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21.鍵を握る探偵の調査

 猫谷は得意げに一人一人の表情を順番に見回していった。

行商人猫谷「俺さまの正体は――、そうだよ……。天文家さまだ!

 そして、俺さまがこうして告白した理由は、皆に極めて有益な情報を手にしているからだ。

 俺は、昨晩、鬼を観測した! 一人の人物が闇夜に向かって飛び立つのを目撃したんだ!」

令嬢琴音「うそ? 猫さん。それは誰やったん?」

 猫谷の人差し指がゆっくりと動いていって、ある人物の前でピタリと止まった。

行商人猫谷「ほうれ、そこの高椿子爵だよ!」

高椿子爵「何ですと? そんなはずはない。皆さん、猫谷氏のはったりに惑わされてはなりません。神に誓って、わたしは鬼ではありません!」

行商人猫谷「何かっこつけて神に祈ってやがんだよ。そもそも俺たちゃ仏教徒だろうが。南無阿弥陀仏とでも唱えていろよ」

散髪屋高遠「猫谷氏の意見を鵜呑みにするのはどうかな? 彼が使徒である可能性も考えられる。いや、ひょっとしたら吸血鬼自らが一大勝負に出たのかもしれん」

久保川医師「そうじゃ、そうじゃ。なにせこやつはわしをだまし討ちにした卑劣漢じゃけんのう」

令嬢琴音「でもね、どうせ吊るす人に困っているんなら、この際、子爵さまを吊るしちゃっても、村人側に致命傷は生じないんよね」

高椿子爵「何ですって? このわたしが天文家である可能性を捨ててはなりませんよ」

令嬢琴音「少なくともそれはないわね。うちの勘によれば……」

高椿子爵「ふっ、根拠不明な。お嬢さま、さっきのゲームの敗北を根に持ってはいませんかね?」

 子爵の挑発的な言葉に、冷静を装っていた令嬢もついにぶち切れた。

令嬢琴音「むかつくー! あんたなんかとっとと吊るされちゃえばいいんよお!」

高椿子爵「おやおや、ヒステリックな。これだからお年頃の娘さんは困りますよねえ」

蝋燭職人菊川「自分は子爵の処刑に賛成だ。少なくとも現時点で最も鬼である可能性が高い人物であり、なおかつ能力者発言もしていない人物である。

 しかも、彼は他人の能力者発言を助長する気配すら感じられるのも、村人側にとって危険な人物の匂いがする」

行商人猫谷「だんだんお味方が増えてきたようでござんすな。子爵の坊ちゃんをかばう奴は他にいるのかい?」

高椿子爵「こいつはとんでもないことになってしまいましたね。仕方ございません。今日の内は隠しておきたかったのですが、わたしは天文家です。

 昨日の観測では、琴音お嬢さまを観測いたしましたが、彼女は白でした。だから、報告せずに潜伏するつもりだったのですが、処刑されてしまっては元も子もありません。

 すなわち、猫谷氏は嘘をかたっていることになります。皆さん、わたしを吊るしてはなりません!」

行商人猫谷「ちょっと待ってくれい。騙りはてめえだろうが!」

執事大河内「こいつはややこしくなってしまいましたね。果たしてどちらを信じればよろしいのでしょうか?」


 探偵の能力者の端末画面には、二日目になってからずっと調査する相手を指定する画面が表示され続けている。しかし、その選択肢は昨日死亡した西野桐人だけのようだ。他の人の名前にはチェックボックスが表示されていなかった。

 もうすぐ昼の議論の時間も終わってしまう。そろそろ調査をしておこうか。

 探偵の能力者は、調査対象として西野桐人を指定した。すると、すぐにメッセージの反応が返ってきた。

 ――通行人西野の正体は、無能力の村人です。

 そうか――。でもこの事実を今日の段階で公開するのは無理なのだ。今、自分の正体を明かすことは、間違いなく村人側にとって不利益になってしまうから……。


女将志乃「もういいかげんに時間よね。さあ、皆さんは誰に投票するの?

 ちなみに、あたしは子爵さまよ。

 子爵さまが、猫さんのいうとおり鬼であればそれでいいし、そうでなければ明日になって猫さんを吊るしちゃえばいいのよ。

 いずれにしても鬼の片割れを確実に吊るすことができるわ!」

蝋燭職人菊川「今の女将の発言が全てを語ってくれた。自分も同感だ」


GM葵子「それでは皆さま、二日目の日中の議論のお時間は終了です。

 ただ今より十分以内に、処刑候補者のお名前をご入力くださいませ」


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