エピローグ 彼の答え…… 終わりの始まり
活動報告にキャラクターの紹介and裏設定みたいなもんも書くんでそっちも見て下さい。
遥か昔に剣豪皇帝と呼ばれた者が一人この世に生を受けた……
そのものは自らの持つ特別な力で仲間を集め、遂には歴史上類を見ない帝国を席巻した。
世界中の者は彼を讃え、歓喜の言葉は途絶えることは無かった。
遂に彼は決心した。彼の初めの目的である魔王を倒すと……
そして彼は魔王との三日三晩に及ぶ決闘の末、魔王の首筋に剣をチラつかせた。
しかし、彼は魔王を殺すことは無かった…… いいや、彼は魔王を殺すことが出来なかったのだ。
それから何代か後の皇帝の時の話だ。
いまだに帝国は魔王軍虐めを習慣にし、祭りのように盛大に行っていた。
しかしある時、魔王の首を落としその悪しき風習に終わりを告げさせる男が現れた。
帝国配下の将軍だった彼は、六人の勇猛な部下と共に魔王に挑み見事その首を落とした。
此処までなら、彼とその部下たちは百万年語り継がれる英雄譚に出てくる事になっていただろう……
———しかし彼は魔王の力を受け継ぎ、新たなる魔王となった。
神に身を背け、彼の功績は無に帰された…… いや魔王は死んだ…… しかし後継者は生まれてこなかったと民に伝えられた。
そして彼は自らの力を六人の部下に与え、この世の断りに反したモノを仲間として迎え入れた。
一夜にして彼に敵対する内の旧魔王軍と、彼と共に魔王軍討伐の為に派遣された帝国軍を皆殺しにした。
そんな彼に単騎で勝負を挑むものがいた…… しかし彼はその男に打ち勝った、そしてその男にかれは手を差し伸べた…… 友として。
彼は領民に慕われた、そんな領民を彼は愛した。裏切られ続けた彼の人生で初めての拠り所が生まれた。彼の人生で初めて守りたいモノが出来た。初めて信じてもいいってものが現れた。
そんな彼は笑っていた。きっといい笑顔で仲間たちと共に笑っていた。
しかし彼の人生を一瞬で打ち壊す者が現れた……
彼は必死に戦った、しかし敗れた。彼は死を覚悟した……
———しかし彼は死ななかった…… いやまたその打ち壊すものも元の世界に戻る事を恐れたのだ。
目を覚ました彼の周りには彼を囲むように六人の部下たちの氷像が作り上げられていた。
彼の世界が崩壊した。彼の穏やかな日常が音を立てて崩れた。
彼の大切なモノ達は彼と同じ境遇にあった一人の少年に殆どが奪われた。
怒りと悲しみが入り混じりどうしよもない彼に彼の人生最大の友が手を差し伸べ、彼はその手を握った。
————しかしその友もまた彼を一人残し去っていった。
彼にはもう守るべきものも、救うべきものももういない…… 彼に残るのはかつての仲間たちの残骸だけ。
―――こんな世界壊れてしまえ…… いや壊れないのなら私が壊してしまおう。
彼は魔王として仲間たちと共に友を殺した人間に立ちはだかった…… しかし奮戦の末敗れた。
一人の少年の手によって彼は人生二度目の死を迎えた。
そして少年は今まで誰も成し得る事の出来なかった魔王殺しの称号を得た……
守るべきものの死と引き換えに。
そこにあったのはもはや虚無感だけであった。
少年も、もはやこの世界に微塵の興味も無かった。
少年は冷たくなった守るべきものを抱きしめ、魔王に抉られた傷も無視して血を流し倒れるまで泣き続けた。
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「おめでとうございます。勇者太田隼さん…… 貴方は今まで誰も成し得る事の出来なかった魔王の討伐を成し遂げられたした」
椅子に座っている目の前の少年はうつむいたまま何も答えない。
「どうでしたか? 貴方の望んだ転生は出来ましたか」
「俺は変わる事が出来ただろうか?」
少年は小さく呟いた。
「それは私が決める事じゃなくてあなた自身が判断する事ですよ」
少年の涙が床を濡らした。
「俺は自分を変える為に異世界に転生した。それなのにまた守る事が出来なかった」
彼は幼稚園の頃に大切なものを無くしている。突然幼稚園に入ってきた変質者と戦い、大けがを負ったのだ。彼は彼の居場所を、友達を守る為に動けない大人に変わり必死に戦ったのだ。
ただ彼以外にも彼の幼馴染の女の子も重傷を負った。
そして運悪く、その子は幼稚園に復帰する前に両親の仕事の都合で転勤してしまった。
こんな事件が無ければその子は普通に皆に惜しまれながら、幼稚園を離れる事が出来たのに…… 大人たちはそんなことまで手が回らず、皆に転勤の事を伝えられなかった。
————それから彼は自分が守れなくて、その子が死んでしまったと今も勘違いをしている。
彼の多大なる勇気に関しても大人の反応は冷淡な者であった。『なぜあの場で他の子同様逃げなかった』確かにそこには大人の心配や優しさはあったと思う……
しかし彼はそんな言葉を掛けて欲しいのではなかった。そんな目で自分を見て欲しいのではなかった。
『よく頑張った』この一言だけでだけで彼の人生は大きく違っていただろう。
彼は頑張るということがコンプレックスになってしまったのだ。
頑張れば頑張るだけ自分は間違った方に進んでいるのではないか……
頑張る前に…… 頑張るような状況になってしまったら…… 逃げればいいじゃないか。
『何故逃げてばかりいる。お前もちょっとは努力しろよ』逃げ癖がついてしまつた彼に彼の両親が言った言葉だ。
成長した彼にそれとこれとの違いは分かる…… しかし心のそこで頑張る事に恐れを抱いていた。
頑張れない自分は何時しか頑張ろうとしない自分に変わっていた。
彼は心底自分が嫌になった。二次元などに逃げ込んだが彼の心は満たされんかった。
ある日彼は久々に学校に行った。
しかし仕事も終わり家に帰ってきた両親は、学校から帰ってきて自室にいる彼を自室に今日も引き籠っていると勘違いして、彼の言い分も聞かず烈火の如く怒り倒し、激しく罵った。
彼は遂に頑張り方すらも分からなくなってしまった。
―――そして彼は現実から逃げ出した。
「やっぱり俺は変わることが出来なかった」
彼の周りには雨が降ったような水溜まりが出来ている。
「貴方の望んだ異世界転生とはなんですか?」
魔王が死に際に発した言葉だ…… 確かに私もそれが気になる。
「俺の望んだ異世界転生とは…… 守るべきものをしっかり逃げずに守り続けれるような人間になる事だ…… あの時の魔王との勝負には勝ったが俺は負けた…… 心のどこかに存在する小さな小さな恐怖心とカレンの言葉の安堵感によって引き金を引いてしまったのだ」
確かに銃などとは違って能力に明確な引き金などない…… 心の何処かの小さな引き金を引いてしまうだけでそれは放たれてしまうのだ。
「ならばもう一度異世界で気が済むまでやり直せばいいじゃないですか」
悪戯っぽい仕草で私はこういった。
「え……」
彼は初めて涙でグチャグチャの顔を上げた。
「神様から聞きませんでしたか? 魔王を倒すまで家には帰れないぞって」
「それでは日本に帰るということですね……」
彼は寂しそうにつぶやいた。
「もう日本には貴方の帰るべき家なんてありませんよ。帰ったとしても閑散とした部屋に貴方の写真と親のせめてもの罪滅ぼしにと仏壇が置いてあるだけですよ。それにいま貴方の家は何処ですか?」
「カレンの家ということでいいのかな? 図々しいって怒られそうだけど…… カレンに……」
彼の顔が段々暗い顔に変わっていく。過去を懐かしむような目で涙を流している。
「日本に戻りたいって言うなら止めませんし、より良い環境と才能の赤子からやり直すってことでもいいですよ。決めるのは貴方自身です」
「戻りたい…… あの世界に…… まだ俺の異世界転生は終わっていない……」
彼は涙を服の裾で拭き取り私の眼をしっかりと見た。
「分かりました太田隼さん、貴方のこれからの自分探しの旅で迷う事の無いよう、必然力と運命力を司る女神から一つ祝福を授けます」
彼は光に包まれ消えていった。
太田隼、手元の本に記録をつけていく。
うっ…… 本棚から本が落ちてくる。
無作為に開かれた本には、初代皇帝と2代目魔王と、ダークフレイムマスターの文字が・・・・・・
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ああ、私は死んだのか…… やけに世界が眩しく感じる……
私は寝ているのか?
目を開きたいが、瞼が重い。体も石のように固い。
私の顔をペタペタと触る者がいる…… 目を閉じているのにそこに恐怖もなにも感じない。
ただ懐かしさだけが感じられる。
「さよなら、俺の大切な守りたかった人よ」
誰だっけ、この声…… ああ、思い出したあの訳が分からなくて、そしてとてつもなく儚く、寂しく、孤独な心を持っている強者、オオタ シュンだ。
体が勝手に動いてしまった。
「おい勝手に殺すな」
シュンの手を私は握っていた。
「おいおい、男の癖に泣くなよ」
シュンは私の体に顔を埋めて来る。
気恥ずかしい…… 止めろ…… 止めろ……
あれよく見たらシュンも私も傷が消えている。
世界はこんなに眩しい者なんだな。
てか何で私の服がこんな普段着たことも無いような、フリフリな可愛い系の純白の服に変わっているのだ…… しかもスカートとは……
はっ…… もしや……
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一帯に大きな大きな平手の音が響いた。
後でカレンさんはシュンさんに必死に謝る事になるが……
気にってくれましたかカレンさん。まぁ服は私の完全な趣味ですが……
まぁそれはいいでしょう。
———太田隼さん、貴方への神々の奇跡というものはどうでしたか? 貴方は誰も成し得ないことをしたのですよ……
貴方の望んだ異世界転生、今度こそ成功するといいですね。
「魔王を倒したという少年が出たとは本当か?」
一応神ではあるが完全に神に成りきる事が出来ない男が鎧に身を包みズカズカと私の空間に入ってきた。
「そうですね。あの非力な少年は貴方でさえも成し得なかった事を成してしまったようです」
目の前の男は遠くを見つめ、何かを思い出すような感じで立ったまま動かない。
「ああそうだな、確かに俺は怖かった。此処に破門をされるのも、ここに戻ってくるのも」
「だから、分かっていても神の存在を否定し、存在しない天の将軍何てモノを作ったんですね」
男は髪をいじくりながら答えた。
「まさか、その時の俺は本当に天の将軍何てやらされるとは思って無かったがな」
男は大口を開けて笑い始めた。
「それで彼の事はどんな風に思っているのですか? 天の将軍、いえ初代……」
彼は腕を組みながら深く、深く、声を唸らせながら考えている。
「…… ————————— ————————— ————————— ———————……」
私は手元の本に彼の記録を書きながら彼の大先輩である、新人の神の話に耳を傾けた。
……新人といっても私の神よりも信者の数は上だけど。
ああ、本のページが余ってしまった。
そうだ!
―――必然力と運命の女神の名において、魔王に立ち向かった者達に精一杯の感謝を‼
手元の本の空ページに小さく丁寧にそんな事を書き綴った。
続編希望の声が多ければ続きを書きます。
まぁそんな声上がらんと思うけど。




