Special Blend ~ ごしゅじんとはじめての朝ごはん(3/3パート)
※第2パートからの続きです
お外からチュンチュンという鳥の鳴き声が聞こえてきた。
うーん、まだ起こさないでほしいのな。もう少し寝ていたいのにゃ……。
あと五時間は寝たいのな……。
布団にもぐって、うつらうつらしながらベッドの上にあるはずの大事な居場所を探す。
でも、見つからない。
あれっ? おかしいのなっ。たしかに昨日はここにあったはずなのなっ。
ごしゅじん、どこいっちゃったのな……。
不安とドキドキがいっぱいのままベッドから起き上がろうとすると、部屋の扉がガチャリと開いた。
「あ、起きてた? おはよう、ニャーチ」
ごしゅじんだ!
ベッドからぴょんと飛び起きて、ニャーチの居場所にすかさず潜り込む。
「どっかいっちゃやーなのっ! びっくりするのなーっ!」
「ごめんごめん。ちょっと顔を洗いにね。えーっと、朝ごはんの用意がだいたい出来たんだけど、ここに運んできた方がいい? それとも一階に来る?」
ごはん!
ごしゅじんのご飯はおいしいって決まってるのなっ!
想像しただけでお腹がきゅるるるーっと鳴るのなっ!
「ごしゅじんと一緒ならどこでもいいのなーっ」
「はいはい、そうしたら下で食べよっか。じゃあ、先に着替えて、それから一緒に下にいこうね」
「わかったのなっ! すぐにきがえるのなっ!」
お着替えをすませたら、ごしゅじんと一緒に階段を下りる。
くんかくんか、おいしそうな匂いがするのなっ!
「ごっはんーっ、ごっはんーっ、おーいしー、ごっはんーっ」
「キッチンに用意してあるから、最後の仕上げだけしてこっちに運んでくるね」
「それはやーなのなっ! 一緒にいくのなっ!」
だって、ちょっとでもごしゅじんといたいのなっ。
ごしゅじんも、もうちょっとその辺のところを分かってくれるとうれしいのなっ。
そんなことを考えてると、ごしゅじんがぽむぽむと頭を撫でてくれた。えへへ。
「はいはい、じゃあ、こっちにおいで」
「はいなのなーっ!」
キッチンは、おいしいの匂いがぶわっといっぱいだった。
お腹の虫さんも、ぐぅーーって激しく主張する。
「ごしゅじん、はやくーっ! もう待てないのなーっ!」
「はいはい、すぐに用意するからそこで座って待っててね」
言われたとおりにキッチンの脇にあったテーブルに腰を掛けると、ごしゅじんがテキパキと朝ごはんの支度を始めた。
キリッとした表情で卵を割って、フライパンでじゅわーっとさせてる姿はとってもかっこいいのなっ。
その姿にしばらく見とれていると、ごしゅじんはあっという間に朝ごはんの支度を終わらせて、テーブルに運んできた。
ニャーチとごしゅじんの前に置かれたお皿の上は、それぞれ三つの料理が並んでる。
えーっと、この赤いのはトマトだよねっ。
それと、こっちは目玉焼き。
あとにもう一つはエスピナーカとトシーナかにゃ?
どれもおいしそうなのなっ!、
二人の真ん中に置かれた籠の中には、黄色みがかったまんまるのトルティーヤが入ってる。
トルティーヤはこんがりと焼かれているみたいで、マイスの香ばしい香りがお鼻をこしょこしょしてきた。
どれもとっても美味しそうにゃ! 早く食べたいのなっ!
「ごっしゅじーんっ、もう食べていいのなっ? 食べていいよねっ?」
「はいはい、じゃあ、食べましょうか。手を合わせて……いただきますっ」
「いただきますなのなーっ……、って、いただきますってなんなのなっ?」
「うん、食事の前のご挨拶だけど……、あれ? これは覚えてなかったの?」
「うにゃ、なんか自然に口から出たからちょっとびっくりしただけなのなっ。でも、いい言葉な気がするのなっ! もう一度いただきますなのなーっ!」
なんか大事なことがあった気がするけど、おいしそうなごはんの前には無力なのなっ。
細かいことは気にせず、早速いただくのなっ。
えーっと、まずはこのトマトさんから。
真っ赤に熟したトマトは、とっても甘くて、ほんのちょっとだけ酸っぱい。すごく味が濃くてとっても美味しいのなっ!
次は目玉焼き。
あ、ニャーチが大好きな半熟なのなっ。さすがごしゅじん、良く分かってるのなっ。
お塩とこしょうで味付けされた目玉焼きは、黄身さんのとろとろと、ぷるぷるの白身さんがとっても良く合ってる。
エスピナーカとトシーナは、どうやら一緒に炒めてあるみたい。
こっちもお塩とこしょうで味が付いてて、うまうまほくほくなのなっ
「どう?」
心配そうな顔でごしゅじんが顔を覗き込んできたけど、それには及ばないのなっ!
「おいしいのなっ! ごしゅじんのごはんは天下一品なのなっ! 特にこの目玉焼きの半熟具合は完璧なのなっ!」
「よかったー。“駅長”さんには何でも使っていいって言われてたんだけど、さすがに“こちらの世界”のキッチンは勝手が違いすぎたから、上手く行ったかどうか心配だったんだ。本当はもうちょっといろいろ使ってみたかったんだけど、最初だからこれくらいで許してもらえる?」
「ふにゃ? とっても美味しいのなっ!」
お塩とこしょうだから味付けはシンプルだけど、どれもとってもおいしいのなっ。
あ、そうだ。イイコト思いついたのなっ!
「きっとこうするともっとたくさんおいしいのなっ!」
トルティーヤの上にトマトを乗せて、その上にエスピナーカとトシーナも乗せて、最後に半分になった目玉焼きをのっけて、くるっと巻く。
「おー、トルティーヤロールだね。こっちもそうしようかな」
「そしたらごしゅじんの分もつくってあげるのなっ! お皿をこっちによこすのなっ!」
「はいはい、じゃあ、お願いね」
ニャーチの分と同じように、ごしゅじんのも巻き巻きする。
くるくるまきまき……、うん、上手にできたのなっ。
「どーぞっ、召し上がれなのなっ!」
「ありがとう……。うん、おいしいよっ!」
えへへー。ごしゅじんに褒められるとうれしいのなっ。耳がくるんってなるのなっ。
そうだ、ごしゅじんに何か言わないといけないことがあった気がする。
えーっと、なんだっけ? なんかとっても大事なことな気がするんだけど……。
そのとき、ふと耳元に何か声が聞こえてきた気がした。
そうだ、思い出したのなっっ。
「ごっしゅじーん」
「ん? どうしたのっ?」
「これから毎朝、今日みたいなおいしい朝ごはんを食べさせてほしいのにゃーっ!」
ごしゅじんは、一瞬きょとんとしたけど、すぐににこーっと笑顔になった。
「分かりました。これからも腕によりをかけて作るね」
わーい! これで毎朝おいしいがいっぱいなのなーっ!
お読みいただきましてありがとうございました。
書籍発売を記念してのスペシャルバージョン、ニャーチ視点でのプロローグ的物語とさせていただきました。
いかがでしたでしょうか?
おかげさまをもちまして、本日、無事に書籍の発売日を迎えさせていただくことが出来ました。
さらには、コミカライズまで決まり、これから作業が本格化することになります。
これもひとえに皆様のご笑読ご声援の賜物でございます。
これからも皆様のご期待に添えるよう、そして盛大にお腹が空いていただけるよう引き続き飯テロにまい進して参りたいと存じますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
また、活動報告にて書籍発売記念のプチ企画についてお知らせしております。
合わせてご覧いただけましたら幸いです。
それでは、引き続きご笑読いただけますようよろしくお願い申し上げます。