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Special Blend ~ ごしゅじんとはじめての朝ごはん(1/3パート)

※今回は『ニャーチ視点』でのお話です。

 いつもと人称・視点が異なりますのでご注意ください。

===

 いらっしゃいませこんにちわなのな!喫茶店『ツバメ』へようこそなのなっ。

すぐにお席を用意するから、ちょっとお待ちくださいませなのなっ!

 ―― ごっしゅじーん、ご新規一名様入りますなのにゃーっ!



 ニャーチはニャーチなのな。名前は……うん、さっき言ったよね?

 どこで生まれたかは分かんない。

 というか、そもそもここはどこなのにゃ? あと、ニャーチはニャーチだけど、ニャーチって誰なのなっ?


『ここはハーパータウンに向かう列車の中、ニャーチちゃんはニャーチちゃんですよ』


 どこかから声が聞こえてきた。知らない人、教えてくれてありがとうなのなっ!


 安心したらまた眠くなってきた。

 いっぱい寝てた気がするけど、眠たい時には寝るしかないのな。


 どこか納まりがいいところ……、あ、ここがちょうどよさそうななのなっ。

 

 ポカポカで、トクントクンしている。

 それに、なんかおひさまみたいないい匂いがする。


 わかったのなっ! きっと、ここがニャーチの居場所なのな!

 だから、とりあえずお休みなのな……。




―――――




「たっくーん、こっちこっちー」


「はいはい、今行きますから」


 見たこともない街の風景の中で、ニャーチが誰かを呼んでいる。

 でも、これってニャーチなのかにゃ? 


 ニャーチな気もするけど、そうじゃない気もするし……。


『これは私の思い出の記憶よ。そうね、ニャーチちゃんにとっては夢のように感じてもらえればいいかな?』 


 なるほど、夢だったのなっ。それなら分かるのなっ。

 ところで、さっきからいろいろ教えてくれるお姉さん、あなたはいったい誰なのにゃっ?


『うーん、私は貴女(ニャーチちゃん)であって貴女(ニャーチちゃん)ではない存在……かな? ほら、それよりも』


 あ、ほんとだっ! 

 ふと顔を見上げると、さっき呼んでた人が近づいて来ていた。


「ん? どうした? 疲れたの?」


「ううん、何でもないのっ。それより、あっちのお店で木のアクセサリーに絵付けをする体験できるんですって。ねぇ、たっくんも一緒にやらない?」


「うーん、僕は絵が苦手だから、(ユウ)がやってるのを後ろから見てるよ」


「そっかー。一緒にやりたかったなー」


「ごめんね、でも絵は、ほら、ね……、」


 そっか、タクミさんって人はお絵かきが苦手なのなっ。

 それなら仕方が無いのなっ。


「分かってるわよっ。じゃあ、少し待たせちゃうけど、いい?」


「うん。やっておいで」


「ありがとう。じゃあ、こっちこっちー」


 ワタシ(ニャーチ)はそう言うと、たっくんって人の手を掴んで、グイグイと引っ張っていく。


 なんか、手をつかむとすごくポカポカしてくる。


 それに、この人の顔を見てると、自然と“にこーっ”てなってくるのな。


『その人はタクミさん、ワタシにとっても貴女(ニャーチちゃん)にとっても大切な人よ』


 大切な人? うーん、ごしゅじんさま(飼い主)ってこと?


『ご主人様……とはちょっとちがうかなぁ。でも、大丈夫。目が覚めると自然に分かると思うわ』


 そっか、それならきっと大丈夫なのなっ。細かいことは気にしないニャーチなのなっ。


 それからしばらくは、いっぱい楽しいがあったのな。

 

 小さな木にお絵かきをしてネックレスみたいなのを作ったり、街の中をお散歩しながらおいしい串焼きを食べたり、夜になったらお酒を飲みながらゆっくりおしゃべりしたり……、とにかく楽しいがいっぱいだったのなっ。


 その間、タクミさんは、ずーっとワタシ(ニャーチ)と一緒にいたのなっ。

 

 タクミさんは、ポカポカであったかくて、一緒にいるとニコニコになる。

 これって、まるでさっき潜り込んだところみたいな……、


 そっか!わかったのな! このタクミさんがニャーチの居場所なのなっ。

 きっとそうなのにゃっ!!


 いっぱいのポカポカとふわふわに包まれていたら、また眠くなってきた。

 夢の中でも眠たくなるのなっ。これは発見なのなっ。


 きれいなシーツのふかふかベッドの上で、ワタシ(ニャーチ)タクミさん(ごしゅじん)の腕に包まれながら、いつしか眠りについていた。




―――――




 ふにゃ、誰かがほっぺたをなでてくれているのなっ。

 気持ちいいけど、ちょっとだけこそばゆいのなっ。


 ゴロンとしたまま目を開くと、そこは最初にお休みしたところだった。

 窓の外からはガタンゴトンという音が聞こえ、壁や椅子からはまだ新しい木の香りが漂っている。


 そして隣には、ごしゅじん(タクミさん)がいた。

 ごしゅじんが、優しく微笑みながらニャーチのほっぺたを撫でてくる。


「にゃー? どうしたのにゃー?」


「いや、何でもないよ。それよりも気分はどう?」


 優しくて、でも、どこか心配しているように感じるごしゅじん(タクミさん)の言葉。


 うん、ニャーチは大丈夫なのな。

 目が覚めたばかりだからちょっと頭がふわふわしているけど、どこも痛いところはないし、さっきまでポカポカをいっぱいもらってたから元気もいっぱいなのなっ。


 でも、何か不思議。

 確か、ごしゅじんは、さっきの夢の中で会った人のはず。

 それなのに、おめめパッチリになっても、こうして隣にいて、お話してる。


 うーん、さっきのって本当に夢だったのかにゃぁ……? 


 考え始めると、頭の中がくるくるしてくる。

 うーん、うーん、うーん。


 ……、うん、分かんないことは考えてもムダなのなっ!


「んー、なんか、どっか遠くまでお出かけしてた気がするのなっ。でも、うーん、良く覚えていないのにゃっ。ところで、ごしゅじん、なんか用なのかにゃ?」


「うーん、この先ニャーチとどうやって過ごしていこうかな……って思ってね」


 そういえば、ごしゅじんとニャーチって、どこに住んでたんだっけ?

 どっかで一緒にいたことは覚えてるけど、今のおうちって、えーっと……。


 あれ? もしかしたら、ごしゅじん(タクミさん)もおうちの場所忘れちゃったのかにゃ?


 でも、たぶん大丈夫なのなっ。だって、ニャーチの居場所はここだもんっ!


「にゅー?良くわかんないけど、とりあえずごしゅじんにと一緒にいるのは間違いないのなっ」


 そう、ニャーチの居場所は、ごしゅじん(タクミさん)の腕の中なのなっ!



※第2パートへと続きます

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