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ゆうかアプローチ  作者: 旭流遊
アプローチ3:○○○○
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密会?

前回のあらすじ:午後から用事があるらしい虹村くんが怪しいので尾行することにしました。

 ……結構遠いところに来てしまった。

 虹村くんのようすを見るに、この春野原が最終目的地の手らしい。スマホ片手に立ち止まってキョロキョロし始めたから見つからないように気をつけよう。

 春野原ってすごいオタクの街ってイメージがあるから、虹村くんの来る場所としては特に不思議には思わない。たしか何度か来たことがあると言っていたような気もする。アニメとかにも時々出てくるけど実際に来るのは初めてだなぁ。改札前の広告?っぽいのはたしかに雰囲気を感じさせるけど、虹村くんのいる広場とか周りの景色はそれほどオタク感満載ではない。

 誰かと待ち合わせをしているのだろうか。あの雰囲気はそんな感じがする。今日は見た目を気にしているみたいだったし、やっぱり人と会うのか。


 おっと、誰か来たみたい。女の人かな?ここからじゃあまりよく見えないけど美人そう……。身長は虹村くんよりちょっと高い。女性にしてはわりと高いほうになるのかな?ここから見るとかなりスレンダーに見える。胸も小さくはないけど私のほうが大きいかも。そして、あの髪。ポニーテールなのに肩甲骨にかからんばかりの長さ。お手入れたいへんそうだけど、遠目にはすごくきれいに見える。服もかっこいいちょっと大人な感じ。それでいてキャップがよく似合う。

 っと最初はお互い右腕を前にだして重ねて……なんかすごいいい雰囲気だなぁ。お決まりの挨拶みたいなものかな?……って、ええっ?!ちょ、待っ……。ええっ?!!だ、だ、抱き合ってるよ……。抱き合っちゃってるよ、あの二人!えっ、待って、ちょ……。なんか虹村くんのほうも抱きつくアクションしてたし……。なに?まんざらでもない感じなの?って言うか挨拶だよね……?にしてはハードか……。お、お、欧米か?欧米なのかっ?でも、あの黒髪。欧米って感じじゃなさそうだし。か、彼女さんなのかな……?そんなはずないと思うんだけど……。ってか長くないっ?まだ抱き合ってるよ、あのお二人さん。何か噛みしめるように熱く抱擁してるよ!何日か前、私も虹村くんに抱きしめてもらったけど、なんかそういう慰めみたいなあれじゃなくて、気持ちが通じあっているような感じがする。

 アニメのヒロインとかならこういう場面に出くわしたとき、なぜか男の子に怒りを覚えるみたいだけどとてもそんな気にはなれないよね。なんというか無情だ。そして悲しい。彼女って決まったわけじゃないけど、ただならぬ関係なんだろうなと思ってしまうよね。……はぁ。三次元の女の子に興味がないなんて言いつつも女の子を囲ってしまう体質なんだろうか?いや、違うな。虹村くんの今までの言動から考えると彼女という線はすごく違和感を覚える。じゃあ一体……。

「はぁ、やっぱり君か。優華……」

えっとこの声は……虹村くん?!

「えっ、ひゃっ、ひゃ、ひゃいっ!」

ま、ま、待って。えっ?バレた?!さっきのお姉さんも一緒だ。

「シブキさんが、僕と同じ制服っぽい女の子がこっち見てるって言うからついてきてみれば……」

「あたしは女の子じゃなくて美少女って言ったはずだけど?にしても近くで見ると本当にかわいいね。この子が例の?」

「まあ、そっすね。たぶん」

「えっと、えっと。ごめんなさい。私、ついてきちゃって」

「ヒロくん、マジで美少女に惚れられてるんじゃん。妄想の類いのそれじゃなくて安心したよ。はぁ、私もこんなかわいい子につけ回されたい……」

「妄想だったら苦労……いや、違うな。苦心しないっすよ。それにアンタ彼氏いるでしょ」

「言っちゃう?それ言っちゃう?……あっこの子の誤解を早く解きたいんだ?そうなんだ?」

「ちっ、違いますよ」

「じゃあ問題ないね。彼氏を複数作るのはよろしくないけど彼女を一人追加するぶんにはお咎めもないはず。この子も君を彼氏にしつつ、アタシを彼女にできるってわけだ」

 目の前でなにごともなかったかのように話が展開されていく。

「僕は彼氏になんてなりませんからね」

「じゃあ夫?」

「ちげーよ」

「まあ、冗談はさておき。自己紹介がまだだったね。アタシは……」

 虹村くんがお姉さんの口元にバッと手を伸ばして制止する。

「なんかロクなこと言わなさそうだから代わりに僕が紹介するよ。この人はシブキさん。ネット上の知り合いでお絵描きをする人。今度の同人誌即売会で僕の描いたマンガを置いてくれる人なんだ」

「ま、そんな感じだね。シブキです、よろしくね、えっと……優華ちゃん?」

「あ、はい、よろしくお願いします。私は……」

 あれ?よくよく考えたら紹介することなくない?なんか私のこと知ってる風だったし。

「私のことよくご存知なんですね」

「そりゃもうね。ヒロくんめっちゃ変わったし、毎日話題に尽きないよ」

「ヒロくん、私のこと話題にしてくれてるんですか?」

 ネットの知り合いだそうだから呼び方を合わせてみた。

「ラノベ主人公になってしまった、だとか、鈍感系じゃなくてやれやれだぜとか」

「ニュアンスは違うけど概ね間違ってないから何も言い返せない」

「それにさっきもいつもの挨拶なのになんか意識しちゃってたしね。この前まで本当に二次元にしか興味ないからアタシとハグしても仲間意識以外の何もなさそうだったのに一丁前に欲情するようになってしまって……」

 虹村くんは何も言い返さない。図星なんだろうか。

「ってことはさっきのハグは単なる挨拶なんですか?」

「そだよ。我が同志であることをああやって確認するんだ。ちなみに彼氏公認の挨拶だから浮気じゃないよ」

「なるほど……」

 つまり、こういうことか。今日は同人誌即売会関連でお世話になるシブキさんに会うから身だしなみを整えていて、通例通りの挨拶で抱き合っていたと。

「未だにこの人に同志として認められてるのが不思議でならないけどね。僕と違ってめちゃくちゃ上手いし、かわいい絵を描くし、それに見合う人気も兼ね備えてる」

「いやぁ、ヒロくん普段そんなこと全く言わないから、あーそういう印象なんだって感じだね。まあSNSでさらけ出してる性癖がすごく気に入ってね。それに絵に関しても荒削りだけど筋がいいからこれからに期待できる子なんだよ。あ、そういえば最近変態発言しなくなってない?」

「お褒めに預かって光栄だけど、僕があーしたい、こーしたいって言ったらアンタがじゃあやればいいじゃんって返してくるようになったんでしょうが」

「ちぇっアタシのせいかよー。寂しいから前みたいにどんどん性癖をさらけ出してくれよー。あっ、優華ちゃんアカウント知ってる?」

「知らないです。でも……うーん、なんかせっかくそうやって羽を伸ばして言いたいこと吐き出せる場所があるのに、私に見られてるって思ったら絶対遠慮しちゃうだろうし。だから私はいいかなって思います」

「優しいっ。今の聞いた?めっちゃ想われてんじゃん、ヒロくん。顔よし、スタイルよし、性格よし。リアクションもかわいげがあるし超いい子じゃん」

「まっまあ、シブキさん。褒めてもらってすごく嬉しいんですけど、別に私も無理して付き合ってほしいわけじゃないので」

 ちょっと答えづらいかなって思ったから私の方から止めることにした。

「そう、まあたしかにアタシがでしゃばる話じゃないね。そうだ、ちょっと頼みたいことがあるんだけどいいかな?」

「えっなんですか?」

 内容によるとしか。

「ウチで売り子さんやってみない?」

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