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第十三話――問題――

 離れ――つまり俺の生活する家――にはベッドが二つあった。それに対して住人は三人である。となればこの寝床をどのように振り分けるかが問題となる。


「私と裕二が一緒に寝れば問題ないでしょ?」


「ダメ! 結婚してない男女が一緒に寝るなんて!」


「じゃあ私たち結婚する?」


「もっとダメ!」


「どうして?」


「うぅ、だって……」


 いや、本気で考えなくていいぞ? アイナ。そんなもじもじして顔を赤らめるほど俺の将来を心配してくれなくても大丈夫だから。


「じゃあアイナと裕二が一緒に寝れば?」


 と言うアテナ、何やら先ほどからニヤニヤしていて気持ち悪いほどに美しい。


「ええ!? いや、それはまだ……」


 と言ってチラチラ俺の方を見てくるアイナ。


「ユ、ユージが私と結婚するって言うなら……考えないことも無いけど……」


「ああ、そうだな」


 と答えるとアイナは小さく飛び跳ねたかのように身をこわばらせ、上目遣いで俺の方を見つめてきた。その目は俺に何かを期待しているかのようで……俺何か勘違いしてるのか?


「え? 結婚する予定が無いから一緒には寝れないってことだろ?」


 そう言い終わると同時、彼女の上気したような目は次第にその温度を下げやがて凍り付いた。


「……もう知らない!」


 と言って俺に見事なボディーブローを決めて、我先にとベッドに入り込んでしまった。


「……鈍感」


 アテナは冷ややかな目で俺を見ていた。そして俺が何か言う前にもう一つのベッドに入り込んだ。


 かくして俺はソファーで眠ることとなった。




 朝、アテナとアイナよりも先に起きて外へと出た。外の空気は肌に刺さるような冷たさで、ソファーと簡易な毛布のぬくもりが恋しくなったが、どうにもあの場所は居辛かったので冷気を甘んじて受け入れることとした。


 さて暇だし村を回ってみようかとケビンの家の前を通り過ぎた時、ちょうどその扉が開かれケビンが顔を出した。


「おお、ユージ、偶然だな」


「おかげさまで熟睡できなかったんだよ」


「はは、代わりと言っては何だが朝食でも食っていくか?」




 男同士で囲む食卓、友情の証、それはどこにでもありふれているようで実はあまり手に入れることはできないもの。久しぶりに他の人と食べる食事は簡素なものであったが実に美味に感じた。


「なあユージ、アイナもその、悪い奴じゃないんだ。ただこういうのに慣れてないだけでな」


 妹のしりぬぐいをする兄、実にできた兄だ。


「ああ、それぐらい俺にも分かるさ」


「そうか、ならこれから迷惑をかけるかもしれないが、アイナを頼む」


 いまいちその意図を掴み切れていない気がしたが、適当な返事をしておいた。ケビンはそれに対して笑顔でうなずいた。


「本題に入ろう。昨日、壁を直したあの力のことだが……」


「すまない、それについては詳しくは話せないんだ」


「いや、まあ気になってはいるが……よくあんな力を持っておいて今まで生きてこられたな」


 ケビンの言っていることの意味がよく分からなかった。これは壁がロストテクノロジーと化した原因、この世界の共通認識と何か関係しているのだろうか。


「ケビン、お前のことを信用して話すが……実は俺はここよりずっと遠くの国から来たんだ。だから本当の所、壁がああなった理由も、今言っていることも理解できていない」


 これ以上隠すのは難しいだろう。ただし、話がややこしくなるので異世界だということは伏せておいた。ケビンは驚いたような表情を見せたが、直ぐに落ち着きを取り戻しゆっくりと話を始めた。

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