アディショナルタイム
前回のあらすじ:デートの約束を取り付け、連絡先も手に入れました。
十二時五十分、思いの外トントン拍子でノルマを達成したおかげでまだあと10分くらい話せそう。
「虹村くんはテレビって何見るの?」
あまり見そうな感じじゃないけど定番の質問をしてみる。
「深夜アニメを見るくらいかな」
「へえ、深夜にアニメってやってるんだ」
深夜っていうとなんかちょっとえっちな感じなのかな?
「うん。たまに主題歌がCDの売り上げランキングに入ったりするよ」
「あーなるほど。たまに音楽番組でアニメの映像みたいなのが流れてる時があるね」
「ただそれでもテレビで見ることは少なくて、ネットの配信サービスで済ませることが多いかな。録画しなくてもいいから楽なんだよね」
「月額何百円かでアニメ見放題、みたいなやつ?」
CMで見たことがある気がする。
「たぶんそれだと思う」
「月額それくらいなら見てみようかな。何かおすすめとかある?」
ここまで私が話に乗ってくるとは思わなかったのか、虹村くんは少し驚いた様子だ。
「ちょっと考えるから待って」
虹村くんはうつむいて考え始めた。その表情は真剣そのものだ。
「無理に私に合いそうなのを考えなくていいよ。虹村くんの好きなやつを教えてくれたほうがうれしいかな。見ても話す相手虹村くんくらいしかいないし」
ちらちらとこちらを見てくる虹村くんを見ていたら女の子向けのアニメとか紹介されそうな気がしたからひとこと断っておく。
「なるほど。じゃあこれかな」
虹村くんはスマホを手にとって少し操作したのち、私に画面を見せてきた。
「すくーるらいふ!……」
タイトルを読み上げる。制服を着た男女のアニメキャラが描かれている。女の子が多めかな。
「そう、すくーるらいふ!。ぼくが好きってのはもちろんだけど、人気作だからとっつきやすいと思うよ。逆にこれを楽しめないなら趣味はあまり合わないかも」
「むぅ、なるほど……。とりあえず見てみることにするね。ありがとう」
楽しめないと趣味が合わないって少しプレッシャーだなぁ。どうか楽しめますように。
「あ、そろそろ授業の時間だ。趣味の話なんてすることないから楽しかったよ」
もう時間か。本当にあっという間だったな。でも楽しいって言ってもらえた。すごくうれしい。
「うん。私も楽しかったよ。いろいろ教えてくれてありがとうね」
食べ終わったお弁当を片付けて自分の席に戻る。楽しいひとときの終わりに淋しさを感じる。
次の授業の準備を済ませ一息つくと、どっと力が抜けるのを感じる。話しているときは気づかなかったけど、今思い返せばずっとドキドキしていた気がする。そして、そのことに気づいたせいかさらに強く鼓動し始めるのを感じる。この感じ、すごく癖になりそうだ。