今回のアプローチを振り返って
前回のあらすじ:下着選び終わりました。
ふぅ……。一日の終わりにこうしてベッドに横たわったときの解放感はまさに至福だね。重力に身をまかせて仰向けに寝転んでいると体から何かが溶け出していくような心地よさがある。特にどっと疲れた今日は癒しも大きい。
なんだかんだ下着を買い揃えることができたから当面は心配いらないだろう。まあ、ここまで買い揃えられたのもパパのくれたお小遣いのおかげだからお礼に今度マッサージでもして日々の疲れを癒してあげるとしよう。
にしても、本当にいろいろあった。強引に誘い出すところまでは作戦通りだったけれど、不意に手を握った時から調子が狂った感じがする。そっか。握ったんだよね。思い返すとなんだか感触が思い出される。意外としっかりしてる男の子の手って感じ。その感覚は不思議なことに実際に触れていたときよりも鮮明な気がする。思い出すだけで胸の高鳴りを感じるし、すぐに手を離したことが少しもったいなくも思えてくる。ただ、あのまま繋ぐということも精神的にできなかったことだと思うから、たぶん仕方がないことだったんだろう。虹村くんから手を繋いでくれたのも、そのときは嫌だったけど行為としては今思えばちょっとうれしい。なんだか複雑な気分だ。絶食系なイメージが強かったけど、思いの外強引なところもあるっていうのが新鮮な発見だ。もちろん相手は選ぶけど、強引なアプローチはたしかに胸にキュンとくるものがあるように思える。強引に迫られるのを想像すると身悶えしてしまいそうだ。
こういうときの抱き枕の便利さよ。普段はインテリアとしてかわいさを放ちつつも、身悶えするようなときにお手頃に抱きしめられるこの感じ。あーふかふかで気持ちいい……。生き物じゃないから思い切りぎゅっとできるのもすばらしい。オタクの人はこういうぬいぐるみみたいなのじゃなくて、二次元美少女がプリントされたカバーをかけた抱き枕を持ってることもあるらしいけど虹村くんはどうなんだろう?
そういえば、今日は虹村くんに抱きしめてもらったんだった。あー、あれもよかったなぁ。腕のなかに包み込まれる感覚は温かくて心地よかった。女友達とはたまに抱き合ったりもするけれど、男の子に抱きしめられるのは感触からして違う。こと意中の相手とあっては高揚感が格別だ。背中に、胸に、残る感覚が忘れられない。また抱きしめてほしい。そうだな、今度は虹村くんが私を好きになってくれたときがいいかな。それまでは今日の思い出を胸に、恋しくなったときは何度でも頭の中で再生してやり過ごすことにしよう。
下着選びに付き合ってもらうというのは今思えばかなり強引で無理のあったことのように感じるけれど、結果だけ見れば最初の意図通り?なかなか悪くない。虹村くんの好みのものを揃えることができたし、勝負ものに関してもひとつは虹村くんの太鼓判つきだ。まだまだお披露目の機会はないだろうけど、節目節目で背中を押してくれるに違いない。
虹村くんにとっても悪くはなかったと思う。たぶん。最初こそ敬遠していたものの、実際に下着を見始めてからは真剣な眼差しを向けて集中していた。あの拒否具合から見て、私が連れ出さなければきっと一生縁のない場所だっただろう。それが実際役に立つのかというのはわからないけれど、潜在的に求めていた体験だったんじゃないかなと思う。きっとそうだよ、うん。
まあ、そうでないとちょっと夏休みのプランが危ういから強引にでも虹村くんのタメになったということにしておくけど、他のイベントはたぶんハードル低いし大丈夫なはず。ラブコメイベントを実体験する勉強という形で誘えば乗ってくれそうだというのがわかったのは今日の収穫かな。ランジェリーショップにすら行けちゃうんだから正直他は確実に誘えそう。形式的にはイラストのための見学だけど、実質ラブコメイベントそのものだし楽しみだなぁ。
映画、夏祭り、海、同人誌即売会にお泊まりイベント……。ふひっ。ふひひっ。やばい、楽しみすぎて一人なのに思わずニヤニヤしちゃってる……。いや、一人でよかったのか。こんな顔見られたらちょっとはずかしいかも。
このまま悶絶し続けるのもアリだけど、表情筋が疲れてきちゃいそうだからちょっと真面目なことを考えてみよう。今日修正した方針の確認だけ。寝る前にやっておきたいしね。好き好きアピールは自重。これまでは武器として積極的に使ってきたけど、虹村くんが私に申し訳なく感じてしまうらしいから控えたほうがいいと思う。ただ、どうしても漏れてしまったときは謝らない。他の行動で何か思い切ってしまったとしても、許してもらえたらそれ以上は気にしない。気にしないっていうのは難しいかもしれないけど、要はいいよと言われたら切り替えるってことだね。
この二つだけ肝に銘じておいて夏休みライフエンジョイするぞ。えへへ。そろそろ寝るかな。




