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つかの間の休日

視点があれなだけあって必死に異世界の食べ物とかの名前を考えたりしているが、多分気がつかない間に現実世界の食べ物などを使っちゃうかもしれません。古語とか……


矛盾 設定割れ 誤字脱字 日本語おかしい注意。

 ふう…… 

 銘柄まで当てる事は出来ないが、素人にでも分る高貴な良い香りがする紅茶、そして襲い来る心地よい眠気。

 たまには休みにこんなこともしてみるもんだな。

 琥珀色に淀んだ液体を眺め、五感で紅茶を味わう。じんわりと口の中に広がる柔らかい渋み。

 台の上には見慣れない甘い香りを放ったおいしそうなお菓子が置いてあった。


「グレイこれはどういうものなの?」

 私の座っている椅子から少し離れたところで突っ立っている、古くから付き合いのある、老人としてはがっちりとした体格の持ち主の老人に疑問をぶつけた。


 「西のノース王国から取り寄せた、クランというお菓子で御座います。最近の帝国の御令嬢たちに人気の一品で御座います」

 我が家に古くから仕えて来た、執事はさらりとそう述べた。


 最近のか…… 私にはそー言ったものが全く分からん。流行りの服とか、流行りの…… 女であるのにそれすらも上げられない自分が恥ずかしい。

 こーゆー休日のお茶会(独り)も女らしい事に入るのかな? 

 

 飲みかけのカップをソーサーに戻し、クランと言われる甘い香りを漂わせる、パオン擬きに手を付ける。

 

 程よい焼き加減、サクサクとした食感、そしてふんわりと柔らかい内側。


 甘い…… これが最近の流行りというやつか。ただ甘みだけが念入りに主張されているだけではないか。ほのかに感じる酸味も覆い隠してしまうくらいの甘ったるさ… そうこれが最近の女子の好みなのだ、そう。

 そうそうそうだそうだ、昔よく遊んだアルテラ家の御令嬢が言っておったな。

 思い出される子供の時の光景…


 女の子はあまーいものが大好き好きなんだよー(棒) 何が甘いものだよ、甘さしかないじゃないか、もうちょっとほかの食材を引き立たせることは出来んのか? 私は他のものと協調しあえる上品な甘さが好きなんだよ。

 

 まぁこれが最近の女の子に人気ならしょうがない。私だって最近の女の子でいたい…… いや最近の女の子だ。


 紅茶を一口すする。なんだか屋敷の庭が騒がしいな。


「見慣れぬ服など着て…… ぷっ、カレン殿ここにおられたのですか。急を要する事なので女は着替えが遅いと言われているので急いで支度して早々に詰所にお出向きください。」

 

 まーた何か事件が起きたらしいな。鋼の装備に身を包んだ、中年の騎士であるロズヴェルト卿が用事と嫌味を言いに来た。


「ひっ……」

 騎士である卿は情けない声を漏らす。

 

 はぁ、面倒事は起こさないでくれよ。

「止めろ、グレイ」

「主命とあらば…」

 グレイは悔しい顔をしながらロズヴェルト卿の喉元に当てられた剣を引き、鞘に納めた。


「これだから困る、初代皇帝の頃から王家の剣術指南を仰せつかっているミツルギ一族は従者までもが剣に狂わされているな。ねぇミツルギ カレンどのっ」

 我々ミツルギ家は古くから王家に仕えており、剣豪皇帝と呼ばれた初代皇帝がそうであったようにそれからの歴代皇帝は初代皇帝にあやかり我が家の者に剣術を教えられるのが風習となっていた。この家に仕えるものはたとえ誰であろうと一流の剣術を要求されている。家風と言えば家風なのだがその為女の従者も少ない……

 そして何より初代皇帝から名を与えられた一族は何処も名と姓の表記が逆なのだ。


「我が従者の非礼、当主である私が詫びよう」

「貴方は従者の教育すら出来ていないのですね。それでは亡くなったお父上が悲しまれますぞ」

 この男はまだくどくどと嫌味を言っている。


 私とて好きで当主などやっている訳では無いのだ。

 母は私を生み、力尽きて亡くなった…… それからというもの父は母以外の女性に愛を注ぐことが出来ずに跡継ぎである嫡男が生まれる事は無かった。

 

 だから私は父に…… このミツルギ家という家名に…… 後継ぎとして、男と同等、もしくはそれ以上の育てられたかをした。


 そして私は騎士になった。この帝国で女性の騎士とは珍しい事ではない。ただそれは名目上のだ。ただただお金持ちのお父様がお金と剣と鎧を積んでくれて、剣すら振るえないのに一日で騎士になれるのだ。


 私も出来るならそうなりたかった。本物の騎士になるためには……

思い出すだけでゾッとする、あの男と貧しい地方貴族の二女、三女ぐらいしかいない騎士団学校で壮絶な訓練を受けなければならない。

 我がミツルギ家の風習だ、お金も何も積まずに正々堂々と騎士になる。

 

「申し訳ない。ロズヴェルト卿急いで支度して参る故、先に行っててくれないか」

 作り笑顔をして、卿が帰っていくのをジッと待つ。


 はぁ~


「お疲れのご様子で…… ここはお休みになられた方がいいのでは?」

 心の中での溜息が漏れていた。


「いや、行かせてもらう。せっかくの休みのひと時もなしだ。片付けて置いてくれ」

 グレイは深く私に一礼すると、その周りの者に指示を出し始めた。


 この格好で行くわけにもいかないしな…… 一先ず鎧を着る為に屋敷へと向かう。

 

 ああ、女が騎士やってて悪いか、私だってやりたくてやってる訳じゃないんだ。毎回毎回、文句があるなら剣で勝負を挑めよ……

 こんな毎度、毎度、休日の度に緊急事態があるだの、団長が呼んでいるだの、お前に用がある人がいるだの大したことも無いくせに、呼び出しやがって……

 ふざけるなよ。

 

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