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外伝1

 ガリア帝国、メイラックス男爵領。

 土地は広大であり、西は山に囲まれ他は豊かな草原が支配しているだけの領。

 御年52歳

 領主であるエラーケン・メイラックスは山積みの問題に頭を抱えていた。


 エラーケンは元々、炎を操る優れた魔法使いとして帝国に抱えられ、魔法兵として大に活躍していた。


 この度隣国であるゼーガ国との戦争により、魔法で数多の敵兵を消し炭と化した武勲により男爵の地位を与えられ、この領を任せられたのである。


 正確に言えば厄介払いだ。

 帝国は元々強大であり、攻めることも攻められることもない争いとは殆ど無縁の地だ。

 そして長年帝国の悩みであったライバルである隣国との問題にも終止符が打たれ、兵は毎日の訓練と巡回により暇を持て余していた。


 エラーケンははっきり言って規格外であった。百人に一人いるかいないかと言われる魔法の使い手、その並の魔力の何十倍ほどの魔力をその身に宿していた。


 そんな力を持った一人の男は、平和となった国では最早恐れの対象でしかない。

 他の貴族が彼を利用し何かをしでかすかもしれない。


 その前に、彼に男爵という適当な地位を与え辺境の領へと追いやったのだ。

 兵からいきなり男爵などという反発の声も大きかったが、皇帝の一声によってそれも収まる。


 エラーケンが任された領は土地が広いだけで何もなく、特徴があるとすれば魔物が多いだけ。

 彼が力を振るい、開拓でも進められたら良かったで終わる程度。




 そんな背景からエラーケンは領運営をしていた。己の力により魔物を狩り、私兵を育て、魔物が支配していた土地を農地として耕し。


 何とか領民が不足なく暮らせる程度にはなったが、問題はまだまだ山積みである。


 その問題の一つに、西にある幻惑の山と呼ばれるものがあった。

 未開拓の土地であり、何があるのかは未知数。

 だがそこへと足を踏み入れた冒険者と呼ばれる者達によれば資源も豊富であり、鉱物も期待できるかもしれない。


 だが帰ってくる者の数は少ない。

 そして帰ってきた者たちの顔は恐怖に染まり、口を揃えて同じことをいう。


「自分に殺されそうになった!」


 エラーケンはそれを聞いて、はて?

 と思ったが、心当たりが一つあった。


 ドッペルゲンガー。


 帝国の情報から知ったことであるが、そう呼ばれる精霊が今ではあの山にのみ存在している。


 精霊の中でも膨大な魔力を持ち、他の生物や物質を模倣して戦う災厄。


 その精霊の住処ともなって、幻惑の山と呼ばれている。

 正式には、ボルド山という名があるのだが。


 冒険者ギルドと呼ばれる機関の中では魔物等の脅威に位が付けられているが、その中でもドッペルゲンガーの位は一番上から三つ下の七。


 それは、自らが模倣されれば絶対に勝てないとされているから。

 しかし二人で挑むなどの対処をすれば倒せるという理由でのこの位だ。


 エラーケンは考えた。

 もしもこの山を攻略できたのならば。


 山積みとなった問題の中の、いくつもが瞬時に解決できるかもしれない。


 そして、己の力と、私兵の力を合わせれば。


 エラーケンは希望をいだきつつ、幻惑の山へと足を踏み入れて行った。


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