第八話――崩壊――
「俺らと共に残党狩りをするメンバーを紹介するよ」
そう言ってケビンは何人かの男を紹介した。俺もそれに合わせて適当な自己紹介をする。俺を見た時の反応は大体みんな似たようなもので、大丈夫なのか? 戦えるのか? 頼りなさそうだな。などの無慈悲な言葉を投げつけられた。そのたびにケビンが「親父を一泡吹かせた」と言って回るので、俺の評価は実際のものより課題解釈されているような気がした。
しかし、ケビンが親父というたびに、
「え? あの村長が!?」
という反応するので、やはりあの人は相当な実力者だったのだろう。何はともあれ、ケビンの計らいによって俺も思いのほか部隊になじむことができた。しかし皆が俺の素性を聞き出そうとしてくるので、なかなか返答に困った。そんな会話がしばらく続いた後、矢倉の上からこちらに向かってアイナが叫んだ。
「ケビン! 敵の数が減ったからそろそろいけるぞ」
それを受け、ケビンは門を開けるように指示を出した。そして一振りの剣を俺に渡す。って待ってくれ、他の奴らが防備ガチガチなのに対して、俺は丸裸に近いのだが?
「なあに、心配はいらない。親父の攻撃をあれだけ防いで、かつ反撃までできるんだ。フェンリルの攻撃なんて当たるわけないさ」
ケビンがそう言う。それに対して部隊全体が笑った。はあ、そんなものなのかと納得し、俺は剣を握りしめる。剣はやけに軽く感じた。こんなに軽くて大丈夫なのかとケビンに尋ねようとしたとき、ケビンは声を出して走り出した。他の奴らもそれに続く。ため息をつきたくなるのを抑え、俺も駆け出した――。
結論から言うと、戦いは順調に進んだ。こちらの被害はほとんどなく、戦い始めて直ぐに敵は逃げ出した。あちらこちらで歓喜の声が上がる。
「やったな」
俺はケビンにそう言った。
「ん? ああ……」
ケビンは何かを考えている最中のようにそう言った。
「何か思うことでもあるのか? 戦いは順調だったじゃないか」
「ああ、そう順調……というよりもあっけなかった。おかしいんだ、敵が引くのが早すぎる」
俺はフェンリルの生態はよく知らないため、そうなのかと答えることしか出来なかった。しかし周りにはケビンと同じように考えている人はいない。……いや、一人いた。アイナだ。矢倉の上で独り、首をかしげている。
「まあ、戦いは終わったから、とりあえず中に入ろう」
俺はケビンにそう言った。それとほぼ同時、村の中からざわめきが起こる。矢倉の上にいたアイナは、何を見たのか、ほとんど飛び降りるように矢倉から降り、そして村の方に走り始めた。
様子がおかしい。ケビンもそれに気が付いた。すぐに馬に乗った伝令がケビンの下へ来た。
「ケビン様! 大変です! フェンリルが東の柵を破り村へ侵入してきました!」
「何だと!?」
そう言うや否や、ケビンは周りに声をかけ走り出した。周りの者は最初は笑って流そうとしたが、直ぐに尋常ならざる様子に気が付き、ケビンに続いて走り出す。
フェンリルは南側からしか攻めてこないんじゃなかったのか? それにどうやって壁を破った?
疑問は多々あったが、侵入された今考えていても仕方がない。俺もすぐに走り出した。