第三話――村へ――
先輩ドワーフは完全に伸びていた。死んではいない。近づいて確認したのだから間違いはない。後輩ドワーフは俺にバケモノを見るかのような目を向けていた。まあ無理もない。俺自身ここまで強く投げるつもりは無かったし、矢を避けることもまた然りである。
さて、これからのことだがどうすればよいのだろうか。現状を確認するため周りに目を向けてみる。近くに目を向けると草や木が生い茂る、遠くに目を向けようとしても緑のカーテンがそれを阻む。まごうことなく森の中である。見た所人の生活圏よりも外にありそうだ。
「なあ」
「は、はいぃ」
……そんなに怯えなくても良いだろうに。
「この辺りに人が住んでいる場所はあるか?」
まあ聞いておいた方が良いだろう。とてもじゃないがこんな森の中で一生を終える気にはならない。
「ひあ、え……あぁ」
……これは必要な情報を聞き出すのに長い時間がかかりそうだ。
聞き出せたことをまとめると、この森は大分深いらしく人里へたどり着くには一日あっても足りないらしい。ドワーフの村はこの近くにあるが、あまり人間に対しては好意的ではないらしく、その村へ行くことはやめておいた方が良いとのこと。またこの森の中には危険な動植物はいない。
それから心優しいドワーフは自発的に食料、コンパス、短剣を寄付してくれたので(決して強奪ではない)快適な森の旅ができそうだ。
道中でのことで特筆すべきことは何もなかった。途中スキルを試してみようかと思い、二、三木造品の家具を作ったりもしてみたが、荷物になるだけだったので置いていくことにした。
日が暮れ始めたあたりで森を抜けることができ、ドワーフの話とはだいぶ違いがあるなとは思った。おかしいなと思いつつさらに歩を進めるとあっけなく村についてしまった。空にはまだ太陽の色が残されていた。
村は木でできた柵で囲まれていた。まさか飛び越えてはいるわけにはいかないので、俺は門を探すことにした。とはいえ村はそこまで大きくなく、門はすぐに見つけることができた。そこには門番らしき人がいたので話しかけてみることにした。
「あのー……」
「誰だ!」
さて、何と答えれば良いのだろうか。まさか異世界からきましただなんて言うわけにはいかないだろう。言ったところでこの門番からは異常者として見られ、最悪村にも入れてもらえない。ということはまず、この槍を装備してこちらに不信感を向けている門番の信頼が必要だ。
「た、旅のものです」
「旅? こんな何も無い村にか?」
ええ、まあ、とお茶を濁しておく。門番は俺に対して変わっている奴とでも思っているのだろうか。しかしながら警戒の色は薄まったのでとりあえず良しとしよう。
「まあ、何にせよ……ウーナロ村へようこそ」
そう言って門番は手を差し伸べてきた。すぐに意図を察し手を握り返す。こっちの世界でも握手という文化は存在するのかとしみじみした。
「ところでこの柵は何のためにあるんですか?」
「ああ、これは……なっ!」
言い終わるか終わらないかのうちに、門番は槍を構え戦闘態勢に入った。
――刹那、後ろから何かが襲い掛かってくる気配がした。