メフィストフェレスの肖像
物理準備室を出た俺たちは、美術部へ入部を検討中の薬師さんに美術室の場所を聞き、二階へと向かって階段を下りていた。
「神月先生、ずっと思わせぶりな態度だったけど、本当に事件について何か知ってるのかな?」
智慧が頭の後ろで手を組みながら言う。
「十中八九、単なる戯言だろう」
と女帝。こんな風にばっさり言ってもらえると、とても安心する。
それにしても、物理準備室に入る前後の、あの胸騒ぎはなんだったのだろう。ひょっとしたら、俺は昔神月夜子に会ったことがあるのに、それを忘れているのかもしれない。
脳内で記憶をさかのぼっているうち、階段を下り終わる。薬師さん曰く「階段を下りたあと、左右に続く廊下を右に曲がって中ほどです」とのことだったので、皆でそちらに歩き出した。
「先生の話は面白かったけど、結局、つかっちゃんの事件に関してはなんにも収穫なしってことかぁ……」
頭の後ろで手を組んだまま、智慧がもらした。白衣の彼女の言葉にすっかり夢中になっていたと思ったが、意外と冷静だ。
「実は彼女が犯人で、俺たちを煙に巻いて楽しんでたのかもしれない」
半分は真面目に、もう半分は冗談まじりで言うと、
「ヴァン・ダインの〈僧正殺人事件〉で、探偵のファイロ・ヴァンスはこんなことを云っている。数学者や物理学者が普段から研究の対象にしているマクロな宇宙は、三十万光年にもなる銀河系の直径を、さらに一万倍にもした大きさだ。一方で、電子を始めとするミクロの粒子は、ミリメートルの百万分の一であるミリミクロンの、さらに百万分の一と云う、極小のラザフォード単位で表される。このような超越的な領域を始め、高度に抽象的で、我々の常識の感覚では到底測り切れない、空間や時間や物質の奇妙で難解な概念に取り組んでいると、そこでは、地球やそこに住む者たちは、ほとんど消尽点に近いものと化す。やがては地上の相対的価値の観念を綺麗さっぱりなくし、人命を限りなく軽んじる気持ちになったとしても、別段不思議ではない、とな」
女帝から予想以上に、しっかりとした応答があった。
「確かに。そんな感じの人ではあったね」
「だが、ファイロ・ヴァンスはこうも云っている。平常から、嗜虐的な態度や、冷笑癖を思う存分発揮していれば、それが抑圧された感情の不断の捌け口となって、情緒のバランスを維持できる。皮肉屋で嘲弄癖のある人間は、急激な殺人衝動を抱きにくい」
「なるほど」
それはなんとなくわかる。
と、そうこうしているうちに、どうやら美術室に到着したらしい。
「ここだな」
女帝が表札を見上げる。
彼女はしばし入り口の前で立ち止まり、全員が扉付近に集まったのを確認した。そして「入るぞ」とアイコンタクトをした後、引き戸に手をかけ、がたぴし鳴る戸を開いていった。
足を踏み入れた途端、絵具の匂いが鼻を突く。
普通の教室より少し広いくらいの部屋の中には、たくさんのイーゼルと木製の角椅子が無造作に置かれており、それらで絵を描いている人が何人かいた。だが、俺たちが入ってきても見向きもせず、キャンヴァスを睨んだまま黙々と絵筆やペインティングナイフを動かしている。
実際にここへ来るのは初めてだという薬師さんは、興味深そうに辺りを見回していた。
縁が彫刻刀や鋸の傷でデコボコになったいくつかの作業台、何枚かの画用紙が入った、古びて歪んだ乾燥棚、先の割れた絵筆や汚れたパレットが大量に押し込まれたゴミ箱、ジャクソン・ポロックを彷彿とさせるような、ところどころ乾いた絵具のこびりついた床、一見うらぶれているようだが、そこがアーティスティックなムードを醸し出している。
教室の後方には、壁に接して、画材や資料らしき本が詰め込まれた横長の木の棚が据えられていた。棚の上には、存在感のある石膏像が七体置かれており、像を木炭でデッサンしている人が一人いる。
「あの並んだ石膏像、なんだか不思議な感じがする……」
妙に心惹かれる光景だった。七不思議の一つである『美術室の血を流す石膏像』が、頭の片隅に引っかかっていたのもあるかもしれない。
隣にいる薬師さんは、石膏像をじっと見つめると、
「アポロ、ディアナ、マルス、メルクリウス、ユピテル、ウェヌス、サトゥルヌス……それぞれ、太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の名前の由来になったり、その星をつかさどったりしている神様たちですね」
「ローマ神話だったっけ。詳しいね、薬師さん」
照れてしまったのか、彼女は少し顔をうつむかせ、もじもじしている。
「いえ、すみません。聞かれてもないのに……」
もちろん、神話の知識があることも凄いのだが、本当に凄いのは、どの石膏像がどの神を象ったものか見分けがつくことである。別の神や人物を象っていても、互いに似たような見た目のものがあったり、同じ神や人物を象ったものでも、像によってガラリと印象が違ったりするので、あのように白一色の胸像だけでは、正直どれがどれかわかりづらい。今言われるまで、俺には兜をかぶっているマルスしか判別できていなかった。
「中学のときに、美術部の活動で像を見たことがあったの?」
「はい。ギリシャ神話やローマ神話に登場される、絵画や彫刻になっている神様は、ひと通り資料集で拝見しています」
「じゃ、じゃあもしかして、ギリシャ神話やローマ神話に出てくる神様は、ほとんど全員見分けがつくの……?」
薬師さんは控えめにうなずく。
そう。これが彼女の〈能力〉なのだ。
ギリシャ・ローマ神話は、登場する神の数が膨大なことで知られている。しかも、全ての絵画や彫刻で同じ見た目をしているわけではない。にもかかわらず判別がつくだけの、凄まじい量に及ぶであろう資料集の内容を、彼女は丸ごと暗記しているわけである。それが可能なのは、自分の目で見た光景を、写真のように鮮明に思い出せるからだ。
この映像記憶能力は、学問的には〈直観像〉と呼ばれている。著名な人物では、万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチ、発明家のニコラ・テスラ、数学者のジョン・フォン・ノイマン、作家のヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテに、三島由紀夫、谷崎潤一郎、画家では、裸の大将で有名な山下清などが直観像を持っていたとされる。直観像は幼少期には普通にみられるものの、ほとんどの人間は成長とともに失ってしまうのだという。
この能力は便利な半面、記憶したくないものまで脳に焼きつき、何度もフラッシュバックしてしまう。また『大切なものは、目に見えない』が彼女の信条であるため、自分の能力に抱く感情は複雑なようだ。彼女はサン=テグジュペリの〈星の王子様〉が好きなのである。
ちなみに、昨日掲示板に張り出された告発文に、彼女が過剰に怯えていた理由はこの能力にある。彼女は、あの告発文の筆跡と松田先輩の筆跡を、脳内で実際に照合し、同じものだと判断したのだ。
「ほう、素晴らしい」
背後で聞こえる女帝の感嘆の声。俺と薬師さんはそちらを振り返った。
見ると、黒板周辺の壁に、額縁に入った絵が掛けられており、宝生さんはそれを鑑賞していた。豊富な種類の絵がずらりと揃っており、ちょっとしたギャラリーを思わせる。
「ボッティチェリさんの〈春〉の模写ですね」
宝生さんの近くに歩み寄りながら、薬師さんが言う。
額縁の下のほうには、ネームプレートが入っていた。
『平成二七年度部長 鳥羽総司』
鳥羽総司……事件について、話を聞いておくべき七人の一人の名がそこにあった。
宝生さんに向かって、俺が口を開きかけたそのとき、
「君たち。一年生ということは、部の見学に来たのかな?」
快いスピント系のテノールヴォイスが鼓膜を揺らした。
視線を移すと、そこには身長が高く、がっしりした体格の男子生徒が聳えるように立っていた。美術部と聞いて、一般的に想起する風貌とはかけ離れた人物だった。
彫りの深い精悍な顔立ちで、太い眉が雄々しく、なんというか全体的に輪郭が濃い。漠然としたイメージだが、まるでミケランジェロの彫刻のようである。〈ジョジョの奇妙な冒険〉にそのまま出てきても違和感がなさそうだ。
「私は美術部の副部長を仰せつかっている、吉山周文という者だ」
鯱張った自己紹介をする彼。
上履きの色は二年生のものだった。彼の説明によると、三年生の部員が部長一人しかいないため、二年生だが副部長を務めているのだという。
「これらは全て、鳥羽総司氏の作品なのですね」
「ああ。ここに掛かっている絵は、我らが部長が新入生のために描かれたものだ。さあ、じゃんじゃん観ていってくれたまえ」
女帝に答え、両手を広げる美術部の副部長。
美術部に入部を考えている薬師さんは、熱心に絵を見つめている。俺もボッティチェリの春という、その作品に顔を寄せてみた。
「この絵、他のより表面がつるつるしてますね」
近くで観て、思ったことをそのまま口にすると、
「ボッティチェリの春は、木板を支持体にしたテンペラ画だからね」
すかさず吉山さんが応じてきた。
「油絵とは違うんですか?」
「ああ。テンペラ画は油絵が発達する前に主流だったものでね。まず、木板に膠で麻布を貼りつけ、石膏を何度も塗り重ねて乾燥させた後、表面を平滑に削って下地を作る。そこに、顔料を卵などで練ったものを使って絵を描くんだ。絵具の作り置きができないし、顔料は有毒で取り扱いには注意を伴う」
「へえ……昔は大変だったんですね」
「そうだね。でも、テンペラ画にしかない個性もあるよ」
吉山さんは、ずいとこちらに踏み込み、
「まず乾きが早いこと。そして、鮮やかで輝くような発色だが、油絵のような重々しさはなく、さらりとしたクリアな色調だ。あそこにある、マティスの〈赤のハーモニー〉とは、逆の味わいだね」
彼は教室の真ん中あたりの壁に掛かった、特別凝った細工の額縁に入れられた絵を指差した。それを見た瞬間、なるほどと納得する。
女性がテーブルに果物の入った器を置いている絵なのだが、画面一杯に描かれた部屋の内部は、壁紙も、テーブルクロスも、こってりとした濃密な赤色で塗りつぶされて、境目がわからないほど溶け合っている。その毒々しいほど甘美な赤は、遠くからでも直接視覚野に飛び込んでくるようだった。
「あれは……」
隣の薬師さんが、聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた。
「テンペラ画は湿気の少ない場所で保管すれば劣化しにくく、数百年前の作品が今も美しい色彩で残っているんだ」
再び熱っぽい調子で語り始める吉山さん。視線はボッティチェリの絵に引き戻される。
「このボッティチェリの春は〈愛〉がテーマになっていてね。中央の少し高い位置に立っているのは、愛と美の女神ヴィーナスだ。同じくボッティチェリが描いた〈ヴィーナスの誕生〉に登場しているのも、この女神だよ」
「ああ、あの有名な絵ですね」
教科書や、TVのCMなどでよく見る、裸の女性が貝の上に立っている絵である。
「ヴィーナスは、先ほどの石膏像の中にあったウェヌスの英語読みです」
そう付け加えるのは薬師さん。
「ヴィーナスの左にいらっしゃる三人の女性は〈三美神〉と呼ばれ、たいてい三人セットで描かれます。左の女神が〈愛欲〉、中央の女神が〈純潔〉、右の女神が〈美〉を表すとされていますね」
中央の純潔の女神は横を向いているが、その視線は画面左端にいる男性に注がれている。この男性はメルクリウス――石膏像の中にあった、水星の名前の由来になった神らしい。
「ヴィーナスの頭上にはキューピッドがいて、純潔の女神に狙いを定めています」
「ほんとだ」
小さな子供に羽が生えた、あのキューピッドが絵の上方で弓を引き絞っている。
キューピッドが放つ矢は純潔に突き刺さり、左側の愛欲を知る。そして右側の美は愛欲の手を高らかに挙げ、その勝利を宣言する。つまり、純粋な女性が他者(この絵ではメルクリウス)を愛する喜びを知ることで、さらに美しくなるということを表しているらしい。
「でもこのキューピッド、目隠ししてるね」
「はい。これは、視覚的な美によってではなく、目に見えない天上の美によって引き起こされる、天上の愛を示しているんです」
「へえ……絵って、いろんな意味が隠されてるんだね」
「そうなんです。でも、私が今言ったことは、この作品が秘めるすごい情報量のごく一部なんですよ」
吉山さんに触発されたのか、彼女はぱっちりとした目をきらりと輝かせて続ける。
「もし、当時のフィレンツェでのプラトン哲学の受け入れられ方や、古代文化を広めるためにメディチ家が果たしていた役割、ボッティチェリさんの芸術的嗜好などに関する情報を得ていれば、全く異なる視点で作品にアプローチすることができます。ルネサンス期の作品は、鑑賞者の知識に応じて、語りかけてくる言葉を変えるんです」
「こ、この一枚の絵に、そこまでの奥深さがあるんだ……」
ファンシーな水彩画やパステル画、温かみのあるクレヨン画、色鉛筆やコピックによる可愛らしいイラストを得意とする薬師さんだが、こういった名画への広範な知識もあるのだ。
「君、ずいぶん詳しいね。画家志望なのかい?」
吉山さんが薬師さんに問いかけた。
「い、いえ、そういうわけでは……」
「中学校では美術部に?」
「はい。えっと……いちおう三年間在籍していました。透明水彩と色鉛筆、それから、パステル、クレヨン、コピックをよく使っていました」
「ふむ。好きな芸術家は誰なんだい?」
「そ、それは……」
言いよどむ薬師さん。しかし、この部に入部を考えているなら、黙っているわけにはいかないと思ったのだろう。おそるおそる打ち明けた。
「……ビアトリクス・ポターさんです」
吉山さんは一瞬驚いた表情を浮かべた。だが、やがて優しい笑みでうなずく。
「そうか……君、〈絵本〉を描きたいんだね」
「……はい」
「とても素敵だ」
どうやら、理解のある人だったらしい。俺もほっとした。
ビアトリクス・ポターは、コナン・ドイルやルイス・キャロルも活躍した、ヴィクトリア朝の絵本作家であり、〈ピーターラビット〉の生みの親である。
薬師さんは昔からうさぎが大好きで、小学生時代には、クラスメイトだった俺と生き物係を務め、一緒にうさぎの世話をしていた。今でもあの頃のことを思い出すと、胸の奥がじんと温かくなる。
「ここにあるのは油絵ばかりだが、何かの参考になるかもしれない」
吉山さんに従い、六人で壁に沿って歩きながら、様々な絵を観ていった。
ルーベンスの〈聖母被昇天〉――フランダースの犬で、主人公のネロがずっと観たいと言っていたのは、この絵だという。
フェルメールの〈真珠の耳飾りの少女〉――ポワンティエと呼ばれる点描技法で光を表現しているのが特徴らしい。この絵でも使用されている、現代の漫画ではおなじみの、目に人為的なハイライトを入れる手法は、フェルメールが最初に行ったのだとか。
グルーズの〈少女の頭部像〉、ターナーの〈金枝〉、ミレーの〈オフィーリア〉――それぞれ、夏目漱石の小説〈三四郎〉〈坊っちゃん〉〈草枕〉の中で言及されている絵らしい。
そういえば、坊っちゃんの釣りのシーンで、赤シャツと野だが、島に生えてる松がターナーっぽいだのなんだの言ってたな。
その他、ルノワールの〈イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢〉、モネの〈睡蓮〉、ゴッホの〈夜のカフェテラス〉、セザンヌの〈サント・ヴィクトワール山〉、スーラの〈グランド・ジャット島の日曜日の午後〉、ルソーの〈蛇使いの女〉、ダリの〈記憶の固執〉と、見覚えのある名画が続いた。
「ルネサンスから、バロック、ロココ、ロマン主義、ラファエル前派、印象派、ポスト印象派、フォーヴィスム、素朴派、そしてシュルレアリスム。これだけ様々な画風を、マチエールも含めてここまで正確に再現するなんて……」
とても感動している様子の薬師さん。彼女がそう言うということは、本当にとんでもない再現率なのだろう。
マチエールとは、一言でいえば絵の表面から受ける立体的な印象のことである。テンペラ画のように平坦に絵具や下地材を塗ることで絵肌に滑らかさを出したり、インパストと呼ばれる、厚塗りした絵具によって生じる表面の凸凹を利用した表現技法で変化を与えることが多い。これはネットの画像や写真で絵を観るだけではわかりにくいところだ。
「――私はこれらの絵のオリジナルをいくつか観た経験があるのだが……ここにある模写は、サイズこそ違えど、本物だけが発散するような空気や情念、美そのもののもつ超越性を感じさせる強い説得力がある」
一通り鑑賞し終わり、絵画の世界に没入していた女帝が沈黙を破った。
「なるほど。君、面白い表現をするね」
彼女の言葉に興味を惹かれたらしい美術部の副部長。
「今まで色んな絵画を観てきたみたいだけど、お気に入りの画家はいるのかな?」
「土佐派と琳派の画家全般、それ以外では伊藤若冲と円山応挙です」
「君、通だね」
吉山さんの目つきが明らかに変わった。
「私も土佐派の描く源氏物語の絵は好きだよ。それに、アール・ヌーヴォーのクリムトが昔から好きなんだが、彼は琳派からの影響をあからさまに受けているね。そういえば、今年はちょうど、鷹峯に本阿弥光悦が芸術村を作ってから四百年だ。京都のあちこちで、琳派誕生四百年を記念した催しが計画されていると聞くよ」
――その後二人は、本阿弥光悦の才能の幅広さと深さ、土佐派が浮世絵に与えた影響、伊藤若冲の動植綵絵と円山応挙の雨竹風竹図屏風についてしばらく語っていたが、話題は徐々に、事件に関係する方向に誘導されていった。
「これらの模写を描かれた、鳥羽部長はどちらにいらっしゃるのでしょうか」
「今、あちらで石膏像のデッサンをなさっているよ」
指を揃えた掌で、部屋の後方を示す吉山さん。
どうやら、木炭で石膏像を描いていた人物は、この部の主だったらしい。
宝生さんは、部長と話をするのは可能かと問い、可の返答を得た。
「もう一つ、宜しいでしょうか」
「なんだい」
「法水大我氏に個人的な用談があり、その目的もあってここを訪れたのですが、この部屋にはいらっしゃらないようですね」
確かに、周りを見渡しても、三年生の生徒はデッサンをしている部長以外見当たらない。
「ああ、法水さんか。法水さんは確かにこの部屋にお見えになったが、部長と少しお話しされた後すぐに出ていかれたよ」
また入れ違いか。
今回も彼との面会を後回しにし、俺たちはひとまず鳥羽さんの元へと向かうことにした。