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ゆうかアプローチ  作者: 旭流遊
序章(アプローチ0):初デート
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はじめての雑談

前回のあらすじ:なんだか気になる普通の男子・虹村くんに昼休みに話しかけることにしました。

 ようやくチャイムが鳴った。たったの五分だったのにずいぶんと長く待ち焦がれた気がする。その間はすごく緊張して心臓の鼓動を感じるほどドキドキしながら、少しずつ動く分針に焦れったさを感じながら昼休みの到来を待っていたのだった。そして今、お弁当を手にとって勝負に出る。

「一緒にお昼いいかな?」

ほとんど話しかけたことがないからか驚いた様子の虹村くん。

「え、あ、ああ、いいよ」

しばらく言葉を発していないような乾いた声だけどOKがもらえた。嬉しい。

「ありがとう。じゃあ、ここ失礼するね」

お弁当を持って虹村くんの前の席に移動し、向かい合う形で座る。近い。普段友達となら男女関係なく特に意識することはないんだけど、相手が虹村くんとなると膝を突き合わせて座るこの距離感が異様に近いように思えてしまう。虹村くんも落ち着かない様子だ。

「ほとんど話したことないからちょっと緊張するね」

お弁当の包みを開きながら無難に切り出す。

「そうだね。でも急にどうして?」

まあ、そうだよね。当然の疑問だと思う。えっと、答えはどうしよう。早くなにか答えないと……

「ちょっと虹村くんに興味があってさ」

思わず口が滑ってしまった。虹村くんはたじろいだ様子だ。

「へ、へぇ……」

どんどん変な雰囲気になっていっている気がする。ここで沈黙に入ると気まずい。開き直ってこの方向でいくしかない。

「そう、あんまり話したことないからどういう人なのかなって思ってね」

「ああ、なるほど」

覚悟を決めたわりにはうまく軌道修正する方向に向いた気がする。

「虹村くんは週末にどこかに出かけたりするの?」

「週末は学校の課題とか予習復習して過ごすかな」

「おお、休みの日まで勉強しようなんてすごいね!私なんて試験前以外週末に勉強なんてしないなあ」

「まあ、そのかわり平日は好きなことしかしないしね」

お、いい流れだ。うまく乗っていきたいところ。

「部活とか?何部だっけ?」

「漫画イラスト部」

漫画イラスト部、最近なにか話題になったような気がするけどなんだっけ……?

「漫画描いたりするの?」

「下手の横好きって感じかな」

「見せてもらってもいい?」

「ちょっとはずかしいからごめん」

やんわりお断りされた。

「こっちもごめんね。じゃあ読む方は?」

「ステップは毎週読んでるかな。あとはちらほら気になったのを読んでって感じで」

「ステップってあのザ・トレジャーが載ってるやつ?」

「そうそう。堂島さんはステップにはあまり詳しくなさそうだね」

「うん。というか漫画自体最近はあまり読んでないかも……あ、そうだ!」

突如いいことを思いついた。やっぱり私今日は冴えてるかもしれない。

「そろそろ夏休みだし漫画を読みたいなあって思ったから選ぶの手伝ってくれないかな?平日は忙しいみたいだし今度の土日のどっちかで。ほら、テストも終わったみたいだし」

「たしかに。テストも終わったからいいよ。土曜日に行けば日曜日に漫画読んで過ごせるから土曜日がいいかもね」

よし、自然な流れでデートに誘えた!しかもこれだけじゃない。

「ありがとう。時間とか場所とかいろいろ連絡するのに便利だからRINE交換しない?」

そう言いながらカバンからスマホを取り出してみせる。

「ああ、うん。わかった」

虹村くんもズボンのポケットからスマホを取り出す。うまくいった。連絡先の交換なんてこれまでなんてことなくやってきたことだけど、こんなにうれしいものなんだとはじめて実感した気がする。これが恋なのかはわからないけれど、あたりまえのことにびっくりするくらい緊張したりうれしくなってしまうような今は、悪くないと思えるような絶妙な心地よさを感じる。

「堂島さん、準備できたよ」

「おっけー。じゃあ交換しよっか」

小さな一歩だけれど、私にとってはきっと大きな躍進だ。

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