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ゆうかアプローチ  作者: 旭流遊
アプローチ1:二人きりの空間
21/43

突入作戦

前回のあらすじ:初デートを振り返りました。

 ついにやってきた月曜日。私の一日にわたる考察とひとり作戦会議の成果を見せるとき。まあ、溜まってたドラマとか消化しながらだけどね。

 さて、教室に着いた。

「おはよう」

目があった友達と挨拶を交わしながら自分の席のほうへ進む。やはり、虹村くんは来ている。いつも通り私より早い。いつもなら特に何もしないところだけれど今日は違う。

「虹村くん、おはよう」

「あ、おはよう」

よしできた。いや、難易度は限りなく低いけど、こういう単純なやりとりの積み重ねがのちのち効いてくるはず。まあ、今日は普通に友達と話すんだけどね。理沙以外の友達と話すのはすごく久々な気がする。恋愛も交友関係もきっちり両立したいしね。


 さて、今日のメインイベント。放課後の掃除が終わることをどれだけ待ったことか。冷静に考えると一日経ってないな。それはともかく、時は来たのだ。私は掃除があって遅くなったけど、ターゲットは今週当番じゃないからきっと中にいるはずだ。

「たのもーっ!」

勢いよく扉を開ける。ターゲット、もとい虹村くんの体がビクッと跳ねる。

「うわっ、びっくりした。堂島さんか。どうしたの?」

こちらに顔を向けた虹村くんの表情は驚きと不安が混じっているように見える。さすがにノンアポはまずかったかな?

「漫画イラスト部の見学に来ました」

思惑通りというか事前の情報通りというか、やはり中には虹村くん以外誰もいない。本当にひとりで活動しているようだ。

「さて、まずはどんな絵を描いてるか拝見しようかな?」

ちょっと図々しい感じはするけど、こうでもしなければノンアポで来た意味がない。虹村くんの左側から歩み寄っていく。

「あ、そうなの。ちょっと待っててね」

声を震わせながらパソコンを操作しようとする虹村くん。その動きは想定済みだよ。

「動くな!手を挙げろ!」

手をピストルの形にして虹村くんに向ける。虹村くんは渋々ながらも両手をあげた。不審な動きは見逃さない。あと二歩。あと一歩。

「へぇ。こういうのが好きなんだぁ」

虹村くんの後ろからパソコンを覗きこみ、耳元でささやく。画面には胸チラしてたり、胸の部分だけ服が破けていたり、恥ずかしそうに胸を隠していたり、片方の胸を揉まれながらもう片方の乳首を舐められていたり、胸でおちんちんを挟んでいたりといったような女の子のイラストが描かれていた。

「なるほどね。おっぱい、すきなの?」

軽く触れる程度に胸を当ててみる。D寄りのCだからわりとあると思う。イラストの中には大小様々な大きさの子がいるけど、この揉まれながら舐められてる子なんかは私と同じくらいに見える。

「いやあ、半年に一回くらい描きたくなるんだよね」

「あらそう」

半年に一回なわけはない。顔と胸の位置をキープしながらマウスに手をかける。虹村くんは固まっていて動かない。純粋に虹村くんの好みを知りたくてこんな行動に出たわけだけど、攻め手に回っているとなんだか楽しくなってきた。

 画面に写っているイラストと同じディレクトリを開いてみると、パッと見でわかるレベルで肌色だった。

「虹村くん、年齢詐称疑惑。この数だとおじさんか、ともすればおじいちゃんかもね」

虹村くんは反応しない。やりすぎたか。ここがやめ時かな。

「さて、虹村くんの趣味を探ろうの会はこの辺にしておいて。今日は急に来ちゃってごめんね」

作戦のためとはいえ、アポなしで突入したことを詫びる。

「本当だよ。心臓が止まるかと思った」

「でも、これでちょっとは遠慮もなくなったかな?」

「いや、堂島さんはもうちょっと遠慮してよ」

「本当ごめんね。予め言ってたらすごいよそよそしい感じのものを用意されるかなって思ってさ。それに私が入部してもいつまでも隠し続けたままじゃ窮屈でしょ?」

「え?!入部するの?」

「ちゃんと漫画イラスト部の見学に来たって言ったはずだけど」

「建前かなって思ってた」

「ちゃんと入部を前提に見学しに来てるよ。漫画イラスト部って聞いて漫画ばかりに気をとられていたけど、やっぱり普通のイラストも結構描くものなんだね。あ、普通っていうのは漫画じゃなくてイラスト単体って意味ね」

「中身が普通じゃなくて悪かったね」

「悪いなんてまさか。男の子っぽくて安心したよ」

「からかってるでしょ」

「半分ね」

虹村くんが不意をつかれたような表情をしている。もう半分を察しているのだろう。ここで少し畳み掛けるか。

「んしょ。んーっ」

スクールベストを脱ぐ。

「え、ちょ」

いい反応だ。

「いやぁ、教室とかだとワイシャツが透けちゃうと嫌だからスクールベスト着けてるんだけど暑くてね」

「いや、今も……透け」

知ってる。もちろんわざとだ。暑かったから汗でワイシャツが濡れてるし、今日はわざわざキャミソールを内側に着ないで来ている。

「さっきも言ったよね?スクールベストは見られたら嫌だからつけるものなんだよ?」

つまり、見られてもかまわないからつけないのだ。

 本当はここでやめるつもりだったけど、なんだか首元も暑苦しく感じてきた。虹村くん以外誰もいないし、いいかな。リボンを外し、ボタンを二つほど開ける。むわっとした空気がシャツの中からこみ上げてくる。仕上げにシャツの裾をスカートから出す。空気の通りがよくなって涼しい。

 虹村くんはというと、目を逸らしながらもチラチラとこちらを見ている。かわいい。それに、私の体に興味を持ってくれてるようで、はずかしいけど嬉しいな。

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