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03 山王下流之介

先程、幼馴染が愛の告白を受け、そのまま逃避行してしまった。

一人取り残された俺はどうしたらいいのだろう?


キョウは羽生先輩を呼び出したと言っていた。

用件は俺には全く関係ないものだ。

このまま帰ってしまってもいいのだが、羽生先輩が来た時に誰もいないのは申し訳ない。

俺が呼び出したわけではないから俺が申し訳なく思う必要もないのだが。

まぁ、あいつとのよしみだ。

事情を説明してやるか。


よし、待とう。


いや、待てよ。

何て説明するんだ。

女子と二人でランランルーとか言ったら、俺の身が危ない気がする。

ふむ。

キョウには悪いが俺は退散させてもらうとしよう。

危うきに近寄らず。


うん、帰ろう。


いや、待てよ。

なにも正直に言う必要はないんじゃないか。

急用ができてあいつは来れなくなった。

俺が伝言を預かったということにする。

後日謝りに行くと言っていた。

そういうことにすれば、とりあえずは丸く収まるんじゃないか。


よし、待とう。


いや、待てよ。

あいつは果し状と書いて渡したと言っていたな。

もし羽生先輩が来たとしたら、喧嘩しに来るってことだよな。

だとしたら、すごくめんどくさいことになるんじゃないか?


うん、帰ろう。


いや、待てよ。

羽生先輩はこの学校最強だ。

もし羽生先輩に喧嘩で勝っちゃったりしたら、俺が最強ってことだよな。

最強ってことは一番ってことだよな。

その称号はちょっとカッコいいかも。


よし、待とう。


いや、待てよ。

体は鍛えているのでそれなりに自信もある。

だがしかし、羽生先輩の周りには取り巻き三人がいつも一緒にいる。

一対一のタイマンならまだ可能性があるかもしれないが、取り巻きたちが手をださないとも限らない。

そうなると勝ち目はない。


うん、帰ろう。


いや、待てよ。

羽生先輩はこれまでタイマンで負け知らずと聞いたことがある。

つまり取り巻きたちには手を出させないということなんじゃないか。

なら俺にも勝ち目はあるかも。


よし、待とう。


いや、待てよ。

タイマン負け知らずっていう話じゃないか。

他にも、今の取り巻き達が喧嘩を売ってきた時に三対一で無傷で勝利したとかいう話を聞いたことがあったような気がする。

タイマン負け知らずと矛盾してる気がするな。

まぁ、いいか。

尾ひれが付いていようと、現に最強とされているいうことは負けていないということ。

そういえばあの人に喧嘩売って怪我してる奴は見たことあるが、羽生先輩が怪我してるところは見たことがない。

そんな相手に普通に考えて勝てるわけがない。

夢見ちゃいました。

ごめんなさい。


うん、帰ろう。

さっさと帰ろう。


カチャリ。

階段へと通じるドアが開いた。


うおおおおおお。

判断が遅すぎた。


あれ?

羽生先輩こんなに可愛かったっけ?

全然違う人でした。

命拾いしたな!俺!


ドアを開けたのは、ポニーテールのよく似合う、お世辞抜きでかなり可愛い子だった。

会ったことある気がするのだが、どうにも思い出せない。

うちの学校の制服を着ているからここの生徒であるはずだ。

こんな可愛い子を思い出せないなんて俺の脳ミソどうにかなってしまったんではなかろうか。


開きかけのドアの隙間から俺を見てバツの悪そうな顔をしている。

もしかして、この子もキョウに告白しに来たとか。

奇跡とは滅多に起こらないから奇跡というのだよ。

一日に二度もそんなことがあってたまるか。


などと考えているとドアを閉めてしまった。

決してキョウがいなかったから帰ったいったわけではない。

きっと、誰もいないと思って上がって来た屋上に軽薄そうな男がいたせいで帰っていったのだ。

と、考えることにする。

自分で考えておきながら軽く傷ついた。


カチャリ。

再びドアが開き、先程の子が戻ってきた。

まさか俺に会いに戻ってきた!・・・わけないか。

階段の方をチラチラ気にしながら屋上に出てきた。

誰かいるのだろうか。

ポニテの子の表情が硬い。

会いたくない人が階段を上がって来たからしかたなく戻って来たようだ。


誰かあがってきたのか。

・・・あ!

すっかり忘れてた!

もしかして羽生先輩が来たのだろうか。


開かれたままのドアの向こうから出てくる者を注視する。


現れたのは幸か不幸か風紀委員長であった。


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