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第十五話――日常――

 村長からの武道の稽古は明日の夕方からということになり、俺はひとまず家に帰ることになった。しかしあの二人を家において行ってしまったが大丈夫なのだろうか。と今までほとんど考えてもいなかったくせに急に気になり始めたので、少しばかり足早に歩いた。外はすっかり暗くなり始めていて、夕飯が恋しい時間帯となっていた。




「ただいまー」


 そう言って家の扉を開くと、


「ねえ! すごいよ! アイナちゃんすごくかわいい!」


 とアテナが突如投げつけてくるように言った。それに対してアテナは、


「ちょっと! そういうことは言わない約束でしょ!」


 と言ってアテナの腕を引っ張っている。何だかしばらく見ない間に二人は仲良くなったようで安心した。よくよく話を聞いてみると、二人は所謂、恋バナをしていたらしく、年頃(片方は怪しいが)の女の子らしい会話で仲良くなったようだ。様子から察するに、話の中心はアイナとその相手の事だったので、冷やかし半分でアイナに気になる人を聞いてみたが、


「この馬鹿! 変態!」


 と言って取り合ってもらえなかった。


 夕飯はアイナとアテナが手分けをして作っていてくれたのだが、アイナをからかったせいでお預けを食らう羽目となり、全力で謝ってなんとか許してもらえた。


 夕飯はシチューとパンとサラダだけで、品数こそ多くは無かったが、その分手をかけていたらしくシチューはすごく俺の好みに合っていた。余りにもおいしかったので、


「どうやって作ったの?」


 と聞いてみたら、アテナが答えた。


「隠し味が入ってるの」


「隠し味?」


 聞き返すとアテナがもったいぶっている感じに、一文字ずつゆっくりと、


「あ、い、じょ、う」


 と答えた。余りにも素っ頓狂な答えに俺は思わずシチューを吹き出しかけて、アイナはアテナを強くたたいた。




 しばらく他愛のない話をして、その日は特にすることも無かったのですぐに眠ることにした。もちろん寝床の割り振りは昨日のままだ。しばらくの間、ソファーに寝っ転がりながら月を眺めていたが、地球の月とは模様が違う事に馴染めず、違和感が大きくなってきたので目をつぶって完全に寝た。




 翌日の朝、俺は村長との約束まで時間があり、暇を持て余していたことから、村の子供たちへの教育ボランティアを行うことにした。もちろん本来は法律違反なのだが、まあばれなければ大丈夫だろう。ケビンにも確認を取ってみたが、


「おお! それは良い、ぜひ頼みたい!」


 と言っていたので大丈夫だ。子供を集め始めたあたりで、「あれ? 俺この世界の文字分からなくね?」と気が付いて、アテナに聞いてみたら、


「あ~その辺は、まあ何とかしておくよ」


 と言われたので大丈夫だ。




 子供を集めている間、木から紙の生産をして、また炭で文字を書けるような黒板を作ったりもした。紙を作るときに、材料って木だけでいいんだっけ? と疑問に思ったが、特に問題なく上質なものが出来上がったので、作り方とか厳密な材料とかが分からなくても、大部分を用意できれば大丈夫だと分かった。


 そうして10人くらいの子供たちと、なぜかアイナとアテナが集まったのだが、さて何から始めればよいのだろうか。


「なあ、アイナ。何を教えればいいと思う?」


「え? う~ん、文字は一応家庭でコッソリと教えているとは思うけど、それ以外は何にもやっていないと思うなー」


 とアイナは答えた。よし、なら算数だな。


 おはじきは無かったので、土から泥団子を作り出した。そしてその日は足し算を教えることを試みた。


 結論から言えば何とかなって、その日のうちにみんな一桁の足し算を見よう見まねでできるようになった。まあ、今回来ていたのが小学四年生位以上に当たる子だったので、ほとんど記号を教えるだけってことが大きかった気がする。


 そして夕方、村長との初めての稽古が始まった。

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