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赤の王国  作者: 空想S
8/8

出会い


ーガヤガヤー


まだ朝早いというのに、既に街の人達が

なにやら準備をしていた。


とても楽しそうに笑う人々。

私はその賑わう人々の顔を見ながら、

中心部の方へと向かった。



あの森へは、

この国を出て右手にある道を進めばいい。

反対の道を行くと、メディおばさんの家へとたどり着く。



私は無事に国を出ると、目的地へと目指した。



木々生い茂る森を抜けると、1本の大きな木が見える。


それが私のお気に入りのあの場所。


その木の数メートル先に行くと

高い崖となっているので危険だが、

そこまでは、平気。


私はその大きな木の下までつくと、

ハシゴを使って木の上へとよじのぼった。


このハシゴは、私がこの木を見つけた時から

つけられていたもので、誰がつけたのかわからないが、

私はこのハシゴのおかげで、この景色を見れたことに

感謝している。



ーキラキラと輝くその海は

いつ何度来ても、私の心を安らげてくれる。



朝の冷たく心地いい風が、海のやさしい潮の香りを乗せて、

私を包み込むようだ。


目を閉じて、その風を感じる。



どれくらいそうしていただろうか、

あやうくまた寝てしまいそうになった。



「そろそろ戻らなきゃ」



私はまたハシゴを使って地上におりた。






街に足を踏み入れた瞬間、¨ゴーン¨と鐘の音が響いた。

どうやら始まったようだ。


私は急いで自宅を目指した。


中心部を通り過ぎ、ライド街の方へと走る。



「リン!リン!」



遠くで私の名前を呼ばれた気がして前を見ると、

トウマがぴょんぴょん跳ねて私を呼んでいた。



「トウマ?!」


トウマの元にたどり着くと、

「は、早くしないと王様が来られるよ!」


「えっ、でもさっき始まったばかりじゃ・・・」


「さっきの鐘は手前の街を視察する合図さ!

次はこのライド街だ!」


「ほ、ほんとに!?」



「まわりも見てみなよ」



そういわれて辺りを見渡すと、

ライド街のいくつかの家の人が外に出て、

早くも家の前で跪く人の姿があった。



「でも間に合ってよかったよ。

僕も家に戻って支度しないとだから、行くね」



「えぇ、教えてくれてありがとう。」


私はトウマと別れると、家の中に入った。



「ただいま、お母さん!」



私が玄関からそう言うと、

ひょこっと洗面所の方から母の顔がみえた。


「間に合ってよかったわリン」


「な、なにしてるの?」


「何って、身だしなみを整えてるのよ。

王様にお姿を見られるんだもの。

少しは気を使わなきゃね」



「別にいいじゃない、それよりもう時間がないよ」



「も、もう少し・・・」


母がそう言いかけると

遠くでまた¨ゴーン¨と鐘の音が聞こえた。




「ほ、ほら!母さん急いで!」



そう急かすように叫ぶと、

「は、はいはい!」と

母が奥からでてきた。



2人で玄関の外に出ると、

どうやら他の住人はもう玄関の前で跪いて

待っていたようだ。


私たちも玄関の前で同じように跪く。


「あ」


そこで気が付いた

森に入ったせいで、

赤い私の靴がとても汚れてしまっているのに。


母さんもそれに気づいたのか

すこし青ざめた顔をしている。


王様が来られる前に少しでも・・・

そう思って手で靴についた砂を落としていくが、

既にパカ、パカ、と数頭の馬が歩く音が

近づいてきているのが分かった。



(ち、近い・・・)




そしてついに私たちの前まで来た。


(こ、このまま通り過ぎますように)



そう思ったが、予期せぬ事が起きた。


「そこの者」


透き通ったその声の主

それは昨日耳にしたリオ王のものだとすぐに分かった。


「そこの赤い靴を履いた少女よ

顔をあげよ」


(これって・・・私・・・だよね)


私はそのままゆっくりと顔を上げた。



目の前にははっきりと

リオ王の姿がみえた。


美しい、その姿におもわずたじろいだ。


「ふむ。」


ジロジロと私の体見たかと思えば、

「もう下がって良いぞ」と一言言って、

先へと進んだ。


一体何だったんだろうか。



私はそのまま言われた通り、

王が過ぎるまで跪いた。





それからまもなくして、

鐘の音が3回鳴った。


終わりの合図だ。



ふう。とため息が零れる。



「母さん、びっくりしたわよ」



隣で膝についた砂を払いながら、母が言う。



「それはこっちのセリフよ」


「でも何事もなくて良かったわ」


これからまた宴が始まるから、外は騒がしくなるだろう。




「さっき隣のおばさんに聞いたんだけど、

今日もいろんな所で催し物があるみたいよ

貴方も見てきたら?

先にその靴を綺麗にしてからね」


そういうと母は家から濡れたタオルを持ち出してきて、

私に渡した。



「でも1人で行くなんて・・」


私は渡されたタオルで靴を拭きながら答えた。


「僕が一緒にいくよ」


そう聞こえて振り向くと、後ろには

トウマの姿があった。



「トウマ?!」



「いいじゃない、ありがとう、トウマ君」



「いえいえ!僕も1人で回るのは寂しいと

思ってた所ですから!」



「わかったわよ・・・」


「じゃあ、行こうか」


私たちは家から離れて並んで街を散策した。


数多くでている露店には、

大きな果物の形をしたキャンディだったり

甘いジュースを売ったり、

珍しいアクセサリーを売ってたり。


小さな子供から大人まで

凄く楽しそうにしていた。



「ねぇ、トウマ。

ずっと気になってたんだけど、うちの両親とは

どういう繋がりなの?」



「あー、君の両親には昔凄くお世話になったんだ。

今もだけどね」



「ふーん、」


お世話に・・・か

詳しく言わないという事は、

トウマにとっては言いにくい出来事だったのだろうか。



「ねぇ!見てよあれ、」


トウマが指さした方を見ると、

中心部の方で、人だかりができているのが見えた。



「なんだろう?」


「見に行ってみようよ!」



人が多いせいか、なかなか何があるのか見えない。


うーん、と身長の低いトウマがぴょんぴょん跳ねる。


「そんな事したって見えないわよ。」


「むー」




二人で立ち尽くしていると、

何故か人だかりがゆっくりと散らばって行く。



「凄かったねー!」

「あんなの見たこと無かったよ」



人だかりが去っていった後、

その注目を集めていた人物が残った。



「ん?」



赤と黄色、緑色のストライプの模様を

ぐるぐると巻いたへんてこなデザインの帽子を

被った1人の青年がいた。


どうやら道具を片付けている最中みたいだ。


「おや、まだいたのかい?

今日はもう終いだよ。」



「貴方は・・・ここで何をしてたの?」



「ただのマジシャンさ。」



「さっきの人だかりで貴方がマジックをする所を

見れなかったの。

もしよければ少し、見せてもらえない?」



私がそういうと、そのマジシャンは

少し考え込んだ後、



「じゃあ1つ特別に、あるマジックを見せてあげよう。」


と、快く承諾してくれた。



彼は自分の着ていた黒いコートのポケットから、

一つの風船を取り出した。


彼はその風船を口に当てると同時に

一瞬で風船を膨らますと、

手早く入口をくくって塞ぎ、キュッキュッと風船で、

何かを作り始めた。



「ウサギ?」


彼が作ったものはどう見てもウサギだ。


「そう。見ててね」


彼はそういうと、手に持っていたウサギの口に

ふうっ、と息を吹きかけた。


すると、ピクン、とウサギの耳が動いた。

そしてすぐに鼻もヒクヒクと動き出した。


「わぁ!」

トウマの目が輝く。


マジシャンのお兄さんはニッコリ笑って、

「行っておいで」と一言。


すると手の中のウサギは、手元から離れ、

なんと真上へ翔けるように上がっていった。


そしてウサギは宙でくるんと、一回転すると、

そのまま¨パン!¨と破裂して、

その後にはひらひらと綺麗な花びらが空を舞った。



「す、すごい」


マジシャンのお兄さんは満足そうに微笑んだ。


「種も仕掛けもありません・・・ってね♪」



「次はいつするの?」


「うーん、いつかなぁ。

早ければすぐにでもまた会えるよ。

僕はマジシャン。

求められればショーはどこでもやるからね。」



そういうとお兄さんは、

カチッとバッグの留め具を締めると、

ゆっくりと立ち上がって

「それじゃあね」と城の方へと向かっていった。





「あのお兄さん、お城でもショーをするのかな?」


「あれだけのマジシャンだもの。きっとそうよ。」



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