の両手を見つめる。


その父親の隣で母親は歪んだ笑みを浮かべて言う。

「できるモノならな。」


No.5

人々の道徳観や倫理観が試された2020年から早くも13年が経った。


強靭な肉体を持った人間が複数現れては人智を超えた力で世界を掌握していく。

2021年、一体の黒い鎧を纏ったモノが日本の有力者達を次々と屠り、翌年には彼を頭領として一つの組織を作った。

彼の作った法により日本国民の多くが処刑されたことによって日本の人口は3分の2にまで減った。

これに似たような動きは世界各地で見られた。

各国の新しい組織は協力関係を結び、世界はかつてないほどに平和を取り持つ。

2033年、世界は次なる世代を迎える準備を始める。








読むのしんどい文章力なのに面白みはそんなにない。

そんなモノですが、読まれた方は是非感想をご教示ください。

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