公務員・早瀬央太の場合
初めて小説を書くので、遅筆ですが温かく見守ってもらえると嬉しいです。
死というのは皆に平等である。
それは僕という人間が突然死ぬことになったのかを少し時間をさかのぼって話していこう。
公務員試験をパスして、安定の公務員になって2年が過ぎた。
5時の定時に上がれると想像していたのだが、現実はそんなに甘くなく、早くて7時、遅いと12時を回ることもあったりする。
ブラック企業じゃないかと思われるかもしれないが、それでも公務員なのである。
もう一度言う、信じられないことにこれでも公務員だ。
安月給だなと思いながらも働かなくては食っていけない。
そんな早瀬は給料の使い道は、つまり趣味はネットゲームだ。
いわゆる課金をしてゲームを楽しんでいた。
目当ての武器やアイテムがあれば月2万までという堅い制限の下で課金することも厭わないと思っていた。
ネットゲームは毎日ログインすることで、いつも会う人とだんだん馴染みができてくる。
ギルドに所属すればなおさらだ。
仕事が遅くなればそれだけゲームをする時間が減ってしまうのだ。
だからできるだけ早く帰りたい。
今日もゲームにログインして裏ではゲームのWikiを開いて、さらに関連の掲示板も開いておくことも忘れない、ゲーマーの鏡だ。
「ばんわー」
「ばんわー^o^」
「タオさん、今日は遅かったですねー」
「仕事が長引いて、でも10時からのクエに間に合いました」
「まだ15分まえですよ」
このゲームのクエストは10分から30分が目安だ。
早瀬たちは10時から始まるクエストをジャスト10時から受けたい。
そのためここでクエストを受けてしまうと10時に間に合わない可能性が出てくるのだ。
「そうですね。ちょっと半端な時間ですね。適当に掲示板チェックしてきます」
「いてらー」
「いてらー」
そんなチャットを飛ばして、ゲームの掲示板を見に行った。
【閲覧注意】画面に釘付けになった人続出【自己責任】
http//xxxxxxxx
ゲームと関係ない内容の話題が書かれていた。
閲覧注意、自己責任と書かれているのは、見てみろ、そして恐怖におののけと挑戦状だと早瀬は理解している。
そして軽い気持ちでそのURLをクリックした。
別窓が開いて下から上へ高速でアルファベットが流れていく。
(どうせこの後突然お化けの映像とかに代わるんでしょ。わかります。本当にどうもありがとうございまいした。)
今か今かと待ち構えているのだが、相変わらず下から無意味なアルファベットの羅列が流れてくる。
(えっ?まさか、それすらも見越した釣り?結局最後まで見たけど何もありませんでしたってパターン?)
1分くらい見ていたが何も起こらない。
もういいやと思いマウスカーソルを動かそうとしたら体が動かないことに気がついた。
目は画面を凝視している。
椅子に座ったまま金縛りになってしまったのだ。
いつの間にかアルファベットは0と1だけになっている。
(え?え?ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイ!!!なんかおかしい!)
パソコンの画面を凝視したまま体は硬直して一切動かない。
ブラウザを閉じようにも指が動かないのだ。
体が動かないことにパニックになっていると、そのまま画面いっぱいに「DEATH」という文字が出た。
途端、世界が斜めになっていく。
早瀬央太は椅子から崩れ落ちていく。
それと同時に意識が途絶えた。
白い部屋。
早瀬が起きたのは自宅では無かった。
記憶をたどると10時のクエストをする前に変な画面を見ていたことを思い出した。
そうだ金縛りにあって、そして椅子から落ちたんだ。
少なくても病院ではない。
周りを見ると壁しかない10メートル四方ぐらいの白い部屋にいた。
天井は電球の明かりもないのに明るい。
そして白い。
あまりに現実感がない。
夢?
壁伝いに歩いてみて、ドアや窓がないことを確認していると、突然声がした。
「ようこそ僕の箱庭へ。歓迎するよ」
「………」
「あれ?聞こえてないかな?マイクのボリュームは入っているけど…」
「聞こえますか?大丈夫ですか?」
(夢だよねこれ)
「もう一度聞くよ?聞こえますか?聞こえたら返事してー」
「え、あ、はい、聞こえます」
「じゃあもう一回、ようこそ僕の箱庭へ。歓迎するよ」
声変わりしていない少年のような声だ。
「あぁ、どうも、ここはどこですか?」
(夢だから覚めればそんなこと関係ないのだけど、一応聞いておくか)
「そうここは僕の箱庭に行くための門さ」
「………」
「僕の箱庭に行くためのチュートリアルの場所として作ってある空間だからね」
(ゲーム脳ってやつか、自分もぜい分と頭の悪い夢を見ている。)
「まず、インベントリの説明だ。コマンドインベントリと言ってみてくれる」
(付き合ってやるか、どうせ夢なら楽しんだ方がいいし)
「コマンドインベントリ」
空中にアイコンが見える。
そこに空白のスロットが表示されている。
画面で見るのはあるが、空中に表示されるのはなんか違和感がある。
「つぎはコマンド装備と言ってみて」
言われるままに復唱する。
装備画面が空中に現れる。
装備しているものは「布の服、布のズボン、ナイフ」
(初期装備はどんなゲームでもこんなものか)
「さらにこっからは重要!コマンドステータス」
コマンドステータスと言いステータスを開いてみたが、全部空白だった。
「全部空白だよね?ここで設定していく必要があるんだよ。それでは設定しよう!」
(妙なところで凝った夢をみているな。確かにゲーム攻略Wikiは隅から隅まで読みこむタイプだけど)
STR、MAGなど見知った項目を振り分けていく。
さらに顔や体のパーツを決めていく。
もちろん男だ。
ネカマなんてかっこ悪いからな。
そして年齢も要求されたので今現在の年齢を入力する。
24歳と。
全部の項目を入力し終わったとき声がかかった。
「終わった~?これで最終決定でいい?2度目の人生なので変えてもいいんだよ?」
「………?2度目?まさか夢でしょ」
「いや、夢じゃなよ。君は死んでいるはずだから」
頭の処理が追いつかない。
「死ぬ夢なんて結構あるからな、高いところから落ちてビクンとかなったり、溺れそうになって起きたりなんてよくある事さ」
「いえ、あなたを殺したのは僕。お詫びに僕の箱庭に招待したんだよ」
「自分は死んだの?」
「そう、ここにいるということはきっと死んだということだよ。殺人ソフト、マインドクラッシャーに引っかかり、きっとどこかで死んでいるはず。あのプログラムは自分で試せないという欠陥があるからベータテストとして誰かに試してもらう必要があったの。僕は死にたくないからね。テストするにしても、私の周りで人が死んでいてはいずれ怪しまれるでしょ?そこでどこのだれか解らない様に、赤の他人にベータテストをしてもらったの。そして、見事に君は死んだということ。そのお詫びに僕の箱庭にご招待したんだよ。さぁ第二の人生のスタートだ!」
「何を馬鹿な。そんなことがあるわけないでしょ。死んでも生きているなんて、あり得ない。俺はパソコンをしていて、急に眠くなって、そして夢を見ているのさ」
「そう!君はパソコンをしていた。そして僕の作ったプログラムを凝視していたはず。アルファベットの羅列に釘づけになり、そして動けないまま死んだはず、まぁ死ぬ前の記憶は曖昧になっているかもしれないけど…」
確かにこの声の言うとおりの行動をしていた記憶がある。
「マジで?」
「マジで!」
「じゃあ、俺の体は?元にもどれるのか?」
「無理だよね~死んだ人間を生き返らせるなんてできるわけないでしょ。ゲームじゃないんだから。家族と一緒に住んでいればきっとすぐ見つけてもらえるだろうし、一人暮らしだと腐乱臭がして、誰かが気がついてくれるまで放置でしょう、きっと」
「そんな、今すぐ元にもどせよ!」
「だから無理だってば。お詫びにこうして僕の箱庭に招待して上げたんじゃないか。栄えある第一号ですよ。喜んでください!」
なんだか分らなくなって、混乱して、今までのことを思い出していると、この天の声のことを無視してしまっていた。
そして気がついたときにはゲームがスタートしていた。
コメントや励ましの言葉があるとやる気が起きてきます。
どうかメンタルの弱い作者を励ましてください。