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04 板井川颯

僕は風紀委員長の板井川(いたいがわ)(はやて)

生徒会長の命により屋上に向かっている。

不良生徒が屋上で喧嘩をするとの情報が入ったらしい。

そんなところに一人で行って普通は止められるわけないと思うんだけど。

巻き込まれでもしたらどうするんだ。


風紀委員にはなり手がいなくて半ば強引に押し付けられた。

ぶっちゃけ風紀になんて興味がない。

そんなことよりも今日から始まるネトゲのイベントに勤しみたい。

なので早く仕事を終わらせて帰りたい。


ちなみにイベントというのは、特定のモンスターがドロップする『ふわふわ毛玉』を集めると限定アバターと交換できるというものだ。『花柄のウサミミ』、『アニマル柄のネコミミ』、『ドット柄のイヌミミ』全てコンプリート予定だ。


情報によると喧嘩をする不良生徒というのは、羽生と常澄らしい。

羽生は面倒ごとを嫌うので風紀委員の腕章を付けた俺が行けば場は収まり解決。

って簡単に行ってくれるといいのだけど。

常澄は直球単純バカな奴らしいから、風紀委員が来ようともお構い無しかもしれない。

面倒なことにならなければいいのだけど。

などと考えながら階段を上がっていたら女生徒と鉢合わせした。


彼女を見た瞬間、僕は直感的に『嘘』を感じた。


普段ネットの世界にドップリと浸かり、真偽の疑わしいデータが氾濫する中から取捨選択しているうちに身についた感覚だ。

リアルで会話していても直感的に『嘘』の匂いを嗅ぎわけることができるようになった。


その感覚が見ただけで『嘘』だと言っている。

会話もせずに感じ取ったのは始めてだ。


その女生徒は僕を見ると怪訝そうな顔をし、踵を返して屋上へと戻って行った。


へぇ、ちょっと興味あるな。

屋上から来て僕を見てまた屋上へと戻った。

僕が感じた『嘘』。

どう繋がるのかな。

僕が本気で探ろうとして嘘を付き通せた奴はいない。

『口八丁の板井川』の通り名は伊達じゃないぜ。


屋上出ると先程の女生徒と山王下がいた。

件の二人はいない。

喧嘩はまだ始まっていない。いや、終わった後か?

女生徒の方は何だかソワソワしている。

明らかに怪しい。

だが、先に仕事を終わらせないとな。

山王下は常澄といつもつるんでいる。

まずはこいつから探りを入れてみるか。


「聞きたいことがあるんだがいいかな?」

「なんでしょうか。」

「ここで何をしている。常澄は一緒じゃないのか?」

「さっきまで一緒だったんですけどね。愛の逃避行というやつですか。どっか行っちゃいました。」


『嘘』は感じない。

だが、こいつは軽口を叩いてはぐらかすタイプだ。

『嘘』が分かりにくい。


「ここで何をするつもりだったんだ?」

「えーっと。慈善事業っすかね。」


『嘘』は感じない。

こいつと話してても有用な情報は得られない気がする。


「慈善事業?」

「ええ、人助けの真似事ですかね。」


『嘘』は感じない。

羽生と常澄が喧嘩を始めたら、常澄に加勢する事を指しているのだろうか。

ストレートに聞いてみるか。


「ここで喧嘩が行われるという通報があった。何か知らないか?」

「え!?マジっすか。じゃあ巻き込まれる前に退散しないと。」


『嘘』は感じない。

誤報だったのか・・・?


「情報では喧嘩の当事者は常澄と羽生って話なんだが、羽生を待っていたんじゃないんだな?」

山王下は女生徒の方をチラリと見ると、

「俺が待っていたのは運命の人です。夢で今日屋上に来れば会えるというお告げがありました。そしたら正に最高の女性との奇跡の出逢いが成就しました。」


『嘘』を感じた。


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