告白
前回のあらすじ:虹村くんは私に友達になってほしかったようです。
「私は虹村くんのことが好きです。虹村くんと付き合いたくて話しかけました」
すごくドキドキしたけれど、虹村くんの目を見てはっきりと言えた。虹村くんは少し驚いたように顔を赤くしたけれど、すぐに哀しみをおびた表情になった。
「光栄だよ。本当に僕にはもったいない。でも、ごめんなさい。堂島さんの気持ちには応えられない」
「知ってる。さっき話してくれたから」
知ってはいるけどそれはつらくないってわけじゃない。目から涙が溢れて頬を伝うのがわかった。
「正直なところ、私にも理由はわからないんだ。いつの間にか目で追っていて、それに気がついてから意識するようになった。私の初恋だよ?」
「僕も、初めて誰かに好きって言ってもらった」
虹村くんがむずかゆそうにしている。付き合うつもりがないとはいえ、この感覚はなかなか心臓に悪い。
「はじめは、夏休みの間このモヤモヤを抱えたまま過ごすのが嫌で、何か行動を起こしてあわよくば連絡先がほしいなくらいの感覚だった。趣味の話をしたのは知ってても知らなくても話すきっかけになると思ったからなんだ。実際、作戦は予想以上に上手くいって連絡先を手に入れるだけじゃなくてデートの約束まで取りつけることができた。そのあとアニメの話題になって、紹介されたすくーるらいふ!が楽しめないと趣味が合わないかもと言われた。怖かった。趣味が合わなかったらどうしようって思ってた。でも、見てみたら面白かった。夢中になった。なんだか気が合っているようでうれしかったし、安心した。昼食に誘ったのは少しでも一緒に居たかったっていうのもあるけど、一緒に語りたいと思ったからなんだ。結果は散々だったけど……」
虹村くんに気負わせないよう、がんばって笑顔を向ける。
「変に気合い入れても引かれるかなと思って、服はかわいいけどそんなに気合いが溢れてない感じのものを選んだんだ。会ってすぐに褒めてもらえてうれしかった。まあ、裏目に出ちゃったみたいだけどね」
異性アピールしないアピールだと思われたんだよね。重くならないように舌を出して見せた。
「こんなこと言ったら不快に思うかもしれないけど、私、愛佳ちゃんと結構似てると思ってたんだ。だから、自分のことのようでかわいいと思えなかった。でも、虹村くんはそんな愛佳ちゃんの好きなところを熱弁していて、途中から私が褒められているように錯覚しちゃった。もしかして自分は虹村くんのタイプなんじゃないかなって。そう思うとなんだかいけそうな気がしてきて、遠回しに脈があるか確かめたくなったんだ」
言ってて思うけど、本当にバカだな、私。
「結構自信があったんだけど、ダメだった。想像以上に可能性がなくて、紛れもない本心だってわかったから。他の誰でもなく私の好きな虹村くんの価値観では創作の女の子に敵わない……っで。わだし、取りみ……だしちゃって。ごべんなさい、今もっ。うっ……ごめん……」
泣くのを止めないと。私ばっかり被害者みたいでずるい。
「虹村くんの期待をっ……裏切っ……た。わたじはっ……加害者……なの……ぃっ」
「違う!堂島さんは悪くないよ!」
両肩を掴まれる。見上げると中腰の虹村くんの顔があって、今にも泣きそうな顔をしている。肩に意識をやるとドキドキしてきて、なんだかわけがわからなくなる。ダメなのに……ちゃんと謝らないといけないのに。




