串刺しの森で
次回からは戦い闘いしてきます
あれあと1話じゃ終わらない……
「今日ここに集まってくれた諸君らの国を思う気持ちに是非感謝したい」
屋敷の庭を埋め尽くす戦士たち、ざっと500人はいそうだ…
皇帝陛下の命令が下りてからはや一週間、私や一人を除いた従者達は武器商や一族や父親の古き戦友とその一族、騎士団を駆け回り兵数を増やすのに務めた。
一応シュンにも防具の一式を揃えてやった。
まぁ、有望な人間は東方の戦場に送られているからな…… 私だって女でなければきっと東方の戦場で活躍することが出来ただろう。
それに魔王軍の存在すら知らない騎士団の下級兵を連れていくことも出来ない。これさえ出来ればもっと兵力を増やすことが出来たがそこは割り切るしかない。
それに元老院にも散々魔王の正体は、私が討ち取るまではその存在を隠し通し、晒首にしたときはじめてその存在を公開すると釘を打たれたからな。
というか晒首にしないかぎり魔王軍の本拠が本拠なだけあって確認する者がいなく、信じてはもらえないでしょうが。
ただ私は今回の準備で分かった事がある、帝国国外と交易をしている一部の有力な商人は魔王の存在と魔王軍の瓦解の事を知っていることを。幹部の首を見たという商人もいた。
まぁ道中で言いふらしたそうだが誰も信じてくれなかったらしい。
しかしどれもこれも水面下での行動なのにこんなに事が早く進むのは皇帝陛下自らの命令だということが大きかった。
大きく息を吸った。
「私たちの目的はただ一つ‼ いまだに諦め悪く半壊の城を根城に再建を試みている魔王軍を壊滅に追い込み、その元締めである魔王を討伐すること‼」
庭一帯が喝采に沸いた。
「国の為にその命を捧げよ、陛下の為にその身を捧げよ、戦え、戦え、その命が尽き果てる瞬間まで剣を捨てるな、背を向けるな、戦い続けた者にだけ天の将軍が降りてくる。戦いを止めた者に死と、絶望は降りて来る。老いも病も全てがなにも無い神の国に行きたいか? 邪神の渦巻くこの世ならざる、魔境に行きたいか? いいや行きたくないだろう。私たちにあるのは今のみだ。私たちは今しかない。だから全力でこの世に抗い続けろ」
庭の皆が一斉に足並みをそろえて騎士としての敬礼をした。
「いざ、目的地は帝国の北東、ワラキルア公国、串刺しの森、いざ出陣!」
一斉に敬礼から元の状態に戻した。騎士たちがが大きく息を吸い……
おおう。
この時ばかりは若手の騎士も、老人の退役兵も皆が皆心を通わせ合い、戦士共の力のこもった叫びが帝国中に木霊した。
これなら勝てる。
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ワラキルア公国……
今は帝国の属国であるがその歴史は深く、この帝国の成立時から存在している国だ。まだ帝国が小国だった頃、ワラキルアを治める大領主が真っ先に初代皇帝に剣を捧げ忠誠を誓った為、万年ワラキルア公国はトランシルヴァニア家のモノとして認められた。
初代皇帝が世界を統一したとき…… ワラキルア公国に突如奴ら魔王軍が現れた。
ただその時は魔王軍は初代皇帝率いる帝国軍に軽くあしらわれ、代を重ねても幾たびも幾たび皇帝の玩具にされ続けた。
ここ二百年間に至っては魔王領に攻め込むことは無くなり、魔王軍は過去最高戦力を誇っていたがそれもある男によって一夜にして崩壊してしまった。
近年では新興のライヒ王国と小競り合いを起こしていて、帝国と共同で事に当たっている。
今回私たちは表向きはワラキルア公国の援軍ということになってる。
帝国軍は好きにワラキルア公国をうろちょろ出来る権利を持っている為簡単に国境を超える事が出来た。
グレイから聞いた話だが商人はこうも簡単に国境を超すことが出来ないらしい。
国境を超えると正規の道を進みワラキルア公国の都で手厚い歓迎を受けた後、森に敵軍が存在して居るということで、そこで一部の者以外馬を下りさせ、現地の魔王軍の研究者を案内として雇った。
「うぁ~ でっけーこれぞ異世界の森って言う感じのとこだな」
シュンがやけにはしゃいでまた訳の分からないことを言い出した。
「この森はワラキルア公国の国土の四分の一を占めていますからね…」
グレイがそう呟いた。
「ここがあの伝説で有名な串刺しの森か」
帝国生まれ、帝国育ちの私にもここまで大きい森を見たのは初めてだ。
「そいやー気になっていたんだけど、何でここ串刺しの森とかおっかねー名前がついてるの」
はぁ此奴そんな常識的な事も知らんのか……
「ここが何で串刺しの森かというとだな、帝国が出来るより遥か昔の話だ。当時の権力者である覇王ピサロがここら一帯の権力者に大事な嫁を嬲り殺されたそうな、それで覇王は激怒し、ここら一帯の人間を全て殺すか捕虜にして、当時は何もない荒野であったここに一人一人、その当時のここらの領主が主力として大量生産していた槍で串刺しにしたと、覇王は死体であっても串刺しにして打ち立てていったらしい、そして時は流れ放置された人々は何時しか朽ち果て大地の恵みとなり大きな大きな森を作るまでに至ったんだと。これもあくまで伝説だがな」
ああ懐かしい話だ。私も子供の頃に文字を覚える為にそーいった伝説が書いてある本をよく読んだな。
文字を読むことが出来ない、シュンに是非読ませてやりたい。
「うぁーこの帝国物騒な伝説もってんな」
「帝国じゃない、帝国が出来る前の国の伝説だ」
「じゃあ…… この森に魔王領があるってことですか……」
「そうだ、ワラキルア公国の四分の一はほぼ魔王領だ。それに質の悪い事に魔王領付近には強い、強い結界が張られており、その存在に気付いて無い者も多い」
これも魔王がお伽噺の中の存在になっている理由の一つだ。
世界各地に魔王が住んでいると言われている秘境は存在する、どれもデマだが、それにここも年にいくらかだが魔王を捜しに行く奴らがいるらしいが発見できたものは一人もいない。それはそこに結界が張ってあるからだ。
案内人の学者の話曰く、気がついたら森を抜けてライヒ王国に入って至り、森の中で同じところをグルグル回っていたというものもいるらしい。
「航空写真とかで見つけられないんでしょうかね? ああ人工衛星があったらなー簡単に見つけられるのに」
ああまた此奴特有の訳の分からない話が始まった。
帝国の初代皇帝やあのライヒの騎士は何故結界を破れたかは知らないが、この帝国の歴史書の記述によると一度結界が破られると簡単には結界を張れなくなる為今は結界が無くすんなりと入れるだろう。
私は一隊に指示を出し森に向かって進軍した……
二日ばかり、軍を進めると……
急に森が晴れ……
荒らされた大きな街、遠くに見えるのは荒らされた城……
「ここがあの魔王の住む」
グレイはごくりと鍔を飲み込んだ。
「ほーうここが魔王の住むところか~ さっさと討ち倒して帰るとするか」
この男は分かっていないのか? いくら破壊跡が残っているとはいえ、あの魔王軍にこのような街を作る技術力と財力がある事を。
魔王の根城…… 正直帝国の地方の城と大差ない……
奴ら石は何処で手に入れてきている。
私はというかここにいるある男以外はもっと土人の村のようなところを想像していた。
皆が唖然としている森の中を進んでいたら急にその古風な趣の街が現れたのだから。
ここは魔王領唯一の街ベイドリック。化け物とこの世ならざるおかしな生物しか住んでいないという噂の街だ。
そんな街に向かって…… 剣を振りかざし……
「総員あの町に向かって突撃」




