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超短編シリーズ

作者: K'

【第一話】母の日


小さい時に友達だと思っていた子にイジメられ、泣きながら帰ってきた俺に母さんは言った


「相手を信じる事ならいくらでも出来る、けど相手を信用するのは難しい事なんだよ?でもイジメられた原因はもしかしたらお前が相手が嫌がる事をしたからかもしれないよ?

それで本当に何もしてないならいくらでもやり返してきな、お母さんはあんたが泣いて帰ってきてもあんたのお母さんのままだから安心しなさい、しっかり前向いて、上を見続けられる男になりな!」



交通事故で親父が亡くなった時も

「ごめんよ、お父さんは少し早くみんなや私達家族とお別れしなくちゃならなかったんだよ…

でもこれからはお母さんがお父さんにもなるから、絶対あんたにもツラい思いさせないように頑張るからね!だからもう泣かなくて大丈夫だからね」


一番泣きたかったのは母さんのはずだろ?でも母さんは俺の前では一度も泣かなかった



俺が結婚した時も

「あんたがまさか結婚するなんてね、可笑しい話だよ!趣味も特技も無くて顔も悪い、そんなあんたが結婚なんてね…

母さん可笑しくて涙が出ちゃうよ…

本当…良かったね、あんたが幸せになる事が母さん一番嬉しいんだよ、何も得意な事がなくて、趣味もなくて、顔が悪くて、でもあんたは母さんの一番の宝物なんだよ、何よりも愛しく、何よりも大切な息子だよ…」



痴ほう症が悪化して入院した先で迎えた母の日、何が欲しい?って聞いた俺に母さんはこう言ったね


「想い出が欲しいよ、昔の想い出から新しい想い出まで…どんどん忘れちまうんだよ?お父さんの事や自分の事、ましてやあんたの事まで…もう毎日がツラいよ…」


その時俺は言ったよね

『母さん!俺が想い出だ!母さんの想い出だよ?母さんの記憶が薄れても俺は薄れない、消えない、いつまでも母さんの息子だよ、得意な事も趣味もなくて、顔が悪い息子だ!

けど母さんの一番の宝物なんだろ?なら俺はいつまでも変わらず母さんを覚えてるよ、だから母さん…

ツラいなんて言うなよ…』

泣きながらも母さんは安心した顔で笑った



そして母さんは二ヶ月後、息を引き取った…


苦しみ無く、幸せそうな笑顔で…



あれから五年

母さん…俺、父親になったんだ

可愛い娘がいるよ

俺に似ず母親に似てくれたからスゲエ可愛い娘だよ

もうすぐ連れてくるよ、もうすぐ母の日だもんな…



なあ母さん?俺、母さんと父さんの子供に生まれて本当に幸せだよ

だから俺も自分の子供に

「あなたの子供で良かった」って言ってもらえるような親になるよ…

だから母さん…もう自分の好きな時に泣いて、好きな時に楽しんで好きな様に…






生きて欲しかった…



こんな甲斐性の無い息子でゴメンよ




なぁ母さん?



俺、上を向いて生きれてるかな?






…また近い内に会いに来るよ




あ、言い忘れてたよ


「生んでくれてありがとう、母さん…」

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