23.子爵は無能力の村人だぜ
GM葵子「皆さま、おはようございます。残念なことに、昨晩、蝋燭職人菊川六郎さまが亡くなりました。
それでは皆さま、三日目の日中の議論に入ってくださいませ」
行商人猫谷「包帯おやじが死んじまったか。ふはは」
令嬢琴音「おーほほほっ、それに連勝中の子爵さまは、お亡くなりあそばせてゲームからご脱落――。
なんてすがすがしい朝なのかしらん」
土方中尉「子爵と蝋燭師がいなくなって、残りは全部で七人か。
しかし、妙であるな?」
女将志乃「中尉さま。何か気にかかることでも?」
土方中尉「いやな。なぜ鬼どもは菊川どのを殺したのだ?」
令嬢琴音「そんなん、誰でもいいやん。鬼にとってみれば、一人ずつ村人を消すしかできんのやから」
土方中尉「だとしてもだ、なぜ天文家宣言をした猫谷を襲撃しないのだ?」
行商人猫谷「げげげっ、そういうことかい。
そりゃあ、魅力あふれる俺さまを消してしまえば、途端にゲームがつまらなくなっちまうからにゃあ」
令嬢琴音「そうか、分かったわ! きっと、猫さん自身が鬼なんよ! うちらはまんまと騙されたんやわ」
女将志乃「そうなんだ。猫さん?
お嬢さまの意見はいちおう筋が通っているわよ」
行商人猫谷「ちょっと待っておくんなまし。
俺さまは正真正銘の天文家で、子爵の坊ちゃんは鬼なんだから、村人側の有利にゲームが進行しているのは間違いねえのさ。そして、鬼はあと一人ということにゃ」
散髪屋高遠「そして、それを証明できる唯一の人物が探偵ということだ。どうやら機は熟したみたいだな。
そうさ! 俺が探偵だよ。
猫谷が本当に天文家なのかどうかは、この俺がこれからきっちり調べてやる!」
女将志乃「あらあら、とうとう探偵さまのお出ましね。他に探偵を名乗る人はいないの?」
土方中尉「ところで、散髪屋はどうやって猫谷の正体を調べるというのだ? 探偵は死者の正体しか調べられぬのだぞ?」
散髪屋高遠「知れたことよ。俺が子爵の死体を調べてみて、もし鬼でなかったら、猫谷が嘘を吐いている証拠になる」
土方中尉「ふむ。すると、今日の調査では、子爵殿の遺体を調査して、蝋燭師の遺体は放置するということか?」
散髪屋高遠「仕方ねえだろ。調査は一日に一人しかできねえんだから」
女将志乃「高遠さん。あんた、探偵というのなら、初日の西野さんの死体は当然調査済みよね。結果はどうだったの?」
散髪屋高遠「西野ね――。
奴はただの村人さ。能力者ではないな」
女将志乃「へー、そうだったんだ」
行商人猫谷「ふん、まあいいや。とっとと子爵の坊ちゃんを調べてくれや。さすれば、俺さまの無実がばっちり証明されるって寸法よ」
散髪屋高遠「よし来た。他の奴らも異論はねえよな。これから子爵の遺体を調査するぜ?」
しばらくすると高遠が発言した。
散髪屋高遠「ふーん、こりゃあ面白えや。おい、みんな、よく聞いとけよ。
俺の調査によれば、子爵は無能力の村人だぜ!」
女将志乃「えー? じゃあ、猫さんが嘘を吐いていたってことね」
女将の声を皮切りに、一同の視線が一斉に猫谷に集まってきた。
行商人猫谷「ちょっと待っておくんなましまし。俺さまはれっきとした天文家なんでい。
つまりは、そこの散髪屋が大嘘つきってこった」
女将志乃「あらま、それを証明する何か証拠でもお持ちなのかしら?」
混乱極まり、場が騒然とざわめく中で、たった一人だけ落ち着き払っている人物がいた。
令嬢琴音「ふふふっ、うちは猫さんの意見に賛成よ」
土方中尉「お嬢さま。突然、何を根拠にそのような?」
令嬢琴音「根拠はあるんよ。だって、うちが本当の探偵なんやもん!」