出会い
時刻は昼過ぎ。
もうそろそろ家政婦さんがやってくる頃だ。
三月に一人暮らしを初めてから二ヵ月弱が経つ。
小学4年生の女の子一人には広すぎる、ファミリー向けの賃貸部屋で、今まで四人の家政婦さんがやって来た。
透明人間の私は、リビングやキッチン、寝室と、家政婦さんの掃除場所が変わるたび、気付かれないように静かに動き回ったつもりだった。
でも、見えないが何かいる気配に気づいてしまうらしい。
日に日に表情が硬くなり、怯えるように辺りを見渡す事が多くなり、そしてある日急に、別の新しい家政婦さんがやって来る。
そんな事を四回も繰り返してしまった。
そして今は5人目の家政婦さんで、心配だった。
この人も表情が硬くなり、怯えるような目をするようになったからだ。
もう辞めさせるわけにはいかない。これ以上、お母さんやお父さん、妹に、迷惑をかけたくなかった。
私は、リビングの机に
「寝室は掃除しないでください」
と置手紙を置いておいた。
最初からこうしておけばよかった。
これで家政婦さんの動きを読みながらあっちこっちに移動しなくて済む。
寝室のドアを少し開け、その隙間からリビングの様子をみながら家政婦さんを待っていた。
そして、ガチャッと、玄関の扉が開く音がした。
私は息を飲む。
大丈夫、寝室に入って来さえしなければ私の存在に感づいたりする事はない。
きっと今度は大丈夫。
そう何度も自分に言い聞かせていると、リビングのドアがカチャっと開けられた。
その音の方に、私の視線がギュッと吸い寄せられる。
そこに現れた家政婦さん。
「えっ!?」
私は思わず短い驚きの声を上げてしまったのだった。