2.小間使いからの手紙
ゲームマスター(GM)とは、ゲームの進行を世話する役目で、自身はゲームには参加しない。
さっそく、GMとなった小間使い東野葵子から五名の参加者に、今回のゲームにおける各人の役割が、個人当ての手紙によって通達された。
ここで、その五名を再度確認しておこう。今回の参加者は、高椿精司子爵、令嬢梅小路琴音、女将柳原志乃、行商人猫谷庄一郎、将校土方晃暉である。
◇◆◇◆
参加者の中のある一人の人物のもとには、小間使い葵子が送信した次のような一通の手紙が届いていた。
GMより、親愛なる**さまへ――
今回のゲームで、あなたは『吸血鬼』となりました。
そうか、自分が吸血鬼になったのか。これは面白い。
手紙を受け取った人物は、ゲームのルールが書かれた説明書きを開いて、吸血鬼の項に目を通した。
吸血鬼の留意点(ルール記載書より)
吸血鬼側に属し、吸血鬼側の勝利を目指している。
今回のゲームでは吸血鬼は一人である。吸血鬼が死亡した時点で、吸血鬼側は敗北を喫する。しかし、その前に生き残っている村人の総数を一人まで減らせば、その時点で吸血鬼側が勝利する。
毎夜、一人を襲うことができる。襲撃先の人物は夜になるまでに設定しなければならない。もし、設定がなければ、その夜の襲撃を放棄することとなる。
やがて、文章を読み終えると、その人物は不気味な笑みを口もとににじませた。
◇◆◇◆
先ほどとは別な人物のもとにも、小間使いからの手紙が送られていた。
GMより、親愛なる**さまへ――
今回のゲームで、あなたは『天文家』となりました。
手紙を受け取った人物は考えた。どうやら、村人側で最も重要な役割を担ってしまったようだ。村人側の運命を握っているのはこの自分ということになる。でも、そんな勤めを無事に果たすことなんてできるのだろうか?
その人物は、恐る恐る、天文家の説明書きを読み始めた。
天文家の留意点(ルール記載書より)
村人側に属し、村人側の勝利を目指している。
毎晩、一人の行動を観測することができる。もし、その人物が吸血鬼であれば、そいつが夜空に向かって飛び立つ姿を目撃することになる。吸血鬼以外の人物を観測した場合には、何も起こらなかったという事実を認識する。
観測をする先の人物は、夜になるまでに設定しなければならない。もし、設定がなければ、その夜の観測を放棄することとなる。
◇◆◇◆
それ以外の三人にも、小間使いは次の文面を送っていた。
GMより、親愛なる**さまへ――
今回のゲームで、あなたは『村人』となりました。
手紙を受け取った三名の人物は、誰もが恐怖の余り震えおののいた。
魔物に襲われれば何も抵抗ができない無力な存在。そんな村人が生き残ることなどできるのだろうか?
この『吸血鬼の村』というルールでは、配役が、主流になっている人狼ゲームのものと、次のように対応しています。
人狼ゲーム 吸血鬼の村
人狼 吸血鬼
狂人 使徒
占い師 天文家
霊能者 探偵
狩人 猟師