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ゆうかアプローチ  作者: 旭流遊
アプローチ1:二人きりの空間
29/43

今回のアプローチを振り返って

前回のあらすじ:ファーストネームで呼び合うようになったり、かわいいと言ってもらったり、お弁当が好評だったり。

 あれから今日で一週間か。今日からはようやく仮入部が終わって正式に漫画イラスト部の部員になるわけだ。短いようですごく濃密な時間だった気がする。

 昨日からようやく自分で考えてイラストを描くというのを少しばかり始めてみたけど、わりとそれ自体楽しそうだ。一週間前は虹村くんと一緒に過ごす時間のおまけみたいな感覚でいたけど案外ハマっている自分がいる。目的以外のところでも楽しめるっていうのはすごくラッキーだ。虹村くんに会いたいがために嫌なことを我慢する必要もないからね。

 恋愛的にもかなり進展した気がする。ファーストネームで呼び合うようになったし、会話もお互い遠慮がなくなってきている。お弁当はおいしいと言ってもらえたし、かわいいとも言ってもらえた。まあ、私自身なにか理由があって虹村くんを好きになった訳じゃないからそれがそのまま恋愛につながるとは思っていないけれど、きっと悪いことじゃないと思う。

 トラベるの内容的にソフトな感じの色仕掛けはたぶん虹村くんのシュミに合っている気がしないでもないんだけど、最近は慣れられて上手くかわされつつあるように感じる。まあ、こちらとしてもあくまで手段のひとつにすぎないと考えているし、毒牙にかけられなければ生きていけないほどの性欲おばけではない。はじめての恋で興味が増したことは否定しないけれど、普通に付き合って流れでっていうのが理想的だと思う。メリハリがないと飽きられてしまうし、しばらくは控えることにしよう。あ、でもスクールベストは暑いから脱ぐ。そのへんもう虹村くんのなかでもそんなに気になってないだろうしノーカンだよね。

 総合的に見て漫画イラスト部に入るという今回のアプローチは成功したと言っていいだろう。ちょっとしたアクシデントはあったものの、おおむね悪くない感じに落ち着いている。定期的に会える環境を整えられたのは非常に大きい。しかも、二人だけしかいないから驚くほど都合がいい。活動内容も楽しめているし、居心地が良いしで完璧な采配だったと言える。

 夏休みまで残り一週間とちょっと。海の日のあとのあのちょっとの部分は毎度よくわからないけど、ざっくりあと十日程度。この間としてはさっきのメリハリ理論からしても控えめを心がけ、別のところに注力すべきだろう。夏休みに考えているいくつかのプランを(おもに金銭的に)固めたり、アニメをいくつか見て話題の幅を広げたりといったところかな。それに夏休みに入ると虹村くん以外はあまり会わなくなるからたくさん話しておきたいかも。あとは宿題。夏休みを楽しむ上で障害になってくるであろうそれも現時点でいくつかわかっている。早めに終わらせて損はないだろうから取り組み始めるのもいいだろう。

 ……あれ?もしかして案外忙しい?まあ、それでも運動部とかよりは全然だろうし、毎日部室で英気を養えるからなんとかなりそう。待っててね虹村くん、そして夏休み。私は今週を乗りきって夏を、恋愛を制する!

「失礼します。今日から正式に入部することになりました、堂島優華です。よろしくね、部長」

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