14.あなたに明日は来ませんよ
淡々と処刑投票が行われている中で、有力候補となった行商人猫谷と土方中尉の表情は、ずっと蒼ざめたまま凍りついていた。
GM葵子「無事に夕刻の投票は済みました。ただ今より結果を報告させていただきます。
行商人猫谷は、土方中尉に票を投じました。
女将志乃は、行商人猫谷に票を投じました。
土方中尉は、行商人猫谷に票を投じました。
令嬢琴音は、土方中尉に票を投じました。
高椿子爵は、行商人猫谷に票を投じました。
行商人猫谷が三票、土方中尉が二票を獲得しました。
行商人猫谷の心臓に聖なる杭が打ち込まれました」
こうして、ゲームは一日目の夜を迎えたのであった。
◇◆◇◆
このゲームで吸血鬼になった令嬢梅小路琴音を操る人物は、すっと椅子から立ち上がると、細身の美しい体を思い切り背伸びさせて、大きく深呼吸をした。
ついに、待ちに待った復讐の時がやって来たのだ。
あの忌々しい高椿精司子爵の正体は、ほぼ探偵で間違いはなかろう。
明日になれば、姑息な彼のことだ。きっとこの私が偽探偵であることを証明するため、あの手この手の小細工をいろいろと試みるに違いない。どうせ今頃、そのための策を一心に講じていることであろう。
でも、何とおかしきことであろうか。彼女は苦笑せざるにはいられなかった。
――彼にその明日は来ないのだ!
梅小路琴音を操作する人物は、鼻歌を歌いながら楽しそうにマウスを動かした。今夜の襲撃先として、高椿精司子爵の欄にチェック記号を挿入するために……。