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13 山立姫子

常澄恭一郎くん。

真っ赤な髪の毛の男子。

不良というわけではないけれど悪目立ちするタイプ。

パソコンおたくである自分とは全くと言っていいほど接点のない人物っす。


ある日の学校帰り、彼が捨て猫をジッと見つめているのを見かけたっす。

彼は子猫を抱き上げると連れて行ったっす。

どうするのか気になって後を追ってしまったっす。


彼は自宅だと思われる家に猫を連れて帰ったっす。

中から聞こえてくる常澄くんとおそらくお母さんの声。


「あんたまた猫拾ってきたの!?」

「いーじゃん、俺が面倒見るから!」

「これで8匹目よ!」


彼はどうやら捨て猫を見ると放っておけず連れて帰って面倒を見ているようっす。


いけないっす。

自分は腐女子というわけではないっすが、恋愛などというものとは縁遠いものと思ってたっす。

しかしながらあっさりと落ちてしまいました。

恐るべしギャップ萌え。


それからは寝ても覚めても彼のことばかり考えるようになってしまったっす。

困ったっす。

何も手につかないっす。


こんなモヤモヤとした状態ではいけません。

ということで思い切って想いを伝えることにしたっす。

玉砕する可能性が高いことは重々承知いているっす。

自分には全くと言っていいほど女子力というものがないですし。

それでも何かしらの行動を起こし、結果を出したかった。


そこで恋文をしたためたっす。

書いた後、渡そうと意を決するまでに数日を要したっす。

その恋文を鞄に入れ、強い覚悟を胸にいざ登校。

玄関の扉を開けたところでまばゆい光に包まれました。


恐る恐る目を開けるとそこは石造りの建物の中。

いつもの玄関の前の風景とは明らかに違っていたっす。

茫然としていると目の前の床に赤く発光する魔法陣が出現したっす。

そしてその上の空間が陽炎のように一瞬揺らいだかと思うと真っ黒なローブに白髪の中年が現れたっす。


「突然我が居城内に気配が現れたので見に来てみれば、これはこれは珍しい。

魔力が微塵も感じられない者がおるとはの。」


「誰っすか!?ここはどこっすか!?」


「ここは俺の城。俺はここの主。魔王などと呼ばれておるかの。」


魔王!?

意味が分からないっす。

これはラノベ的展開!?

ということは・・・常澄くんにもう会うことができない!?

そんなのいやっす!いやっす!


「お主、そのいでたちや髪の色を見るにこちらの世界の人間ではないな。

噂に聞く異世界人とやらか。」


「突然お邪魔して申し訳ないっす!帰る方法を教えてほしいっす。」


「帰る方法など知らぬ。自分で探せ。」


「魔王なのに知らないっすか。魔王と言ってもそんなもんなんすね。」


「なに?いや、ただ興味がなかっただけだ。

俺がその気になればだな。

帰る方法など見つからんこともないと思うぞ。」


魔王は異世界の話を興味深そうに聞き、その情報と引き換えにこの城に住まわせてもらえたっす。

この世界では黒髪は不吉の象徴とされてて情報収集の際ネックになるとのことで髪を染めたっす。

常澄くんと同じ燃えるような赤。

魔王から魔力を分けてもらい、簡単な魔法なら使えるようになったっす。

鞄の中にノートパソコンを入れていたのが不幸中の幸いだったっす。

その魔法で電気石と呼ばれる魔石が発する電気をコントロールしパソコンの電力を得ることが出来たっす。

各種魔法陣のデータを収集し、パソコンで解析。

そんなこんなで1年掛けて帰る方法を見つけることができたっす。


「今までお世話になったっす。なんとお礼をしたらいいか。」


「礼などいらぬ。

お主のおかげで新しい魔法をいくつも完成させることができたしの。」


「そうっすか。

でも、異世界転移の魔法であっちの世界であばれないでほしいっす。」


「なんなことはせぬぞ。

そちらの世界には魔素がないのであろう。

すぐに魔力が枯渇して俺はなにもできなくなる。

それにこちらの世界でしなければならぬことがあるしの。」


「しなければならないこと?」


「いずれ来るであろう勇者の相手だ。

俺は恐怖の象徴だからな。」


「全然怖くないっすけどね。」


「黙れ。

それからお主も今ある魔力を使い切ったら魔法は使えなくなるが気を付けるように。」


「あっちでは使うことはないと思うっすから大丈夫っす。

ではそろそろ行くっすね。」


「ああ、達者でな。

常澄くんとやらに宜しく。」


「ななななななな!?」


「俺は心を読む魔法も使えるのだ。」


そうだ。

私は常澄くんに想いを伝えなければならない。

そのために1年間がんばってきたっす。


「プライバシーの侵害っすよ!

でも、ありがとうっす!」


親指を立てると魔王もそれに応え親指を立てた。


この魔法は広範囲を巻き込む。

そのため転移の魔法で場所を移動した。

研究の拠点に使用していた施設だ。

魔素感知の魔法を使用し建物内に生物がいないことを確認する。

そして、足元に異世界転移の魔法陣を展開し魔力を注入した。

すると辺りはまばゆい光に包まれた。


目を開け辺りを見渡す。

見覚えのある机、椅子、パソコン。

パソコン部の部室である。

懐かしい。

成功だ。

思わず涙があふれる。


部室のパソコンを立ち上げ日付と時間を確認する。


日付は計算通りだったっすけど位置と時間は随分誤差があったっすね。

自分が異世界に飛ばされた直後の時間、つまり朝の自分の部屋を狙ったはずが、終業直前のパソコン部の部室に着地したっす。


誰もいない時間で良かったっす。

タイミング悪いと激しく発光するから騒ぎになるとこっす。


戻ってこれたのは魔王のおかげっすね。

改めて魔王に感謝した。


さてと。

私は1年前にしたためたラブレターを鞄から出し、常澄くんを求めて部室を飛び出した。


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