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なんだこの男

この世界の神は何か問題がある……

ああそれに馬はこの世界にいるのね。

 取り敢えず、鎧を着て騎士団本部のの詰所に向かった。


「遅いですねぇ、カレン殿、一体いつまで待ったと思っているのか」

 そこにいたのは私を陰湿な手で虐める奴らの元締めである、アドミラ帝国騎士団副団長カエサルだ。


「準備に手間取ってしまい申し訳ない……」

 膝を付き、帝国への忠誠の姿勢をとる。こいつらは大抵こうすると黙るのだ。


「で、今回の要件はなんで?」


「ついて来たまえ」

 言われたとおりに副団長の行く道を付いて行く。今回はほんとに要件があるみたいだ。


 籠城とか、そーいった防衛機能が無いくせに無駄にだだっ広い建物の地下へと降りていく。

 地下と言えば牢屋があるところだ。まーた面倒な仕事を押し付けられそうだ。


「あーあ、カレンちゃんが来たぞ~ よーし仕事終わりだ」

 何者かの聴取を行っていた、騎士団の下っ端共が一斉に仕事を止め地上へと上がっていく。

 私の休日はこんなもの達の為に使わなければならないのか……


「カレンちゃん~ 今夜どう?」

 キモっ

 一人だけ残った男の頬に手刀をかます。


「酷いよー」

「残念ながら、私が手を出さないのは貴族権を持った者だけだ。有志の平民上がりであるお前などに特別扱いなどしてやるものか」

 下賤な男を睨みつけると男はそそくさと地上へと逃げていった。


 はぁ……


「で、今度はお前か」

 牢屋に入れられた男に向かって言い放つ。

 返事がない……

 あの男たちの取り調べのメモをみる。


 薬をやってる。物狂いの可能性あり。なんだそりゃー。男はさっきの奴らによほど酷い事をされたのか黙りこくったままだ。


「取り調べを変わる事になったので、最初から聞かせて貰う。よいかな?」

 警戒されて喋って貰えないのは困るので一応優しい感じの声を出す。


「出身は?」

 帝国では見たことも無い、薄汚く異様な身なりをした男に問いかける。


「にほ……」

「なんだ聞こえないぞ。ニホラトスか? あそこは半裸の土人ばかりだと聞くが服を一式揃えられるような国だったのか」

 男は黙りこくる……

 男は口をもごもごさせるだけで、話そうとしない…… いやもしかして偉大なる帝国語が話せないのか。


 グー 

 突如男から大きな音が聞こえる。

「みず……」

 

 はぁ~



-----------------------

「それで少しは喋れるようになったか?」

 飯を買ってきたやったら男は急に元気を取り戻し、飲み食いを始めた。

 まさか演技だったのか?


「いやー参ったよ~ 三日も何も食って無くて。それで君の名前は」

 急に男がべらべらと話し始めた。

「ミツルギ カレンだ」

 

「カレンたーんまじ天使、君の優しさに俺、心を奪われそうになっちゃったよ」

 キモ…

「その呼び方は止めろ、次言ったら殺すぞ」

 腰にある剣の音を鳴らし男を威圧する。


「でお前の名前はなんだ?」

 

 間が生まれる……

「オオタ シュンです」

 急に声を変え馬鹿見たなことをしだす。オオタ シュンとノートにメモする。

 変わった名前だな。


「で出身は?」

「日本、もしくは~ ジパング」

 どこだよそこ。

 


「聞かない国だな……」

「まーテンプレだと、東の果ての国だよ」

 東の果て…… 確かそこはこの世界の7割を支配しているアドミラ帝国にいまだに反抗を続けているライヒ王国の支配しているところではないか。しかもこの男いまだに訳の分からん言語を使っていやがる。

 こいつ敵国の人間か?


「お前どうしてここに連れて来られた?」

 男は何故か腕を組み深く考え始めた。


「気がついたらここにいたんですよ。憧れの異世界召喚されちゃった的な?」

 訳の分からないことを言い出す、やっぱこいつ薬やってんな。

 ちょっと笑みを浮かべて言っているのが余計に腹立たしい。


「そうかー そうかー 気がついたらここにいたんだなー ならば気がついたら首が飛んでましたってのもしょうがないよね」

 剣の音を鳴らす……


「この世界の神によって送られたんだ。ここに……」

 今までの態度と一転し急に真面目な顔をして男は語る。嘘を言ってるようには見えない、やはり薬による幻覚か?


「はぁはぁ、神だと? 我が帝国は遠の昔に神と決別してるぞ。試練を与えるだけの、人一人救えない神など愚の骨頂に過ぎない、我が帝国は神や試練に立ち向かい、人を導く、天の将軍を信仰しているのだが」


「いやいやそんなこと言われても、確かに神にあってきたぞ」

 男は首をかしげる。嘘を付くならもうちょっとましなものをつけよ。


「参考程度に聞いておくが神とはどんな感じの奴だったのだ」


 男は独房の中で立ち上がり、何やら始めた。


「んんwww 私は必然力と運命力を司る神ですぞwww んんwww ちょーっとそこの学校にも行かず家で食っちゃ寝してるだけの若者、憧れの異世界転生をさせてやるから魔王を倒して来るのですぞwww魔王を倒さず家に帰ろうなんて絶対にありえないwwwwww さーぁてこの若者に魔王を倒せる必然力があらんことをwwwwww」

 

「長い茶番だな、で薬はいつからやり始めた?」

 はぁ…… 私の休日を返してくれよ。


「そんな事やってないって、なぁ信じてくれよカレンたそー 俺とお前の仲だろ?」

 何言ってんだこいつ。


「若いうちから薬物なんて感心できんぞ」

 男は妙に大それた反応をする。


「俺の話聞いてた? 俺は魔王を倒さなければならないの。実際この王国も魔王軍の被害にあっているんでしょう? そんなときに俺がカッコ良く登場して、皆から……」

 こいついまなんて言った… 


「まず一つ、ここは王国じゃなくて帝国だ。それに魔王の存在は民たちには秘匿にされている、なぜおまえはそれを知っている? 事と次第によってはお前の命は無いぞ」

 首を手で掻き切る動作をする。


「それは俺が神に選ばれた存在だからかな~」

 うわぁ… こーゆ薬物をやった男の聴取は初めてだ……


「それに一つ言っておきたい事がある。魔王軍はもう2か月前に壊滅しているぞ」

「えっ……」

 目の前の男はぽかーんと物狂いみたく口を開けて閉じる事が出来ないようだ。


「いやほんとほんと、私もこの知らせを聞いたときは驚いた。東のライヒ王国の手練れが魔王軍を再建不可能の壊滅状態まで追い込んだらしい」

 男は驚きのあまりしゃべることすら出来ない。


「ライヒ王国に仕える最強の騎士ダークフレイムマスターと名乗る氷の魔術を使えると言われている男の一行が、魔王幹部、蛇龍メルクリウス、猿王チョーカイ、暗黒騎士モルドレッド、魔女ウェヌス、軍師アレース、悪魔タナトスを討ち取り、魔王領で収奪・略奪を繰り返し、魔王城を半壊させ、魔王に致命傷を与え、幹部の首をライヒ王国に持って帰り、晒首にしたそうだ」


「ダークフレイムマスターて…… ぷっ」

 なぜか男は急に大きな声を出して笑い始めた。


 なんだか無性に腹立たしい。


「しかしだ…… 何故そのダークフレイムマスターとかいう痛々しい男は魔王を殺せたのに殺さなかったんだ?」

 何も出来そうにないこの男がダークフレイムマスターを馬鹿にし痛々しい男呼ばわりだと…… あったことはないが私は敵ながら彼の事を尊敬していたのだぞ。彼の一行のせいで帝国は近年負け戦ばかりだが。

 わずか数名で帝国兵一万と渡り合えるなんて…… 私には到底無理だ。


「彼らは魔王に死なれちゃあ困るんだよ。魔王が死んでしまうとお手軽に国の活気づけが出来なくなるであろう?」

 昔帝国も良くやっていた手だ。魔王だけをあえて残し魔王幹部を全て討ち取り国内を祝賀ムードに変える…… 魔王が魔王軍を再建しだしたところでまた壊滅状態に追い込む。

 

 ただ近年ライヒ王国が技術力、文明、人すべてにおいて異常な成長を見せ、奴らがこれを始めた。しかも帝国より遥かに少ない兵力で…… マヨネーズと呼ばれるものもそうだ、なんだあの油の塊、何故帝国の貴族共はあんなものを好んで食している。帝国はあんな小国に遅れをとっている。

 

 だから帝国の元老院は魔王を討ち取ったということに歴史を書き換え帝国民に魔王軍の正体をひた隠しにしている


「そうかなら一緒に魔王を倒しに行かないか? 騎士ミツルギ カレン」

 男の表情、雰囲気が別人のように変わった……


「拒否する。私はこの帝国を守らねばならぬのだ」

 不思議な気持ちだ、この男は何の差別も偏見もなく、私を騎士だと認めた。


「その前に自分を守る必要があるんじゃないのか?」

 男は真剣な目をしてこちらに訴えかける。


「あの男たちにいいように働かされ、悔しいと思ったことはないのか?」

 そんなものはほぼ毎日感じている。


「ならば俺が魔王を倒すことによってお前の存在をこの国の皆に認めさせてやる。だから協力してくれ」

 もっといい頼み方は出来ないのか? そもそも此奴弱そうだし― 雑魚そうだし― 口だけそうだしー でもこの男の言うことは一理ある。

 私が、帝国が魔王を倒せば、東のライヒとの戦の戦況も良くなるのではないか…… あわよくば私もこの扱いから。

 いいだろう、必然力と運命力の神、これがお前の思し召しだというのなら乗っかってやろう。


「よいだろう、協力してやる」

 この非力そうな男は飛んで跳ねて喜び始めた。


「悪いさっきの奴は忘れてしまった。お主名を何という」

 男は笑みを浮かべた。まるで戦場に赴く戦士の屈託のない笑みだ。


「オオタ シュン」


「ああ、思い出した。オオタか変わった名をしているな」

 男は手をぶんぶんと横に振った。


「いや、カレンのミツルギと一緒でそっちは姓だ。シュンが俺の名前だ……」

 初代皇帝のから名前を与えられたもの達の一族は姓と名の表記が何故か逆になっている…… もしやこの薬物依存者だと思っていた男は…… シュンは初代皇帝に仕えた一族の末裔なのかもしれない。


 確かによく見てみると、痩せ細ってもおらず健康的な肉の付き方をしている。私の眼もまだまだ未熟だな……


「そうか、シュンよ。これからよろしく」

 牢屋の鍵を開けて、喜んでいるシュンに向かって手刀を振りかざす…… シュンはそのまま気を失った。


 すまん許せ、ここから出すにはいろいろと起きてられたら面倒だからな。


-----------------------

「カレンちゃん~ あの男はどうしたの?」

 聴取を終え、屋敷に帰ろうとしたときに遊びから帰って来たのか。酒臭い男共が絡んでくる。


「ああ、あいつは薬物をやっていた。それにおかしなことばかり吐いているので、お前らのいつもやっているように顔面の原型が変わるくらい殴り付けて街の外れに捨てさせておいた。あースッキリしたぞ、この中にそんな趣味を持っている奴が居たら同じ事をしてやっても良いぞ」

 手を握ったり、開いたりと男共の前でそんな動作をする。


「ひゃやー 帝国随一の剣の腕前を持つカレンちゃんにそんなことされたら命がいくつあっても足りないよ」

 酔いがさめたのか、私が怖かったのか、男共は顔を青く染めてそそくさと去っていった。


「お迎えに上がりました。お嬢様」

 グレイが詰所に馬車で迎えに来た。


「すまんなこんな仕事をさせてしまって」

 車内にはシュンがすやすやと眠っている。グレイは深々と頭を下げた。


「当分はここに来ることはなさそうだな」

 車が動き始め、夕焼けに照らされた外の景色が変わっていく。

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