喫茶こもれび
前回のあらすじ:喫茶店に移動しました。
喫茶こもれびにたどり着いた。外壁を這うツタが特徴的だ。扉を開けると中はログハウス風で、なにやら甘い香りが漂っている。木製のテーブルや椅子をオレンジ系の照明が優しく照らしている。下調べと違わぬいい雰囲気だ。
「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」
かわいい店員のお姉さんだ。えへへ二名様ですぅ。虹村くんとだと二名という言葉の響きだけでとてもいい気分になる。
「はい、二名です」
あまったるい陶酔感は出さず、普通に答えた。つもりだ。
「こちらへどうぞ」
と席まで案内される。壁際の二人席だ。私と虹村くんが腰をかけると、店員のお姉さんは注文が決まったら呼ぶよう言い残し席を離れていった。
そろそろランチにちょうど良い時間だが、三分の一程度しか席は埋まっていない。ゆっくりはできそうだけど土曜日でこれだとちょっと不安になる。雰囲気はいいから余計に。
「先選んでいいよ」
虹村くんがひとつしかないメニューを譲ってくれる。優しい。しかし、私は
「一緒に見ない?」
とメニューを横向きに広げて提案する。こうすればお互い特に不便なく選べるだろうという判断だ。
「ありがとう」
こうしてふたりでメニューを共有することになった。
しかし、ここで予期していなかったあることに気がつく。私も虹村くんも少し身を前に乗り出して体をねじっている状態なんだけど虹村くんの横顔が近い。
そのことに気がついてちらっと虹村くんの方に目線をやると直後に虹村くんもこちらに目線をくれ、目が合った。お互い気まずくなったのかあわてて視線をそらし、姿勢を元に戻す。ドキドキが止まらなくて自分が固まってしまっているのがわかる。
数秒の間があって、虹村くんが何事もなかったかのように再びメニューを選び出した。ここでためらうと逆に変な雰囲気になる気がしたので、私も続くことにする。
やってみると案外……なんてことはなくて終始心臓があばらを打つ感覚があるなかでメニューを選んだ。ないとは思うけどいちおうということで下着もかわいいものを選んできたけれど、この分だとハードルはかなり高そうだ。
お互い注文するものが決まったようなので店員さんを呼び、ほうれん草とキノコのスパゲッティとアールグレイを注文した。虹村くんはクラブハウスサンドとアメリカンコーヒーにしたようだ。
ここからはお待ちかねのフリートークの時間。緊張するけどお互い楽しい時間になるといいな。